
この回は、色と道具で様々な表現ができることを、自分の身体でダイレクトに体験していきます。トルネードに来るとテーブルがなく、いつも以上に広々とした空間が。中央に広げられた大きな白布を見て「なんかはじまりそうだね」

まずはじめに、色面を生かした作品を作ったアーティストたちを紹介。単色の作品を制作したフランスの画家、イブ・クラインや、巨大な画面に薄めた絵具を流し込んだアメリカのモーリス・ルイスなど、具体的なモチーフが描かれていなくても、色そのものの持つ力や空間性で、アーティストの感情やエネルギーを直接的に表現している作品に触れました。

みんなも大画面に色を使った制作を体験してみよう!スキージー、ハケ、ローラーなどの道具のほか、掃除用のブラシや軍手まで、こどもたちが普段の絵画制作にはあまり使わないものも用意してみました。「これは何だろ?」「使っていいのかな?」

意外なことに、ほとんどの子が迷わずに「これ使ってみたい」「私はこれ」と、それぞれ興味を持った道具を選んでいました。選んだ道具でどんなことができそうかを想像したら、絵の具の準備。パレットのサイズや絵の具の状態などをそれぞれで考えながら準備を進めました。

水でたっぷり薄めた子もいれば、チューブから出した絵の具をそのまま使いたい、という声もあり。画面の上に乗って描くため、みんな裸足になって体験していきます。同一画面でどんなハプニングが起きるのかワクワクです。

準備ができた人から、さっそく開始!「わーい!」いきなりど真ん中に絵の具をバシャッ!と広げる子もいれば、端の方からじんわりと慎重にはじめる子、感触を確かめるように取り組む姿も。それぞれの興味や性格がよく出ていておもしろい。

エンジンがかかるのが早いこどもたちは「こういうのやりたかった!」と開始早々から意欲がMAX。次々にいろいろな道具や色の違いを試していました。こどもの溢れ出るエネルギーには、見ている大人も圧倒されるほど。

布の上のあちこちに、色が広がっていきます。水を含んだ絵の具ほど早く広がり、一気に色面ができていました。隣の子の色と混ざり合い「おっと!」「いいよいいよ」「おもしろいね!」意図しない表現も楽しんでいました。

たとえ同じような色を使っていたとしても、道具や描き方が異なると、できあがる表情は実に人それぞれ。そして共同制作では、お互いの様子が普段以上によく目に入ります。「あの道具、いいな」「ちがう色も使いたい」「それいいねえ!」次々に新しいアイディアのヒントになることが見つかり、「したいことがたくさん!」

「きれい!」「次はこの色にしよう!」自然と道具を持つ手の動きが大きくなり、全身を動かしながら取り組むようになりました。表現もダイナミック!布が色でいっぱいになるとあちこちで混ざり合い、「見て、この部分すごくきれい!」とひとりでは体験できないような発見も多くありました。

●m×●mの布も、みんなで制作するとこの通り。一旦みんなで作品を鑑賞しながら、追加でジャクソン・ポロックの"ドリッピング"技法、フランケンサーラの"ステイニング"技法、そして白髪一男が足で描く"アクション"などを紹介。一度に紹介しきれないほどたくさんある絵画の技法に触れ、こどもたちは「やってみたーい!」「楽しそう」

色がたっぷり広がった布の上に、さらに自分たちの表現を試したい。こどもたちのチャレンジが続きました。はっきりくっきり跡を残すか、じんわりにじませるか。前半よりもさらに、絵の具の濃さや色の組み合わせを強く意識していました。

白髪一男さんのフット・ペインティングは、こどもたちにも衝撃だった様子。「足に絵の具をつけちゃおう!」と何人もの子が挑戦していました。絵の具のひんやり感や、布の上をすべる感触がたまらないようで、とにかく楽しそう。こどもたちの色彩感覚も身体感覚も、大いに刺激されていました。

こどもたちの中から「虹ができてる!」と驚きの声が。色合いや体の動かし方のコツに興味を持ち、この子はこの研究を独自に深めていました。虹職人が現れた!? 腕のリーチを生かしたアーチが、とてもきれいです。

ロープを見つけた子が発案した、新しい技法。縄に絵の具を浸して、「いくよー!」とジャンプ。ピシッ!っとぶつかった布に、しっかりと跡が残っていました。周りの子も「いいね!」「おもしろーい!」と刺激され、一緒に試していました。

こちらは道具にひもをつけて、ぶらぶらさせたり、大きく振ったり。「犬の散歩みたい!」ダイレクトに手で持って描くのとは動きがちがい、独特の揺れや勢いのある絵の具の跡が「かっこいい!」

水分が多い部分に、濃い絵の具を置くだけで、じわ〜とにじみがひろがっていき、偶然性の高い表現につながることもありました。気がつくときれいな模様ができている!ただただ、ゆっくり見つめていたくなるような美しさ。

やればやるほど新しい発見やアイディアが出てくるプログラム。2時間の制作中、常に作品が変わり続け、さまざまな道具や技法の効果を発見することができました。そして久しぶりの共同制作だったせいか、終了時にはいつも以上にこどもたちが打ち解けてなごやかな空気でした。

みんなで制作した大画面の作品を教室に広げ、改めて見直してみました。絵の具と水、そして道具や動きのちがいだけでも、多種多様な表情がうまれました。「水の力はすごい」という声も。

アクリル絵の具には、たくさんの種類のメディウムがあります。メディウムという言葉には「媒介する」という意味がありますが、美術の世界では、絵の具と画面の間をつないでさまざまな働きをしてくれます。どんなマジックが起こるの!? こどもたちも興味津々。

乾燥が早いアクリル絵の具を調整してくれたり、定着力をよくしてくれたり。またツヤあり/ツヤなし、透明感、ざらざらとした質感や、こんもりと盛り上がった表現ができるものまで、自分がしたい表現に合わせて選んでいきます。今回は役割の異なるメディウムを5種類用意したので、まずはそれぞれの感触を体験するために、表現サンプルの制作へ。

どの色の絵の具を、どのくらいの水加減で使うか、どんなメディウムを混ぜるか、そしてどんな道具で描くか。いろんな組み合わせで多様なテクスチャができあがります。絵の具やメディウムをたっぷりと使って大胆な表現を試す子もいれば、薄塗りで繊細な表現を試す子も。

いろんな色の絵の具をぎゅ〜っと絞り出し、半透明のメディウムをとろ〜り。たっぷりと使っているに、この軽さは新感覚!サンプルの台紙に描く前から、パレットを見て思わずにんまりしている子も。

一方、中に砂が含まれたメディウムは、思いがけないほどの粒感に「うわあ」と声が上がりました。これを使うと、重たく、荒々しい表現もできそうです。使う色や道具によっても、また表情が変わっていきます。

何か具体的なモチーフを描いているわけではなくても、この質感に「なんかかっこいい!」「いいねえ」とこどもたちが感性豊かに反応している様子。前回の制作で触れた、抽象表現の魅力が記憶に新しいのでしょう。

「洗い物が好き」という子が、実験的に「洗ったらどうなるかな?」と新しい技法を試していました。メディウムを混ぜて半透明になった膜が、一部剥がれ落ちている感じに「なんかいいじゃん!」

みんなのサンプルを並べて見てみることに。「これが好きだな」「効果がおもしろい」たくさんの発見があったようです。絵の具で描くという意識を変えて、メディウムで描くというくらいの気持ちで、たっぷりと使ってみるのもおもしろいですよ。「もっと大きな画面で使ってみたいな!」

ウォーミングアップもたっぷりできたところで、ここからが本制作。今回のテーマは「海」。水や波などを含め、古今東西たくさんのアーティストたちが取り組んできたテーマでもあります。古い日本の絵画から、西洋のポップな作品まで、改めて探してみるとたくさんの作品があるんですよ。

遠くから見た海景はもちろん、水中の生き物や植物などの具象を描くのもおもしろそう。目では見えない海辺の空気感や、波や水に対するイメージなど、抽象作品も良いですね。「海にあるものを描かなくてもいいの?」「色も自由なの?」「なんか面白そう」とこどもたちもわくわくしはじめました。

前回は共同制作で大きな布に描きましたが、この回からはひとり1点。それでも腕が届くのか?! というくらい大きな紙を配布しました。「早くはじめよう!!」と広い場所に広げて、制作開始!いきおいよく制作がスタートしました。

こちらの子は、「まずいったん青にしよう」と、ローラーにたっぷりと青をつけて大胆に転がしていました。すると...思いがけない模様が出てきて「なんか波っぽい!水面とか?!」

絵の具を平たくのばせるスキージもこどもたちに人気の道具でした。絵の具を画面にたっぷりと盛って、引き延ばすように広げていくと...不思議な魅力のある色の膜ができていました。「きれい!」メディウムのツヤも素敵ですね。

ザラザラとした質感や盛り上げ、薄塗りの伸びやかな透明感など、メディウムの体験によって、こどもたちが絵の制作で意識するポイントも変わっていきました。ひとつの作品の中に様々なテクスチャを混在させることもできると、表現の幅がぐっと広がります。

それぞれの画面上で、いろんな表現がはじまっています。他の子の作品から「いいなあー!」「なんかもっとできそうだな」と新たな刺激を受けていた子もいました。次回、どんな展開を見せてくれるのか楽しみです。

前回の作品を並べて見直しながら、改めて自分の絵をどんな海に仕上げるか検討していきました。「あったかそうな」「すごく冷たい海がいい」「大波!」「すごく穏やかな海がいい」描きたい海はさまざまです。中には「とにかくいろんな凸凹をつくりたい!」と、技法重視の声も。

アクリルメディウムは、現在ではいろいろな絵画作品に使われていますが、未だに「こんな使い方があるんだ」という発見があります。そのバリエーションの幅は未知数です。大画面でこどもたちがどんな発見をして、作品が展開していくのか、ワクワクしますね。

今回もこどもたちの実験は続いています。こちらの子は、はじめに複数の絵の具やメディウムを垂らすいわゆるドリッピングの技法をした後に、画面をペタンと折りたたむ。開いてみると…

自分の手ではできないような細かな模様ができていました。波の表面の、ゆらゆらとした動きのようにも見えるかも。何度もペタペタしながら好みの加減に調整していました。実験のつもりでしたが、あまりにカッコいいので「これもひとつの作品にしよう!」と決定。

メディウムには、それぞれの性質によって適した「絵の具との比率」があります。でもそれを敢えて無視して、多量のメディウムに、絵の具をほんの少しだけにして混ぜてみると、色の透明度が上がります。水で薄めるのとはちがった凸凹や透明感。みずみずしさの表現にぴったりですね。

こちらは、メディウムを混ぜた絵の具をポリ袋に入れて、ギューっとにぎって絞り出し!モリモリと立体的な線が描けました。筆でも刷毛でも描けないこのテクスチャー。大胆さがすごいですね!

料理に使うゴムべらを使っていたこちらの子。ペタペタと押し付けたり、スーッと薄く伸ばしてみたり、その加減は自由自在。動かした時にできる跡がおもしろいことに気がついたそう。

今回のプログラムで、フォークやスキージなども、すっかり「絵画制作の道具」としてこどもたちに認知されるようになりました。描く波の部分ごとに、道具を使い分けながら工夫していた子も。

とても原始的ですが、やっぱり自分の「体」は基本です。絵の具たっぷりな画面を撫でる感触が気に入った様子で、「もういつでも手を使っていいんだよね?」とうずうず。

「これも使えそう」と、絵の具チューブの蓋に発生しがちな「はみだし絵の具」のかたまりに注目した子も。さすがにこれは盲点でした!「金魚みたい。絵に登場させてみようかな」

迷いなく、いろんな色×表現を重ねていくこちらの子。次々に変わっていく画面を楽しんでいる様子です。最後にのせた表現で「完成!」ととても楽しそうでした。潔い制作です。

1回目の共同制作で、レインボーの表現をしていた子。その技術を海の波の表現に展開させていました。「色が混ざりきらないこの感じがいい」と繊細なタッチで、メディウムの感触を楽しみながらナイフを滑らせていました。うずまく感じがかっこいい!

夏休みにハワイの海でたくさん泳いだというこちらの子。「海の波の表面って、確かにこんな感じだ!」とリアルな様子を思い出しながら取り組んでいました。メディウムを使った盛り上げ表現がうまい!ハワイの海って、こんなきれな色なんですね。

海の生き物の中では、クラゲが人気。「光っているように見せたい!」と工夫していたこちらの子、はじめは画面全体を一度深い青のグラデーションに塗りつぶしておき、その上にクラゲをたっぷりの絵の具で描いていました。色の対比で、しっかりクラゲが浮き上がって見える!

荒々しい海、穏やかな海、しーんとした海、明るい南国の海、暗い深海…こどもたちの海のイメージはそれぞれで、そこから生まれる表現もやっぱり多種多様。制作過程が面白く、今月は大画面での制作をたっぷり楽しむことができた様子でした。

工作が大好きなこちらの子、海の絵を仕上げた後、さらに発想が広がり、釣り竿まで作っていました!「釣り糸を巻き取れたらなあ」と試行錯誤を重ね、リールの仕組みまで再現していました。