2026.6 WATASHI’n BOLDO

WATASHI'n BOLDO①

「好きなもの」は、何気ない日常の中に
たくさん隠れています。
自分が無意識に選ぶものや、
長い年月で大切にしているもの。
そんな一つ一つが、
自分らしさをつくる大切な手がかりです。

このプログラムでは、
自分の好きなものを凝縮した
「寄せ絵」の手法で
セルフポートレートに挑戦。
久しぶりに鉛筆をたっぷり使う制作です。

プロセス

  • 鉛筆の準備はいいですか

    今月は久しぶりに主に鉛筆を使うプログラム。みんなから「やったあ」という声が。ふだんはデジタルデバイスで絵画を制作している人も増えていますが、意外と鉛筆好きの人も多いみたい。鉛筆メインの制作は久しぶりなので、鉛筆の削り方に加えて、トーンの付け方についても確認していきます。F・2B・3B・4Bの4種類、カッターでキンキンに削ってスタートしよう。

  • グレースケールを作ろう

    今回のプログラムでは、複数のモチーフをたくさん描く予定。どんなモチーフでも対応できるように、鉛筆で10段階のグレースケールをつくってみます。浅い色味から暗い色味まで、鉛筆だけでトーンを描き分ける。 「うわあ、学校の美術でも出てきたよ」「ハッチングが大変なんだよ」という声もありましたが、鉛筆の使い方はいろいろありますよ。

  • 一番濃い色から

    グレースケールの一番明るい部分は紙の色。じゃあ逆に、一番暗い色ってどのくらいの色味でしょう?それを確かめるために、自分の鉛筆で「可能な限りの暗い色」を描いてみよう。4Bの鉛筆を先端を尖らせ、芯を立ててガリガリと重ねてみて! 紙の目の隙間がなくなって、だんだん黒光りしてきた様子。

  • 調整がなかなか難しい

    そこから色味が段階的につながるように、一つずつマス目にトーンをつけていきます。10段階のうち、2〜9番目をどんな手順で色をのせるかは自由です。真ん中を入れる人もいれば、2番目に暗い色を入れる人もいました。鉛筆は練りゴムや消しゴムで調整できるので、はみ出しても気にしなくてOKです。鉛筆で描き足したり、練りゴムで引いたり、繰り返し調整していました。

  • 明暗定規になります

    描いてみるとわかりますが、中間色がとてもむずかしい。錯視で隣り合う色の強弱がちょっと強調されたりもしますから、マスの中を均一な色味にできるよう、隣の色を隠しながらていねいに調整するのがコツ。それぞれ自分の10段階のグレースケールができたら、これから描くモチーフの色味をとらえる定規として使っていこう。

  • 白黒モチーフ

    今回はできるだけ鉛筆の描画のコツを得るために、モノトーンのモチーフを用意してみました。まず登場したのは真っ白な風船です。「えええっ」「白かい!」「どう描くの」ざわめくラボのみんな。特に今年ラボになったばかりの中1のみんなにとっては、白いモチーフを黒で描くなんて「なんじゃそりゃ?!」とトンチのようなモチーフに感じられたようです。

  • 最も明るい・暗いところは?

    さっそく描き始めたい!ところですが、ちょっと待って。いったん自分で作ったグレースケールで、モチーフのトーンをチェックしてみました。モチーフ全体の中で、一番明るい部分(ハイライト)と、一番暗い部分を探します。「うーん、どんなに暗いところでも、2番目くらいの明るさじゃない?」「10番目なんて絶対ないよ!」さて、実際描いてみましょう。

  • ハイライトがでてきた!

    白い風船だからほとんど白い部分のように思いがちですが、本当に見た目が真っ白な部分を探してみると、蛍光灯が映ったほんの一部だけだと気づきます。つまりここが、絵の中でのハイライト。ということは…その他の部分は「もっとグレーにしていいのか」「本当?」半信半疑な様子もありましたが、まずは実際に手を動かして描いてみました。

  • つるっとさせたい

    風船がもつ、ツルッ、プルッとした滑らかな質感は、触るまでもなくみんなよく知っています。もちろん細かな線の重なりのハッチングでていねいに表現することもできますが、鉛筆の粉を意識してティッシュや指で画面をこすり、粉を伸ばして質感表現を工夫する人もいました。鉛筆ひとつでも、いろんな表現のちがいがあります。

  • これ見て!

    「白いはずだ」という思い込みを捨てて、鉛筆を思い切って強く使ってみたという作品が出てきました。みんなにも紹介すると「おおっ!」「かっこいいねえ」どこがかっこいいのか?を聞いてみると、遠くからでも伝わる"色の強さ"が魅力とのこと。ふむふむ、参考になりますね。ちなみにこれは新中1の仕事でした。期待大!

  • 次はスプーンに挑戦!

    グレーの幅を使って描くことに慣れたところで、次は金属の表現に挑戦。小さなスプーンがモチーフです。「やったあ!思いっきり描ける」「風船の100倍描きやすそう」などの声がありましたが、果たしてどうでしょう?風船とは取り組みの方向性がすごく変わります。細やかな目と全体感を持ちながら、描きどころを掴めるかな?

  • トーンがたくさん!

    形は少し取りにくいものの、中の描きこみに関しては、風船を描き終えたラボのみんなにはむしろご褒美!?というくらい楽しい取り組みだった様子。柔らかい鉛筆をぎゅっと使い、反射している映り込みをどんどん描き込んでいました。白い風船とは、グレースケールの使う段階が随分と変わりました。

  • 他のモチーフも

    ラボでの経験が長くデッサンに慣れている人は、手が早い!すきま時間にきのこや紙コップなどのモチーフも描くことができていました。一度にこんなにたくさんのモチーフを描くのは、トルネードでも珍しいかもしれません。ちょこちょこ休憩を挟みつつ、みんな自分の作品に集中してひたすら制作。

  • 感覚がつかめてきた

    形や質感がちがういろいろなモチーフを次々と描くと、鉛筆デッサンの勘どころがつかみやすかった様子です。その効果はすぐに表れました。どのくらいのトーンで描いていくといいか、そこからどう幅を持たせるかなどが感覚的に調整できるようになり、1枚の絵の中で使うトーンの幅が広がっていきました。すごいぞ!

  • 切り取ってみよう

    さて、できた作品が複数枚揃ったところで、最後にこのプログラムならではの取り組みを。なんと描いたものをはさみで切り取ってみます!「ええ!?どうして?」次回の制作のヒントの手がかりを掴むためです。大事に仕上げた描きたてホヤホヤの作品に、おそるおそるハサミを入れていきました。

  • 「なんじゃこりゃ!」

    切り抜いたバラバラの作品を、再度合体。しかも風船は頭、紙コップは首、スプーンは鼻…それぞれのモチーフを、人物像のパーツとして再構成!「誰だ(笑)」「もうちょっとこっちかな」「顔の向きが変わった!」「スプーンは目に使えるかも」など、黒い紙の上で、それぞれモチーフを動かしながら実験していました。

  • あの人の作品を思い出す…

    ずらっと並ぶと、シュールですごく不思議な感じがしておもしろい!あっという間にいろんな「物でできた肖像」ができました。すごくシンプルな構成要素なのに、既にいろんなちがいが出ていますね。「そういえば、こんな絵を描く画家いたよね?」「野菜や果物で顔つくった人」そうそう。次回の制作もお楽しみに!

WATASHI'n BOLDO②

今からちょうど500年前、
神聖ローマ帝国に生まれた芸術家、
ジュゼッペ・アルチンボルド。
モデルの性格や意味を象徴する
さまざまなモチーフを組み合わせて
一枚の肖像画に仕立て上げる
「コンポジット・ヘッド」の作品群は
後世に大きな影響を与え続けています。

遠くから見ると「人の横顔」なのに、
近づいて見ると、実にさまざまな
モチーフが見えてくる。
錯視を使った二重イメージの
絵作りを体験していきました。

プロセス

  • お答えください!

    このプログラムでは、ラボのみんなにたくさんの質問をして、好きなものを答えてもらいました。例えば「週3回以上食べているなあ、というものは?」「なってみたい生き物は?」「使わないとわかってるのに、捨てられないものは?」どれも何気ない質問ですが、自分のことを見直すきっかけになる質問ばかり。

  • モノクロでプリント

    それぞれの答えは、写真に撮って送ってもらいました。「撮影のために探したよ!」「大変だった」「ちゃんと送れてました?」ほとんどの人が締切までに返信してくれました。推しグッズに、小さな頃から大事にしてるもの、よく考えたらいつも近くにあるもの、よく食べるお菓子、ごはんのおかずなどなど。たくさんの画像をモノクロでプリントしました。

  • 10年以上持っているもの

    例えば、こちらの大きなぶたさんのぬいぐるみ。これはもう、かれこれ13年も一緒にいるらしい!すごい。ずいぶんクタクタになってきているそうですが、これからもまだまだ手放せないとのこと。

  • 好きな主食は

    今時の人はパン派も増えていると思いますが、「やっぱりお米派」という人もたくさん。しかも北海道米の「ゆめぴりか」が一番のお気に入りとのこと。「粘りやもっちり感のバランスがいい」というこだわり様。ごはんは大事!

  • 好きな触り心地

    一瞬びっくりしたのがこちらの「お母さんの後頭部」。いったい何が良いのか聞いてみると、「刈り上られた襟足の感触が好き」とのこと。なるほど!わかるかも。「今はちょっと髪が伸びてしまって触れないんだけど…」

  • パーツの切り抜き

    それぞれの画像を、大中小いろんなサイズで出力しておいたので、試しにいくつかを選んではさみで切り抜いてみました。これ、やってみると「どこで切り出すかが難しい」と迷うものがありました。例えばパンひとつでも、お皿ごと切るか、パンだけを切り取るか?

  • 横顔の出力の上で並べて

    さらに前回の教室で、ラボのみんなの横顔も撮影していました。こちらもモノクロで出力。この横顔をベースに、自分の好きなものたちをあれこれ敷き詰めて、自分の顔を再構成していきます。パズルのようにピッタリ合わせることは目指さず、とにかく重ねていく。どっちが上?角度はどうする?あれこれ手を動かしながらの制作です。

  • パーツのサイズ調整

    どんどん並べていくと、自分のポートレートのパーツには「もっと小さい方が」または「もっと大きくしたい」など、サイズ調整が必要な箇所が出てきます。どんな大きさのパーツがほしいかリクエストして、次々に出力しながらバランスを調整していきました。「肩につかう馬のぬいぐるみを幅12cmで」「このバナナを2倍のサイズで」

  • バナナは便利

    カーブした形、すべすべの質感、明るい色合い…バナナはいろんなところに使いやすいという声が。例えばあごのラインや後頭部など、人体にある丸みをもった部分にぴったりらしい。「でもこのままではバナナだらけになる!」よほどバナナが好きな人になりそうですね。

  • パーツが足りない!

    あれこれ試しながらコラージュで顔を作っていますが、「なかなか埋まらない!」隙間を埋めたくなるらしく「なんかなかったっけな」「あれだ!」「いますぐ食べたいものはスイカ!」自分のスマホを出してきて、画像を増やし始める中高生。すごい集中力で教室は静かでしたが、頭はフル回転。

  • わたしの肖像!

    かなりがんばって手をかけたコラージュ作品。並べてみたら、それぞれの特徴がはっきり見えてきた!ラボのみなさん、上手です。自分の顔立ちに合わせながら、「これが特に好き」というものを全面に出す。ふたつの問題を同時に解決させるために、たくさんの工夫をこらしていました。

  • 興味津々

    他の人の作品を見るのもめちゃくちゃ楽しい。「みんなの推しが見える」「おもしろ〜」「このアイテムかわいい」「あ、これ私も好き!」意外な一面も見えたりしておもしろい様子。さらにバランスのとり方や配置の技など、何をどんなふうに使っているのかという点でも刺激がいっぱい。興味深そうに見ていました。

  • 画用紙にトレース

    でもコラージュは、あくまでラフという位置付けです。ここから自分の手で描いていくために、軽くアウトラインを画用紙にトレースしていきました。このトレースを元に、次回鉛筆で陰影や質感を描きこんでいく予定。

  • モチーフ描き込み

    描くものがたくさんあってたいへんそうだけど、どれも好きなものや大事なものだらけ!完成するとすごい見応えのある作品になりそうですね。がんばっていこう!

WATASHI'n BOLDO③

自分を象徴するモチーフの形と、
横顔のパーツをシンクロさせながら、
一枚の作品を描きこんでいきました。
お菓子や飲み物のペットボトル、
キャラクターグッズや文房具、
小さな頃から手放せないぬいぐるみ…
大好きなものたちで、溢れてる!

現代の中高生たちの日常生活や
興味・関心が見え隠れする、
不思議なポートレートになりました。

プロセス

  • モリモリだ

    さて、いよいよ描き込み!ここからが本制作です。前回のコラージュで作ったラフの時点で、かなりインパクトの強い作品になりそうな雰囲気です。「鉛筆で描けるのが楽しみ!」という人が多いのですが、「それにしても数がすごい…」。さあ、どう描いていく?!

  • それぞれのアプローチ

    鉛筆の硬さのちがいを表現にいかすことを改めて確認した上で、制作スタート。1回目の取り組みで複数のモチーフをデッサンしながら、鉛筆のトーンがいろいろ作れることは経験済みです。スタートはみんなスムーズな滑り出し。

  • 描くのがおもしろい

    少し丸みがある、凹んでるなど、各モチーフにはそれぞれの立体感があります。しかもそれらを合わせて、自分の横顔のパーツとしても機能させたい。それが「寄せ絵(コンポジット・ヘッド)」のおもしろさでもあり、むずかしさでもあります。ひとつのまとまりとして、どう見せていくか、工夫が問われます。

  • 好きなものだらけ

    この制作は「数を描かないと、ひとつの作品にならない」という質の作品です。最初の描き出しからみんなぐいぐいと積極的に手を動かせていたのは、自分の好きなものだらけだからというのも理由のひとつ。制作へのモチベーションが高い。「うわ、うまく描けた」「けっこうおもしろい」

  • 「文字か…」

    好きな食べ物でお菓子のパッケージを撮っていた人も多く、「そのグミ美味しいよね」などとクラスで盛り上がっていました。でもほとんどのパッケージには、イメージビジュアルや大小さまざまな文字が…「こう使うと知ってたら、これは選ばなかった!」と苦笑い。全部描くべきか、悩ましいところ。全体のバランスをみながら調整しましょう。

  • このモチーフだけは!

    いろいろなものをコラージュした中でも、自画像の中で重要なポイントや、自分が特に好きだと思うモチーフについては、じっくり描く時間を確保していました。たとえば「馬が好き」という人は「この馬のぬいぐるみだけは、絶対かわいく仕上げたい」と気合いが違う。

  • 背景を黒く仕上げる

    しばらく描き込みをしたところで、いったん”ブレイクタイム”。と言いつつ、「背景を暗くする」という制作にスイッチです。「この単純作業がたまらない」「モチーフを描くより楽だね」という人もいましたが、やっぱり途中で手が疲れてきて「ぜんぜん休憩じゃないよ〜」なんて声も。

  • 残りの部分が浮き彫りに

    ぎゅっと塗り込んで背景を落ち着かせると「中の白さがめっちゃわかる!」「ひえ〜」どこを描くべきかがはっきりと見えてきて、どうにかして埋めたい!という衝動に駆られた様子。それを後半の原動力にして、ここからさらに描き込みをがんばりました。

  • 全体を進めるには

    一つ一つのアイテムには細かい色の違いがありますが、まずはパッと見た時の色味の印象をおさえたいところ。複数のモチーフを次々描く必要があるので、これは相当いいトレーニングになりそうですね。

  • 「今から描き始めます!」

    実はみんなが描き込みを始めてからも、引き続きコラージュの仕上げやトレースにじっくり取り組んでいた人がいました。周りからは「え、今から描くの?!」「間に合うの??」なんて心配の声がちらほらありましたが…

  • 「めっちゃ得意かも」

    描き出したら、驚きの早さ!まわりを追い抜きそうな勢いです。みんな「…なぜ!?」「どうして!?」「どうやってやればいいの?」と、その秘訣を知ろうと人が集まってきました。本人的には「ざっくり進めるのが得意だからかも…」とのことでしたが、描きかけの作品を見ると、全体の中で暗い部分からトーンをしっかりつけているのがコツっぽいぞ。

  • 「これ、最高傑作!」

    一枚の絵の中でも、それぞれ「ここは特にうまくいった!」と感じられる部分がある様子。例えばこちらの高校生は「このヘッドフォンがうまく描けた」と手応えが。さらに一言、「今更だけど、鉛筆のコツが初めてわかったかも。」もともと鉛筆での描画が得意な人でしたが、この回で自分なりにしっくりくる感覚を得たようです。

  • 「もうすぐだ…」

    クラス全体に「描き終えるまでは止まれない!」といわんばかりの勢いがありました。すごい集中力。えんぴつだけでこんなにたくさん描き込むと、さすがに画材が手に馴染んでいき、初回とは手つきがちがいます。量をこなすことで、はじめてわかることもある。

  • す、すごい…!

    ラボの中高生の中には、「絵画」いうだけで超集中できるという人もポツリポツリと。まるで水を得た魚のように、深海に潜ってひたすら描き続けていました。疲れないのが不思議なほど、淡々と長時間集中モードで制作。作品も自ずと「やば!」「すごずぎ」と周りが驚愕する密度に。アルチンボルドのような密な感じが出てきています。

  • 「今日も描いた〜」

    鉛筆で描き続けると手がこうなります。美術系の制作経験がある人にとっては、あるあるの図。でもこのスッキリ爽快そうな顔を見ると、たまにはこんな「とにかく描く」という制作をするのも良いものですね。アルチンボルド風、「わたしんボルド」の完成!

さくひん

アートスクール・トルネード

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