
地域に暮らす人々が、日々の生活やお祭りを通して生み出した、素朴な絵や工芸作品は「フォークアート」と呼ばれます。身近な自然や動物、くらしの様子が表現されていることが多く、とても親しみやすく楽しい世界です。日本では稲わらを扱った作品が多く生まれています。

1本のわらも、捨てることなく使い切る日本人。米を収穫した後にできる稲わらも神聖な存在とされ、邪気を払う魔除けのような意味合いもあり、生活のさまざまなところに使われてきました。掃除に使う「わらぼうき」もそのひとつ。実際に作ってみよう!

このプログラムのために、米農家さんから「稲わら」をたっぷり送ってもらいました。初めて触れる子も多いようで、山盛りの稲わらに興味津々。これが家の屋根になったり、農地の土壌改良材に使われたり、家畜の飼料になったり、畳や縄にもなるんですよ。

ほうき作りでは、稲わらの穂先の少し下の部分を使います。この部分は"みご"と呼ばれるのですが、全てのわらについているわけではありません。だいたいわら10本中、4本くらいでしょうか。「え…こんなちょっとしかとれないの!?」さあ、まずはそれぞれ"みご"探しから。

ひとり最低でも50本ほど欲しいところ。はじめは「ひゃ〜たいへんだよ」という声もありましたが、黙々と探すうちに不思議なほど集中していき、どのクラスにも「まだやる!」「まだ取りたい!」とやめない子が。あぐらで座る様子もさまになっていますね。

「"みご"ついてるわらが分かるようになってきた」「ここをはさみで切ると、みごだけすぐ抜けるよ」数をこなしていくと、こどもたちの間で自然とコツを教え合う声が。たまに「お米がついてる!大当たり!」さらに確実にみごがついてるわらのことを「"みご確"」なんて言葉も登場したり。

みご取りを終え、片付けが始まってからも「お!みご発見」と落ちてる中から拾い上たり、まだこっそりと"みご"をゲットしている様子もちらほら。どのクラスでも"みご熱"や"みご愛"が沸いている様子で、「私の大事なみご」と大事そうに管理していました。

さあ、素材が集まったところで、ここからそれぞれのほうきづくりが始まります。試しに軽くまとめてみると...たしかにほうきになりそうな感じがしました。わらのコシが、ほうきにちょうど良さそうで、「持っただけで、もう使えるよ!」なんて声も。

"みご"をほうきにするためには、ちょっとしたコツが必要です。締めたいところをぎゅっと締められる少し特殊な結び方を伝えました。かんたんな手順を覚えたら、こどもたちもすぐに作ることができますよ。「へえ、ほんとだ、ぎゅっとなる!」「他の工作でも使えそうじゃん!」

みんな好きな色のひもを選んでチャレンジしました。「持ち手」と「履く部分」をそれぞれひもで締めながら、ほうきの形にしていきます。サンプルのほうきや資料をみながら、どんな形のほうきにするのかを考えるのも楽しい様子。ちゃんとおそうじに使えるほうきにしたいですね!

日常的に使うものなので、お気に入りの色合いにしたい。こんなリボンで飾ればきっと、愛着もひとしおでしょう。「自分の部屋に合いそうな色にしたい」「この柄いいな!」と素材や形との組み合わせも楽しんでいました。

わらは、はさみでかんたんにカットできます。端の長さを切り揃えたり、穂先の形もちょっと工夫したり、ここもそれぞれのこだわりの見せどころ。それぞれがデザインした形や長さに仕上げていきました。

「長い持ち手をつけたらどうかな」と、木棒との組み合わせにチャレンジした子も!おおお、確かにこれは作ってみたくなる!柄を長くすると「床そうじもできる!」とにっこり。

「見て!この先っちょにしたら、角のそうじがすごくしやすくなったよ」と、斜めにカットしたほうきも登場。実際使わせてもらったら、確かに!すごく使いやすくてびっくり!

「ネックレスにする」と、ほうきアクセサリーも登場。新しい!着ているお洋服とも似合っていて、かわいいですね!なぜか素足なのもなんだか素朴なイメージにぴったり。

できたてのマイほうきで、いつもの制作後の教室そうじをはじめる子も。「そうじが楽しいじゃん。最高じゃん!」とルンルンでした。これがあれば、普段はあまりそうじしないところまで、ついつい手が伸びる!?愛着のある一品になりました。

稲わらを使った制作の第二弾、今回はお正月に向けてしめ縄づくりに挑戦!まずはじめに、日本神話の『天の岩戸開き』の場面が描かれた絵を紹介。中央にいるのが天照大神。この神様が隠れてしまうと世界が暗闇になってしまうので、「もう二度と隠れないでください」という願いを込めて結界が張られました。そこで使われたのが、しめ縄なんですって。

素材となる稲わらの中でも、前回使ったのは穂先に近い"みご"の部分だけ。みんな大量のわらの山から、みごを一生懸命探していました。今回のしめ縄づくりでは、その"みご"以外の部分を全て使います。みごがないわらは柔らかく、縄を綯うのにとても向いています。いろんな使い方があって、無駄がない!

しめ縄をパッと見ると、2束のねじられたわらが撚り合っているように感じませんか?でも実は、3本の束で作られています。まずはきれいな縄に仕上げるために、3つの束ができるだけ同じ太さになるようにわらを集めました。だいたい20本ずつで、立派なしめ縄になるはずです。

わらが乾燥したままだと、加工した時にポキっと折れてしまいます。そこであらかじめ水をたっぷりとかけて、丹念に叩く「わら打ち」の作業をしておくと、繊維が柔らかくなって、細工がしやすくなります。さらに強度も増すため、ねじり加工をすると丈夫な縄に!

ただ叩くだけの作業と思ったら…実際やってみると、あんなにカサカサだった稲わらがだんだんとふんわりして、しっとりと柔らかくなっていくのがおもしろい様子。もう十分良い状態だよ!と伝えても「まだまだ叩きたい」という子も。

ここからは、わらがしっとり良い状態のうちに、一気に仕上げていこう。3つのわらの束のはしを軽くまとめたら、ひとりが押さえる、もうひとりが1束ずつねじるという、2人ひと組での制作です。まずは2束をそれぞれ「右回り」にねじり…

今度はねじった2本を「左回り」にねじりあわせると、「わ!縄だ!」早くも、きれいな縄目が見えてきました。でも「あれ?このもうひと束はどうするの?」そうです、3つめの束が残っていますね。

最後の束は先ほどとは逆の「右回り」でねじります。それを2つの束で作った縄に撚り合わせていくと...さらに立派な縄になりました。「えええ、すごい!」「どういうこと!?」みんな目の前で見てるのに、仕組みが不思議でびっくりの様子。「おもしろい!」

実際に作ってみると、押さえる人も、ねじる人も、どちらも大事な役割だということがわかります。2人で息を合わせて「なかなか締まらない」「すぐ抜けちゃう」「どう押さえる?」からだをフルに使いながら、あれこれ試行錯誤する姿がありました。

「待って待って、どっち回りだっけ?」「右からスタート?」「まずやってみよう」ふたりで作り方を思い出しながら、手探りで作っています。縄を綯うなんて、普段はまずできない体験ですから、すごく新鮮!

右回し、左回しのねじる方向が違うだけで、仕上がりがぜんぜんちがう形になります。「何かちがうみたい」と気がついて「一回解いてみよう」とリトライするペアも。一度ねじったわらは、柔らかくて良い状態になるからこれも無駄ではありません。がんばれー!

ぴったり息が合うと、きれいな縄ができていました。お見事!トルネードの子たちは、協力して作るのが上手な人が多いようです。それにしても、長年しめ縄を作り続けているおじいちゃん・おばあちゃんたちは、これをひとりでするというから驚きです。

と思ったら、「もっときれいな形になるといいな」と、いちど作った縄を解いて、なんとひとりで再チャレンジしていた子が!ご覧の通り、形もきれいにできています。この短時間で習得するなんて、す、すごい...他の子の作品も「どれどれ」と助けてくれていました。

それぞれのしめ縄ができたら、「ふう〜」一息ついて、ポロポロとはみ出したわらをはさみでカットして、きれい整えていました。やっぱり自分で作ったものには愛着がひとしおな様子。

ここからはこどもたちのアイデアが存分に活かせる制作の後半です。まっすぐなしめ縄もあれば、くるっと丸めて輪っかの形など、いろんなデザインがありますね。何か動物の形にしたい!という子は、なわの形をぐいぐい変形させながら考え始めました。

しめ縄を飾るためのパーツづくりも楽しい様子。紙で作る垂(しで)や、「淡路結び」とその応用でできる「梅結び」などの水引も、こどもたちに人気でした。ひとつひとつが手作りです。ひもをリースのリボンのようにアレンジしてオシャレに使いこなす子も。

「私は折り紙が得意」「いろんな形が作れる」という子は、「すごい!」「教えて!」という子と一緒に、鶴や星、扇子や箱型などいろんな形を作って楽しんでいました。どんどん加えていくと、すごく福が舞い込んできそうなオーラが!

シンプルなものから、賑やかで派手なものまで、こどもたちの好みが反映された仕上がりのしめ縄になりました。ぜひお正月にみなさんのおうちに飾って、新年の神様をお迎えください。

稲わら工作から一変して、年末はちょっと変わったプログラム!光を透かし、重なりによって表情を変える「透明」な絵に挑戦です。普段は紙に絵を描くことが多いこどもたち。いつもとちがう画面に描き、重ねた時にできるおもしろい効果や、新しい色や形を発見していこう!

複数のシートをいくつか重ねるだけでも、思わず「おっ?!」と手が止まる絵がたびたび表れます。「こっちの組み合わせだと、全然ちがう絵になるよ」「何かタイトル付けられそう」「なるほど、いいじゃん」さっそく感覚がピンときた子も。

透明な素材と不透明な素材を組み合わせたり、上下や表裏をひっくり返してみたり。自由に絵を描き足すのもOK!いろいろ試しているうちに、空と海、空と山など、絵の中に奥行きや空間、何かの場面が見えてきました。

試しに、自分の絵に他の子の絵を重ねて見てみると...「なんか合うね」「いいね!」としっくりくる組み合わせも発見。例えばこちらは山だったはずの絵が、湖の中の島に変身。見え方が変化すると意味も変わったり、さらに動物や乗り物なども登場すると、時間や物語性まで感じられます。

「いろんな表現ができそうだぞ」とアイデアが浮かんできたところで、それぞれの制作がはじまりました。ペンでどんどん描き始める子もいれば、トーン素材や色セロハン、半透明のトレーシングペーパーなどの効果的な使い方を試す子も。

それぞれの興味や好みを反映させやすい制作のようで、みんなのアイディアが見事にバラバラでした。「猫が登場する舞台にしようかな!」と思いついたこちらの子は、猫の姿をインターネットで検索。猫はいろんなポーズが出てきて、参考にしやすそう。

こちらでは「自分でも何なのかよくわからない形」を切って、それらを重ねたらきれいかなあ、と複数のシートに置いて実験中。ライトボックスの上であれこれ展開してみています。不思議な抽象画が現れる様子は、すごく魅力的!

「いいことを思いついた!」と手を動かしていたこちらの子は、透明と不透明の素材を組み合わせて、表と裏でちがう絵に。片面は平和な山に見えますが、裏面では山火事が発生!?

こちらではベースの顔の形を作り、目鼻口、涙やシワ、血などいろんな素材を重ねています。シートを分けて制作することで、表情を入れ替えしながらあれこれ実験中。おもしろそう!

こちらの子は、緑の絵のベースの上に、フルーツを描いたシートを配置。いろんなフルーツのシートを作って、入れ替えができる絵になっています。なるほど、これだと季節感も表現できそうですね!

枚数を重ねるごとに、作品の世界観も深まっていくのがおもしろい。偶然の発見も多い制作で、ひとつのアイデアから、次のアイディアがどんどん出てきました。こどもたちの制作に、熱が入る!

こどもたちの透明絵画の制作がそれぞれ進む中、カレンダーにするために暦のシートを配布。どこに置く?どう見せる?月毎にめくり、入れ替わる絵と一緒に、カレンダーの仕上げを考えていきました。

こちらは3ヶ月で1枚のカレンダー。1枚めくると木の色合いが変化し、その周りの様子とともに季節が変化していきます。重なりや見え方の配置もよく考えながら制作している様子です。

雨、風、霧などのいろんな天気や、朝/昼/晩の時間の空の変化を、12枚のシートに展開させている空のカレンダー。かっこいい!モノクロの中に、効果的に差し色が使われています。

「ここ、おもしろいんですよ」と見せてくれたのは、各シートの全面にイラストがびっちりと描き込まれた作品。重ねてみると、絵と絵が偶然絡み合う様子がおもしろくて、描いた本人もいろんな発見がある様子で見飽きない。街のグラフティのよう!

海辺の風景にドット模様を挟んでみると、一気に砂感が増してきた!ポップな仕上がりになりましたね。透明/不透明を効果的に試しながら、最後まで実験と発見が続いていました。

こちらは「10人の兄弟が脱獄する」というストーリーのあるカレンダー。自分で設定した物語に沿っていろんなキャラクターを描き、手前と奥、中と外など、ストライプのトーンを活かしながら制作していました。

いろいろな可能性を試していたこちらの子。結果的に、2枚のストライプのシートを重ねてできる「モアレ」に魅力を感じた様子。なんとシートの真ん中あたりにリベットを留めるという斬新さで、カレンダーを仕上げていました。すごくユニークな発想!

ここでは紹介しきれないほどたくさんの発想で、カレンダーが完成しました。おうちで使っているうちに、さらにいろんな見方やアイディアが出てきそう。一年を通して、どんどん作品を進化させてみてください。来年もいろんな制作をしよう!