
"ニュアンス”という言葉は、日常でもさまざまな場面で使われます。ごくわずかな違いや、微妙に含まれた意味合い、表面的には目立たないけど奥ゆかしく隠された意図など、幅広い対象に使われる便利な言葉。このプログラムでは、白の存在を中心にした表現で、それぞれの感性を研ぎ澄ませていきたいと思います。

トルネードでは、キッズコースからたびたび紹介しているヨハネス・イッテンの色相環。今回は、そのかなり浅い色合いで、かなり明度を上げた超ハイトーン版をラボのみんなにご紹介。「黄色がほぼ見えない」「青って強いんだね」など、改めて発見がありました。これと同じように、浅い色合いの色相環を作っていきます。制作経験の長い人ほど直感が働き「うわ!できるかなあ」という反応でした。

使う画材はいろいろです。パステルやクレヨン・色えんぴつをはじめ、各種絵の具やペンなど、ラボのみんなはほとんど使ったことがあるものばかり。この中から画材をひとつ決めて、ハイトーンの色相環づくりをしていきます。身近な画材が多かったので「え、なんかおもしろそう」と制作のイメージが沸いてきた様子。

ラボの子ならば、誰がどの画材でも、きっと楽しみながら研究できるでしょう。ということで、今回はあえて「画材おみくじ」を用意して、当たった画材を担当することに。「今日の運命!」と楽しそうに引くラボのみんな。実は、中には扱いが難しい画材も含んでいるんですよ...ニヤリ。

くじの結果を見て「パステルか、いいねえ」「こっちはクレヨンだよ。できるのかなあ?」などの声の中には、「これ、一番大変じゃん!?」という人も。おみくじに書いてあったのは、"水性サインペン"。おなじみの画材ですが、これであの浅い色合いを作るなんて...?!いろいろ相談し合いながら、担当になった画材を準備して各自制作をはじめました。

引いたくじを見るなり「よし!これはいける」との声があった透明水彩絵の具。好きな画材らしく、どんなふうに扱えばあの色相環になりそうか、イメージが沸いているようです。本人とてもニコニコでした。

パステルや色鉛筆など、削ると粉になる画材も、この淡い色合いの再現には使いやすいようでした。粉の量で発色を調整できて、ふんわり繊細に広げやすい。混色も、指先で感覚的にできます。「気持ちいい」

クレヨン、色鉛筆、パステルなどは、「白も使用した場合」「白を使わない場合」で、発色や見え方がかなり変わります。白を使わずにごくごく薄く色をつければきれいに発色しますが、白を使えば「色を強くしすぎても戻せる」。

こちらは問題の、水性サインペン。絵の具と違って混色できない画材です。ペンのセットに入っている浅い色を使ったとしても、かなり発色は強めな様子で、白を混ぜることもできません。さあ、どうする?! 頭を使ってあれこれ研究していました。

それぞれの画材で制作をはじめてみましたが、この明度の再現は、さすがのラボのみんなも四苦八苦。「できる色はものすごく綺麗」とのことですが、ほんの少しのちがいでバランスが崩れ「色がまだ強いよ〜」「うわっやりすぎた」など、かなり繊細な取り組みになりました。

でも中には、色の配合を調整するのがとても得意な人もいて、精度を上げていくのがそれはそれは楽しそう!理性や論理よりも、ほとんど感覚・直感の世界に没頭。まさに微妙なニュアンスを拾い上げながら調整しています。

できたみんなの作品を並べてみると...おお〜美しい!いつもは「もっと色を強くしないと」と意識することが多いかもしれませんが、今回は「どうしたら色が落ち着くか」を調整する、新鮮な取り組みでした。

一堂に集めることで、画材ごとの特性や特徴も浮き彫りになりました。同じくらいのトーンを作っていますが、パステルとクレヨンでこのような質感の違いが。それぞれに持ち味や魅力があります。

さてここで、この月、ラボのみんながチャレンジする制作テーマは「白いモチーフ」と発表。自然物、工業製品、日用品、身の回りには白いものがいろいろあります。形や質感によって、その見え方や表現のポイントがすごく変わることもありそう。感性を研ぎ澄ませて取り組んでいきましょう。

この回は、試しに「ティッシュ1枚」をスケッチしてみることに。「えっそれだけ?!」「絵になるのかな?」なんて心配になりそうなモチーフですよね。だからこそ、普段は見過ごしがちな描きどころを、しっかり探してみよう。画材はそれぞれ合いそうだと思うものを選んで、組み合わせてもOKです。

白いパステルだけでチャレンジしていた人から「やっぱり、白だけじゃあ限界があるな」との声が。どこまで描けるのかを検証しながら制作していたようです。

こちらの人は、選んだ白い画材にたまたまついていた赤が、意図せず絵についてしまって「うわ!」と残念がっていました。が、だんだん描き進めるうちに「いや、こっちの方がなんかいいかも?」と絵にうまく取り込まれていきました。制作が終わる頃には「色を使うと深みが出るんだよ」とうれしそう。

「私、今日すごいかも!」という声が。見に行ってみると、そこにはすごい存在感のティッシュの絵が!「なんだこれ!」「写真にとったら面白いよ」とまわりの子も盛り上がっていました。奥にあるのがモチーフのティッシュで、手前が絵です。「影を描きたかったんです」とのこと。

描いた絵を並べてみると、ティッシュの少し透け感のある薄さが、いろんなタッチで表現されていて、実に見応えがありました。「この表現はなんかぴったり」「この画材、こんな使い方もあるんだ」などの発見もあり「みんなすごい!」ニュアンスを捉えることで、絵になりにくそうなモチーフでも、たくさん描きどころがあることがわかりました。

最後に、次回使うための画用紙を、パネルに水張りをして終了。これをしておくと、水っぽい画材を使っても画面が波打ったり歪んだりするのを防ぎ、常にピンと平らな状態で描くことができます。次の「白いもの」の制作もお楽しみに!

一見、白く見えるものでも、よく観察してみるとほんのわずかな色味があります。この週は白い野菜や、パン、陶器、タオルや真っ白なスニーカーなど、たくさんの白いモチーフを集めました。質感によっても、その見え方はさまざまです。

探してみると、白いものはけっこうたくさんありますね。ラボのみんなも前回からの1週間で白いものを探して、自分でモチーフを選んできた人もいました。

まずはラフスケッチから。これがいい!と選んで描くのもOKですが、たまたま近くにあったから描いてみるという取り組みにもいろんな発見があります。鉛筆、パステルなど、ラフに使いやすい画材で始めました。

「大根〜?」という声もあがっていて、はじめは何が魅力なのかわからかった様子。でもしばらく描いてみると「いいかも!」表面の色合いやほんのわずかにでこぼこした感じを描くとリアルになってきて、急におもしろさを発見した様子。

白い釉薬がかかった器は、明暗のつき方も目に入りやすく、表面の風合いも味わいがあります。描いていた人たちから「意外と描ける」との声がありました。

何気なくモチーフに紛れ込ませてみた白い綿。「これを描くのかあ」「どうしたら!?」「いや、おもしろいかも」いろんな声がありました。工夫しがいがありそうです!

こちらの方は、カブが気に入った様子で「3個並べたい」さらに「たまごも描きたい」とどんどん数が増え、「…いや、やっぱりこれは絶対に描き終わらないコースだ...」などあれこれ検討していました。

描きたいモチーフが決まったら、それに合わせた背景色を検討していきました。前回の試作でティッシュペーパーを描いた時のように、下地に何かしらの色があると、白が使いやすそうです。

「モチーフをくっきり浮かび上がらせる」「柔らかく見せる」「冷たく見せる」など、背景について考えはじめると、いろんな可能性が出てきます。同じ色の系統でも、明度や彩度の違いで、その効果はまた大きく変わります。だからこそ「迷う〜!」

背景ができたモチーフの形や構図を作るための下描きとして、ごく薄く溶いた絵の具の白や、パステル等を用いてスタートしました。

背景が決まった人から描画を始めていきました。自分が描きたいニュアンスが表しやすいように構図を決めて、はじめは絵の具やパステル等をごく軽く使って...徐々に、画面に何かが見えてきました。

「絵の具の上に、クレヨンやパステルを重ねたい」「色鉛筆を使いたい」それぞれ使いたい画材がいろいろある様子。複数の画材を組み合わせるのは工夫のしがいがありますね。制作経験の多いラボのみんなは、画材の相性や重ね方のコツも、感覚をつかんでいます。

終盤になると、全体像が見えてきた様子。モチーフのニュアンスが伝わるように、どんな画材で仕上げると良さそうか見当がついてきたところでこの回は終了。どんな仕上げになるのか、楽しみですね。

それぞれ選んだモチーフの「白」をじっくり観察しながら、作品を仕上げていきます。微妙な色合い、細かなちがいなど、自分が感じたことを絵に表現しよう。

今年のアートラボは、みんな特に仲が良いのです。お互いの作品を見せ合って、どんなふうに感じるか、会話が弾むこともあります。客観的な目線で感想をもらうと、気づくことも多いもの。

こちらは白い紙袋に挑戦中。強めの色の画面に、アクリル絵の具をナイフでたっぷりとのせています。「ペインティングナイフを使ってみたかった!」今回の紙袋の質感に合いそうだ、とピンときたのでしょう。

「す、すごい!」ナイフだけを使った結果、本人も驚くほどの良い手応えがあった様子。さらにパステルなどで明暗の調子をつけて調整を進めていました。大胆で、気持ちよさそうに取り組んでいます。

「たいへんです!」と助けを求める声が。たまごをパステルで描いていたら、ある一部分だけ「画面がツルツルで色が全くのらない」とのこと。地づくりで使った画材の質や、色の塗り方に起因する問題が出てきた様子。やすりをかけたり、クレヨンを使うなど試行錯誤していました。

たまごとわたを組み合わせて描いているこちらの方。白以外の色も複数使ってたまごをしっかりと描写し、白いわたとの描き分けができています。「ツルツルになっちゃった」たまごが宝石のようにきれい!

パステルを使って、ホワイトチョコレートを描いているこちらの方。遠目で見ると「どうしても凸凹しない!」とお悩みでした。思い切ってパステルから絵の具に切り替えて、再度挑戦。

試してみたところ、絵の具のほうがチョコレート特有のねっとりした「白」が表現しやすかった様子。出したい効果が出せたようで、一安心。細かい描画が必要そうですが、がんばれ!

わ、豆腐?! これはシンプル故になかなか難しいモチーフです。絹豆腐でもなく、高野豆腐でもなく、木綿豆腐の質感を伝えるには「どこを描くといいかなあ」とじっくり考えていた様子。

布とゴムの質感の描き分けが課題になりそうなモチーフです。アクリル絵の具を筆でひっぱるようなタッチが、スニーカーのゴム部分の表現にとても合っていました。

カブを描いているこちらの方、とても色彩豊かです。反射や陰影、タッチなど、白を使っているのはほんの一部分だけなのに、カブの感じが伝わります。どことなく洋画家の岸田劉生のよう。本人曰く「岸田劉生がこんな静物画を描いているのは知らなかった!いいですねえ」

小さなポップコーンを描いている人も!こちらは絵の具とクレヨンを組み合わせて描写していました。少し描き進めると描きどころがわかった様子で、画面の中に複数描くレイアウトに挑戦していました。

食パンは人気のモチーフでした。中でも高校生たちの創意工夫はさすがです。近づいてよく見れば、黄、赤、青、緑...複数の色を使っていることがわかりますが、遠目で見た時には色同士が混ざり合って「鮮やかな白」として目に映ります。たくさんの色を何気なく使いこしています。

終了後、パネルから作品を切り離して完成。白が主役の作品がずらりと並びました。春からラボでの制作を始めた人たちも、ぐっと力がついてきていますね!特に高校生たちの表現の密度の高さには、参考になる点が多い様子。自分の感じたことをどんどん表現できるように、経験を重ねていきましょう。