
この月は南の島、沖縄の伝統工芸をご紹介。日本には絞り染め、ろうけつ染、型染めなど、さまざまな伝統的な染めの方法があります。沖縄の「紅型染め」は、型のりを使った白いラインが特徴の技法。琉球王国時代から発展した歴史の長い技法です。

紅(びん=色)、型(がた=かたち)という名前なだけあり、使われている色や形に特徴が。独自の貿易ルートを持っていた琉球王国では、「日本」はもちろん、中国、インドなどの近郊の国の古典柄も積極的に自分たちの文化に取り入れ、発展させていたそうです。沖縄にはないはずの「雪」の形や、鶴や松など日本の"めでたい”柄もあちこちに。まさにチャンプルー文化。

さらに紅型の伝統色は、南国の自然を映した鮮やかな発色が特徴です。代表的な色としては、赤、黄、藍(青)、緑、紫など、見れば見るほど「ちゅらかーぎー」。特にこの美しい黄色は、王朝時代には王族だけが使うことを許された最高位の色だったとか。ビビッドなピンクなど、現代の私たちの感覚から見てもすごく明るくポップな色使い。

様々な国のかたちや色彩をチャンプルーしながらも、ひとつのデザインに美しくまとめているのがすごい!ラボのみんなもオリジナルの絵柄でTシャツ染めに挑戦です。道産子らしく雪や寒さなど北国の自然を混ぜてみたり、伝統柄に現代の中高生たちの身近なアイテムを交えてみるのもおもしろそう。実際に、最近の沖縄の紅型には、新しいアニメキャラなどもチャンプルーされはじめているんですって。

ラボのみんなが、好きなモチーフを混ぜこぜにしたらどうなるんだろう?まずは自分の好きなものをたくさん書き出してみることに。楽器、推しのモチーフ、色、キャラクター… 文字ではなく絵で描き始め、もう既にデザインができかけている人も!ちょうど先月に描いた、自分のお気に入りのもので埋め尽くしたポートレート(コンポジット・ヘッド)も大いにヒントになりました。

いろいろ出たところで、好きなモチーフを、黒い紙に白いペンで描いてみる。細かすぎる絵柄は、型作りがすごく大変になります。まずは色や陰影は使わずに、できるだけシンプルな表現にしてみよう。「どうして白い線なの?」実際に紅型染めをすると、最後のこの線の部分が白く抜かれるからです。「???」という表情で、まだいまいちピンとこない人もいましたが、ひとまず線描を体験。

同じく紅型染めをしているキッズコースでは、絞り出しの技法を体験中。ラボは全てステンシルの技法で紅型に挑戦です。つまり、とても精巧な型を、カッターで切り出さなければいけません。実はこの型抜きは紅型以外にも、日本各地の染め物にも使われている技法です。「どれだけ難しいのかピンとこない」と、試しにモチーフをひとつカッターで実際に切り抜き始めた人も。

定規を使って、とても細かく形作りをしていた人が。「できるかなと思って、やってみたらできた」とのこと。いや、冷静にみてこれはもう、職人の域なのでは!?まわりの人たちも「え?すごくない!?」「うっま〜」と教室中にざわめきが。いつものメンバーの新たな一面を、またひとつ発見した瞬間です。

仕組みや型抜きのことがわかったところで、実際にTシャツに染めるための絵柄のデザインを始めました。沖縄のチャンプルー文化にちなみ、できるだけいろんな要素を、混ぜこぜにできるとおもしろそうですね。普段だったら絶対組み合わせないもの同士でも、今回はあえて挑戦してみたい!

動物好きなこちらの方。いろんな動物を書き出してみたところで、「ヤマネコにしよう!」と、どーんと中心に置いてみたとのこと。実に大胆で、躍動感がありますね。まわりには紅型染めの古典柄を入れたいな、とあれこれ検討中。

これはきっと、かなりの虫博士にちがいない。そんなデザインをしている人もいました。クワガタの形をすごく大きく配置して、その中に古典柄を組み込んで…おおお、すごく独創的。ステキになりそうですね!

いろんな資料集から気になったものを集めてみたら「ぜんぶ日本の柄だった」という人も。梅の花をメインに複数を組み合わせる豪華なイメージになりそうです。

沖縄の紅型染め、そしてTシャツ。つまり「夏だ!」ハイビスカスやヒトデのほか、なぜか唐突に「中国語を入れたい」とのことで、「冰淇淋」という3文字をチャンプルー。しかも大きくどどーんと出てきましたね。聞いてみると中国語で「アイスクリーム」という意味なんだって。

いろいろアイデアが浮かんできて「まとめるのが大変!」という人も。改めてざまざまな参考例を見て、ため息が出ていました。とはいえ楽しい作業のようで、頭の中がいっぱいな様子です。「あともう一個組み合わせたい!」

A4程度の面積をつかった自由なデザインですが「やばい、盛り込みすぎたかも!?」という声もありました。「でもやりたい!がんばってやってみる!」これだけ盛りだくさんだとこの後の工程が心配ではありますが…とりあえずそれぞれのラフができました。

ラフの上にトレペをおき、線の太さを意識しながら図案化していきました。最終的に白い線になるところは黒で描く、逆に顔料の色がのるところ=白で描く。そしてこの後、カッターで黒い線の部分を切り抜いていきます。これは…切り抜けるのか?というくらいの細かい図案の人もいましたが、個別に声掛けをするも「やってみたい!」と意欲満点。

さらにこれは「顔良で色をつけるための型」ではなく、「白く輪郭線を残すためにのりを塗るための型」というのが、どうにもややこしい。得意な人はさらりと理解できますが、混乱する様子も大発生!「のりを塗りたいから、黒くするんだよな…」「この部分は、え〜と」「……どういうこと!?」ペンでなぞるだけのはずが、こんなに難しいなんて!

ロジックを確認しながら進めると謎解きみたいなおもしろさもあるので、コツを掴んだ人はみるみる図案ができていき、全体のデザイン像が見えてきました。近くの人同士で「ちょっとこれわかる!?」「たすけて〜!」などと助け合う様子も。

終わり間際になるといろんなモチーフが登場しました。どうにか下絵を描き終えた人もいれば、「まだ納得いかないです!」「次回までに仕上げてきます!」という人も。とにかくすごい熱量です。次回はカッターでの切り抜きが待っていますよ。イーヤーサーサー!

デザインを描いていると、自然と「ここはこの色にしたい」というイメージが膨らんできています。 少し広めの「面」をデザインの中に入れておくと、次回の彩色の際に、紅型染めの技法である「隈取り」も体験できます。色鉛筆でどんなふうにしたいか描き込んでいきました。

改めて確認ですが、自分が色をつけたい部分は、のりがつかないようになっているか?これは紅型染の制作で、大人でもすんなり理解するのが難しいポイントなんですって。何度経験しても、やっぱり混乱する時はするらしい。「これ大丈夫ですかね?」「こういう場合、"黒にする"で合ってますか?」何度も確認していこう。

そしてここからは、自分の図案を「糊を通す型紙」に仕上げます。染めに使う型紙は、のりや水分に耐えられるものでなければいけません。古くから柿渋を塗った紙が使われていましたが、現代ではポリプロピレンが含まれた合成紙があります。ただし、水には強くても裂けやすいなどの特質もあり扱いは要注意。こちらは紅型経験が豊富なスタッフが切り抜いた型のサンプルです。さすがの上手さ!

今回みんなが使うのは、細かな形を切るのが得意なデザインカッター。いつもとちがう道具がちょっとおもしろい。でもびっくりなことに、本場の紅型工房では、基本的にすべての道具が「手作り」という話。刃物はもちろん、その下に敷くカッターマットはなんと「乾燥させた島豆腐です。」えええ?!なぜ豆腐?! 島豆腐には適度な油分もあり、刃が錆びないメリットもあるそうな。

線が細すぎたり複雑すぎると、デザイン上では問題なく見えても、型彫りした際にたいへんすぎて自分が力尽きるかもしれません。また、どうにかがんばって切れたとしても、破れてしまうこともあり得ます。と、何度も念を押しましたが、ラボのみんなは挑戦してみたい気持ちの方がうずうずと勝る様子。じゃあ、それぞれできるところまでやってみるか!

海に浮かんだ島のように完全に独立した部分は、型紙を彫ったときに抜け落ちてしまいますね。そんな「ポロリ」防止のために、どこか1箇所、外側とつなぐ橋(ブリッジ)を作ります。これが型染めならではの味やデザインのアクセントにも。

ペンでは気軽に描けたところも、カッターで切ってみると「作業量がちがう!」「ぜんぜん進まないよ!」経験してみて体感する、この膨大さ…ここからよりシンプルな図案にすることもできますが「これの完成形がみたいなあ…」と、限界までチャレンジしたいという人が多数!何でしょう、このモチベーションの高さは。とりあえずみんなの様子をみることに。

実施前は、カットがすごく大変なんじゃないかな?と思われる箇所もあちこちにありましたが、さすがのアートラボ。実際に切りはじめると、繊細なデザインでも、確実に、きれいに切り抜く人が予想以上に多かったです。凝ったデザインにも、自発的に挑戦!自分の手の延長のように道具を使いこなせるよう技術を磨きましょう。

この回の後半には、型のりを塗布するという絶対に外せない工程が待っています。「もし終わらなかったら、続きは次回じゃダメですか?」という声もありましたが、残念ながらそれはできません!なぜなら、型のりは塗った後に1日以上乾燥させなければ、彩色ができないから。今回のりを塗っておかないと、次回どんなにがんばっても、色なしのただの真っ白なTシャツで終わってしまうよ!

「絶対に自分のお気に入りデザインで作りたい!」と、かなりの長時間、みんな集中して型を制作していました。切り終えた人から、カットの目印にしていた自分のデザイン用紙を、合成紙からゆっくり慎重にはがします。ドキドキ…そっと剥がさないと、細い部分が「プチッ」と切れてしまいますからね。最後まで、気が抜けない!

持ち上げてみて、ポロリと取れてしまう部分がなければ大成功!でももし外れてしまった部分があったら、セロテープ等で細かな修正作業ができますからご安心を。ここまでできた人は、一仕事終えてスッキリした表情に。そしてこの後は、気持ちいい感触の制作が続いていきますよ!

紅型染めで、「型置き」と呼ばれる要の工程でつかう、防染糊です。主成分は、もち粉と脱脂米ぬか。やっぱりこれも自然素材でできている!粉の状態で混ぜ合わせ、水を入れて捏ねたら一度蒸し器で蒸し、さらに熱々のうちに熱湯を加えながら練り続けること30分以上…しっかり粘り気を引き出したら、やっとモチモチの「型のり」が完成します。

みんな型紙制作が大変でしたので、蒸しの工程からはじめの練り作業までは事前に準備をしておきました。ここからラボのみんなが型のりの仕上げです。このモチモチの感触がなんともいえず楽しいようで「手で直接混ぜたいくらい!」カッターを使った細かな切り抜き制作の後だったので、この感触の開放感がたまらない。

それぞれの型のりが完成したところで、いよいよ「型置き」の工程へ。細かい網目の上に型を置くと、目が止まる部分と、透ける部分に分かれます。つまりこれが、型のりが「落ちる部分」と「落ちない部分」。いわゆるステンシルやスクリーンプリントと同じ仕組みですね。「すご」「なるほど〜」「おもしろそう!」

さっそく「やってみたい!」との声があがりましたが、みんなが持参したTシャツは1枚かぎり。ここで失敗は許されない…!はじめての「型置き」なので、一度別の布で試してコツをつかんでおきましょう。布の上に型を重ね、網越しにスキージーでのりを落としていきます。「ズレないかな…大丈夫かな」

ドキドキした様子で網の枠を持ち上げてみると、絵柄がくっきりと現れました。「うわ!すごくきれい」「いいね!」ここまでのがんばりがひとつ形になったようで、活気が高まります。みんな、お互いの作業の様子に興味津々です。

仕組みを体感できたところで、いよいよ自分のTシャツを出して「本番だ!」のりの粘度が高いため、型紙の上に直接のりを塗ろうとすると、どうしても型が動いてしまいます。「ズレないかな…」「大丈夫かな」他の人に押さえてもらいながら、協力してTシャツにのりを塗っていきました。

Tシャツは「バックプリントじゃないと」というこだわり派の人も。おお、そうきたか。もちろん紅型染めは好きな部分に絵柄を染めることができますよ!

次は紅型制作の最終回。色をつけたらどんな仕上がりになるのかワクワクですね! ちなみにこの回、型作りで時間いっぱいになってしまった人は「次回までの間に、トルネードに作業しに来ていいですか!」とどうにか間に合わせたい様子。学校の夏休み中、時間を調整してがんばっていました。

本場・沖縄には、紅型のスゴい職人さんがいらっしゃいます。色使いや技術などを、この回のスタートは動画でご紹介。みんな興味津々で見ていました。慣れた手つきで制作していますが、やっぱりものすごい手数だ!気が遠くなるほどの工程を経て生まれる着物の数々。ちなみにそのお値段は…「うわ〜!」それはもう、美術品レベルのお品なのです。

染め物に使う色は、絵の具等とは少し違います。各色の顔良と混ぜるのは、一晩水につけた大豆です。大豆に水を差しながらすり鉢で混ぜていくと、呉汁(ごじる)という伝統的な固着剤(バインダー)ができます。ラボのみんなも実際にすりばちとすり棒を使って、呉汁づくりを体験。少しずつとろとろになっていきました。

みんなで交代しながらしばらくがんばってすり続けていくと、大豆の粒はほとんどみえなくなり、ポタージュ状になりました。これを濾して、出てきたミルク状の液体が呉汁です。つまり絞りかすは「おから」ですね。

さらににじみどめの効果を高める「メイプロガム」という素材もほんの少量加えておきます。こちらも豆を原料とした植物系の糊なので、全部天然素材で食べられるものばかり。先人たちの知恵はすごい!ラボの中には理科実験系の話題が好きな子もいて「ふんふん、なるほど」と興味深そうです。

調整した呉汁と、使いたい色の顔料を混ぜるだけで、今回使う便型様の絵の具が完成します。えっこれだけ?! と思うくらいシンプルですが、テスト制作でスタッフもびっくりしたほど、色の定着性がかなり高い絵の具です。南国の強い紫外線にも色褪せないよう、一般的な染料ではなく、水に溶けない鉱物や土などの粉末からとれる顔料を主に使用するのが紅型の大きな特徴。

トルネードのみんなは、水性系の絵の具には馬毛の筆、アクリルや油系の絵の具には硬めの豚毛の筆をよく使いますね。今回はなんと、「鹿」の筆。しかも夏の毛は硬めで、冬の毛は柔らかいという特徴があります。紅型では、絹の生地には冬毛、今回のような綿系の記事には夏毛、と使い分けているそうです。

ということで、今回は鹿の"夏毛"の筆を使って色を置いていきます。すーっと伸ばして塗り広げるのではなく、垂直に立てて、くるくるとまわしながらすりこむように使います。その際、型のりの裏まで絵の具が回ってにじみが起きないように、生地に浸透させすぎないことが大事です。

馬毛などの筆で色をつけていくことも可能で、「これもふつうに塗りやすいよ?」という声もありましたが、鹿毛の筆を試してみたら「あ、たしかにこっちの方がちょうどいい!」「少ない絵の具でよく伸びる」「全然ちがうね」と感触のちがいを実感していました。

琉球紅型の伝統的に使われる色は赤、黄、青、緑、紫の5色五色(ごしき)が基本。鮮やかな色の境目は、鹿毛の筆でくるくるなじませるとグラデーションのような仕上がりに。この”隈取(くまどり)”技法は、先に塗っておいた色の上に、濃いめの差し色を加えることで、絵柄の立体感が引き立ちます。「きれい」「なるほど」「他の色でもやってみたい!」

呉汁の絵の具も、鹿毛の筆も、初めて使うものばかり。それぞれの「こんな配色にしたい」というアイデアが、そのイメージ通りにできそうか、色味やバランスをテストしていきます。前回のりの練習で試作した布が、このテスト制作でも再び役に立ちました。

複数の顔料を混ぜて、好みの色をつくっていきます。「涼しい感じにしたい」「ここは鮮やかなピンク」イメージがあるようで、どんどん手が進んでいました。天然の顔料の色味は、どこか優しい印象のものばかり。早くもそれぞれ各自の制作に没頭し始めています。

色味や筆の使い心地を確かめたら、のりを引いた自分のTシャツにそれぞれ色を差していきます。「なんか緊張する〜」「絵のまわりは絶対に汚さない」と、テーブルの上や使う用具を入念にセッティング。この辺の段取りの良さは、制作経験の多いラボならではです。

「筆についた他の色の影響を受けたくない」という理由から、スタートは彩度や明度の高い色から使う人が多くいました。この辺りも経験から自然と理解している様子です。筆をしっかり洗い、含ませる絵の具の量も加減しながらていねいに進めていました。

型のりのふちまで丁寧に色を入れていきます。「ほんとにのりの裏に沁みないのかな?」と少し心配になりますが、仕上がりで白いラインをくっきり出すためには、これが大事なコツ。ここは紅型職人さんの腕の見せ所でもあるらしく、ラボのみんなも筆に含ませる水分量を調整しながら挑戦していました。

お、こちらはさっそく、隈取風のグラデーション技法を駆使していますね。いい感じ!でも、にじみの制作がおもしろすぎて何回も色を差していたら「やばい!型のりが溶けてきてる!」あわわわ

はじめからイメージがはっきりしている人もいれば、最後の最後まで配色に悩む姿も。「ここ、何色がいいですかね?」といろんな人に相談しつつ、他のみんなの制作を参考にするためにぐるぐる見て回る。なかなか経験できない貴重な1枚なだけに、真剣です。

こちらの赤と緑の補色も、すごくきれいに出ていますね!みんなじっくり色を調整しながら、とてもていねいに色を入れています。完成形が見えてくるにつれ、教室全体のテンションもだんだん上がっていきました。作品を見せ合いながら「すご!」「かわいいじゃん」「いいね〜」とお互い褒め合う様子も。

一風変わった材料や技法を使う琉球の紅型染め、ラボのみんなもとてもおもしろかったようです。仕上がった作品をみると、すごく「ちゅらか〜ぎ〜!」夏のおしゃれに映えそうです。1点1点の図案のおもしろさはもちろん、色味や線にも、既製品にはない良さがあります。伝統工芸ならではの、ていねいな手仕事の良さを改めて発見しました。