
美術好きな親子がたくさん集まるトルネード。でも世の中には「美術はおもしろくない」「楽しみ方がわからない」という人も少なくありません。美術館賞の入門書を読もうとしても「むずかしそう」「どこから開いていいのやら」という声もありますが、本来、アートはもっといろんな楽しみ方ができるもの。このプログラムでは、現代の中高生のみんなが、新しいアートの楽しみ方を見つけていきます。

プログラムのはじめにご紹介するのは、ドイツのルネサンス期の美術家アルブレヒト・デューラーの『自画像』。ラボのクラスでは「見たことある」という人も少なくありません。この絵の見どころをトルネードのスタッフが話し合っていたところ、発見したのは…ゴージャスなウェーブヘアではなく、おでこにちょこっとだけ出ている”前髪”。これ、どうしたの?切りすぎた?!

はじめは厳粛な表情のデューラーの姿を真面目に見ていたみんなが「プッ…ほんとだ!」「やばいって」「ダメ、もうふつうに見れないっ」と大爆笑。さらに「しかも、なんか切ない顔してる?」「切りすぎちゃった、とか言ってそう」など、いろんな妄想が広がってしまう様子。それまでの見方が180度転換してしまいました。

ではダ・ヴィンチの『最後の晩餐』は、みんなの日常の視点から見るとどうでしょう?「おかずの取り合い?」「…私の食べちゃったの!?とか?」「キリストが仲良く食べようってなだめてる」「いや、自分のだって言ってるのかも」誰かの発言から、どんどん想像が派生して、まるで現代のアニメのワンシーンのようにセリフまで浮かんできます。「なるほど」「おもしろいね!」

あの絵もこの絵も、たとえ知らない作家の未知の作品だとしても、いろんな楽しみ方ができるはず。描かれた後、数百年後の世界に生きる自分たちの目や感性で、いろんな作品を見つめてみよう。 「今だったらこんなシチュエーション?」「自分だったら」「目の前で起きていたら」などと自分事として鑑賞することで、楽しい見方や親近感のある場面にも感じられそうです。

この鑑賞は、自分ひとりで見るよりも、誰かと一緒の方が広がりが出てきそう。ということで、ペアになってお互いの発見や見え方、どんな解釈かを話しながら進めていくことに。大人数だと気後れすることも、ふたりだけの話なら気兼ねせずに話ができる安心感もありますね。まずは配られた名画をよく見てみよう。

すでに楽しくなっているので、みんな何がどう描かれているのか、何かとっかかりを探すように、作品を隅々まで見ていました。「この人だけすごく…目立ちすぎじゃない?」「ここ、おっかしい!」「なんか赤すぎだよね?」なんて、ラフなツッコミが続々と。重厚そうにみえる作品も、素の感覚で向き合うとどんどんおかしなところが見つかります。

会話に夢中になり、さらに笑いすぎて、はじめの発見を忘れてしまいそう。ひとつひとつが後々大切な発見になるかもしれないので、出てきた言葉は忘れないうちにメモしていきました。カードがどんどん増えて、ひとつの名画に対して、いろんな見方が増えていくのが可視化されていきました。これを見るだけでもおもしろい。

話がヒートアップするとともに、今度はカードが増えすぎてしまった!そこで大きなシートに貼ってまとめていくと、最初の方で貼った言葉に対しても「どういうことやねん」などさらにツッコむ言葉もペタリと追加されていました。ペアになって対話しながらなので、話がポンポンと展開していく様子。

時には「そっち系!? たしかにありかも!」など自分では思いつかなかったアイデアに唸る場面もありました。また「これ、何ていうかさ…」などと、ニュアンスがぴったりな言葉を探していくのも楽しい様子。中高生たちが高い感度で作品と向き合い、しっくりくる言葉が出ると「やばい!それだ!それ採用!」と、ビビッドに反応していました。

めちゃめちゃ盛り上がってるチームは、会話が早い!よりよい切り口を見つけようと、あれこれつっこみ合い、掛け合いが続き、じきに渾身の一言が出ると「おー!それいいね!」次々と他の作品にも手が伸びて「これいけるかも」「おもしろそう」など、どんどん見どころを探していきました。

それとは逆に「これはどう捉えたらいいんだ…!」と悩む作品もある様子。シュールな作品は、支離滅裂に思えて、とっかかりが掴みにくい?「う〜ん」ペアをまたいで、一緒に考えることも。普段はおとなしめの人も、ポツリポツリと発する言葉が実におもしろかったりします。自分とは異なる視点を知り、お互いの感性に触れていきました。

各作品について、いろんな見方が並びました。そしてこの活動の仕上げはなんと、日本語の伝統的なリズムである「五・七・五」で、各作品の見どころを表現すること。このリズムに沿うと、心地よい響きが生まれます。さらにうまくゴロよく言い切ることができれば、その印象が記憶に残りやすくもなります。短い言葉に、このおもしろさをどう凝縮できるだろう?

短い言葉で、言いたいことを、そのニュアンスまで伝えていく。さらにリズムに合わせて...なんてすごく難しいことだと思いましたが、さっそく「できましたよ!」と、自信あり気な声が。は、はやっ!ここまでの活動で、いつもよりも言語脳が活発になっていたのでしょうか。

バチカンにあるカラヴァッジョの名作『キリストの埋葬』。いわずもがな、これはイエス・キリストが亡くなった厳粛な場面なのですが…キリストさま、ごめんなさい!現代の日本の中高生には、夜の酒場で酔ってつぶれた、大人たちの大騒動に見えてしまったようです。

せっかくの「五・七・五」表現なので、筆文字で詠んでもらいました。筆文字が久しぶりな人も多く、これまたちょっと新鮮な様子。「書道●段です」と、すらすらと美しい筆文字を書く人を発見。カッコ良すぎる!筆文字を書くのが「大変だ〜」という人もいるので、困ったら相談に乗ってもらいましょう。

堰を切ったように、ツボが伝わる名作が続々と。お笑い好きの子も多いのか、作品鑑賞で見つけた新たな見どころを、ウィットに富んだ読み句にのせていきました。これは感性が問われる活動だなあと思いますが、思わず「うまいっ」と唸らせる作品も少なくありません。

みんなの句によって「そ、そこ見るの!?」と意外なところに視線が誘導されたり、「あの名画は、そんな場面だったの!?」と認識が覆されたり。1回のプログラムで、名画の見方をここまで自由自在に広げたラボのみんな、お見事です!クラスみんながお互いの見方や感性に触れ、刺激がいっぱいでした。美術語術語五・七・五、流行る?!

前回制作した名画の五・七・五。土日の2クラスに分かれて作っていたので、まだ見ていない名句がたくさんあります。全体を見て歩きながら「うまい!」「これ、めっちゃ好きだな〜」見たことがある絵でも、他の人たちの視点には発見も多く、見方が広がってすごくおもしろい。

今回、作品の見どころをなぜ五・七・五にのせて句にしたかというと...春から新しくラボになったみんなを交えて「大カルタ大会」をしたいと思っています。土日クラスの作品をすべて合わせると、もう70点以上!いろんな感性、いろんな発見が混ざり合ったおもしろい体験になりそうです。

普通のカルタではありません。それぞれの五・七・五に表された「見どころ」に沿った模写をして、絵札を作ります。名画をまるっとそのまま描き切るのも良いのですが、どうしたらその句で表現されていることが、より伝わりやすくなるかな?と少し工夫していけるといいですね。

自分が前から好きだった、あの名画を描く?それとも前回自分で句を詠んだ、こっちの名画にする?他の人が句を詠んだ名画を模写するのも、もちろんOKです。どれから始めようか迷いますが、何かとっかかりがありそうな作品から始めて、手応えを掴んでいきましょう。

みんなが作った五・七・五の視点は、実にさまざま。その視点を伝えるため、ポイントになる人物の表情や、背景とのバランスを各自で探ります。今回は不要な部分はカットして描く部分を絞りました。この取捨選択が、この制作のミソ!この子はスマホで人物の表情にズームアップ。「ここを描こう」と写メで撮っていました。

主にアクリル絵の具で画面の色合いのベースを作り、そこから先の細部の描きこみは、それぞれ画材を選んで進めていました。新しくラボになった中1のみんなは、アクリル絵の具の感触を試しながら色作りを楽しんでいました。「発色がいい」「薄めても色が強い」「いいねえ」

多くの名画には、それぞれ印象に残る特徴的な配色があります。例えば背景色がそっくりなだけでも、「あの名画だ!」とピンとくることも。作品をよく見て、画家の色使いのポイントを探っていきました。

こちらはポートレート作品で、絶妙に色が混ざり合っている部分を発見。白の中にも、複雑なニュアンスがある。それを再現するために「クレパスがいい」と、さまざまな色を重ねて混色しながら、色味の研究をしていました。

モネの池を描いていた人の模写には、鮮やかな赤が!「こんな色があったんだ」よく見ると色の重なりの中に、意外なこんな色が見えますね。描いてみて、初めて見えてくるものがたくさんあるようです。

一部分をトリミングして拡大して描きたいという人の中には、こんな工夫も。スマホのカメラで作品を撮影して、画面上で大きくしたり、小さくしたりしながら、構図を検討。現代っ子の技ですね!

こちらは、この「ハッ」としたようにも見える表情がとても大事とのことで、ここにかなりじっくりと時間をかけて取り組んでいました。見せ所がよくわかっている!

長く制作をしているラボの人たちは、手際よく名画のポイントを捉えた制作をしていました。色の強さを合わせることも当たり前!?とばかりに、アクリル絵の具やクレパスなどの組み合わせを使いこなす人が多数。すごい。

勢いがある人は、この1回のプログラムだけでも複数の作品の模写を完成させています。まだまだ描きたい作品もありますが、次回はよりカルタらしく絵札を仕上げる加工もしたいですね。みんなで協力して、どんどん作っていこう!

前回「アートで五・七・五」の制作がかなりはかどっているラボのみんな。いろんな作品を描くことで、名画の”見どころ”を絞って描くコツもつかみはじめている様子。今回も引き続き、読み札に合わせた絵札作りをしていきます。

日本画もあれば、古いテンペラ画やフレスコ画、油絵の具、シンプルなドローイングなど、実にさまざまな技法で描かれています。前回とは雰囲気のちがう作品に挑戦したり、「浮世絵が好き!」という人は、シンプルな分たくさん描くことを目指したり。それぞれのペースでいろんな取り組み方がありました。

こちらは油彩の名画を、クレヨンでじっくりと描き始めています。「イケてない?」と手応えがある様子。ほとんどの作品が、実物よりも小さめのサイズで模写しているため、自分で使いやすい画材を選んでいます。

そんな様子を見ていた周りの人たちも、「すご!」「ムリ!」などと言いつつ、大いに刺激を受けている様子。クレヨンをぐっと強く使い、厚みのある重厚なタッチや、鮮やかな色合い、独特な混色ができることを確かめて「おや、いいかも?」

こちらはピカソの『ゲルニカ』。うまい!はじめは描き出しやすいように、トレースをしてから描いていましたが、慣れてくると「トレースなしでもいい」とフリーハンドでサクサク描き始める人もいました。

なんと、この制作のために濃厚なオイルパステルを持参した人が。カミーユ・コローの《モルトフォンテーヌの思い出》、木が大きなモチーフで、葉っぱをオイルパステルとペインティングナイフで表現。葉の重なりがリアル…!まわりの人も反応!「こんなこともできるんだ」「おもしろい」と興味津々。

中世の西洋画の多くは、緻密な描き込みや、何層もの絵の具の重なりで重厚な画面を作り出しています。その魅力を、透明感のあるアクリル絵の具等を駆使して、鮮やかに再現!雰囲気を似せるコツをつかんでいますね。

前回から、集中して大量に模写をし続けています。「ふう〜!」「ひさびさに描いたな」制作欲の強いラボのみんなも、かなり満腹感があるほど!中には「まだ描きたいものがある…」という強者もいましたが…

ここでいったん気分を変えるため、絵札をカルタ風に加工する制作を。改めてカルタになることを考えてみると「だいぶデカいよね」と気づいた人が。そう、名画の模写としては小さめサイズでしたが、カルタにするにはこれでもずいぶんビッグサイズです。読み札の頭文字を入れるためのマルも、すごく大きくて「かわいい!」

カルタ・花札などの日本のカードゲームは、小ぶりな割に、分厚くて固い。多少ハードに扱っても大丈夫なくらい、しっかりとした作りになっています。競技かるたなどは、今ではスポーツですからね!それにならって、ラボのカルタも芯材に厚紙を貼っていきました。ちなみに裏面は東洋・西洋の名画を問わず、渋めな茶色で統一。

カードの縁は、マスキングテープで縁取りを。カードを保護する役割も兼ねています。これらの作業工程ごとに役割を決めて分業で進めていくと、どんどんできあがっていきました。もちろんみんなが手をかけて描いた模写作品なので、扱いはとてもていねい。「きれいに仕上げよう」という意識が高かったです。

マルの中には、読み札の最初の一文字を、墨文字で。ひらがなを一枚、ペタッと付け足すことで、一気に雰囲気が出てきましたよ。「めっちゃカルタになった」「おもしろいね」改めて、みんなの模写作品と句を見直す機会にもなりました。楽しさや工夫を、再発見。

文字を書く担当は、「延々書いていたい」というくらい、文字を描くことが好きな人。ここは特に得意が引き立つ仕事でした。次々届くかるた作品をさばく姿がカッコいい!「じゃあ私は...」と自分の得意なことや挑戦してみたいことに取り組みながら、お互いに好循環が生まれていました。

最終的に土日のクラス合わせて、75組分のかるたが完成!「え!今日は遊べないの?」残念そうな声がありましたが、大丈夫。来月のプログラムでたっぷり遊べますよ。次回のトルネード初のカルタ大会をお楽しみに!