
この月のテーマは「レトロ」。教室の一角に、お菓子や生活雑貨などの昭和のデザインを紹介するコーナーが登場。古い「ビスコ」の箱や、マッチ箱、ステッカーや包装紙など、おおお、いろいろあるぞ、おもしろそう!

教室に来るなり、「わ〜かわいい!」と飛びつくように見入る様子も。「マッチ好きなんですよね〜」「なんかかわいいよね」など、古いものが好きという人がやっぱり一定数いました。普段から雑貨などにアンテナを張っている様子。

さらに最近は"ニューレトロ”というジャンルもあるようです。レトロな要素を、現代の感覚で再構築して楽しむスタイルのことで、まさに今の中高生たちの感覚にもすんなり結びつきそう。どこか素朴でゆるさのあるデザインに、思わず顔もほころびます。

でもいったい何が、これらのレトロな雰囲気を作っているのでしょう?そもそも、z世代・α世代の中高生はリアルタイムで体験していない文化です。それぞれの細部に注目しながら、レトロをちょっと分析してみましょう。

古いパッケージの、文字の形、配色、枠など、いろいろな要素を切り離して分類していきました。ひとりひとつずつ取り組むだけでも、みんなでまとめるとあっという間に見応えのある量が集まりました。

これが一番わかりやすいかもしれません。手描きで味わい深い文字ばかり。いろいろなフォントの中でも、角が角ばったゴシック系、綾がついた明朝体系、丸文字も混ざっていました。

こちらもいろんなタイプがありました。太さや色、飾りなど、並べてみるとすごく見やすい!まるで資料集のよう。パッと見ただけではそれほど目につかない要素かもしれませんが、全体の雰囲気には大いに影響しています。

今回、それぞれに持参してもらったお菓子。身近なスーパーやコンビニ等でも手に入りやすい駄菓子の中から、よく食べているものを持ってきてもらいました。それぞれの好みはほんとに色々!

ここからはお菓子のパッケージをレトロな姿に変身させていきます。どこから始めてもOKですが、文字部分から試すのがおすすめ。現状のロゴをそっくりに描いてみるだけでも「やばい、なんかおもしろい!」デザイン好きにはたまらない制作。

明治・大正時代は、西洋文化が日本文化に取り入れられて間もなく、文字を読む方向の右左が混在した時期がありました。まずはこれを試したい!と描いてみる人が複数名。今の私たちには違和感しかないですが、これだけでもたしかに当時っぽさを感じます。

「赤い文字って、なんか昭和のデザインに多い気がする」と文字色に目をつけた人も。それを検証するべく、いろんなお菓子の文字を赤で、フォントは統一して表現してみたそう。これもすごくおもしろい!

現代のフォントは、グミの感触が伝わりますね。ぎゅっと詰まった感覚はそのままで、フォントの形を変えてみると...一気に"昭和レトロ"っぽい?素朴な親しみやすさが出てきました。なんだか手塚治のマンガを思い出させます。

もちろん、お菓子の味わいも大事な要素。なんて理由もつけながら、この回はそれぞれの席で、モグモグモグ...「よかったらどうぞ〜」などとみんなでお菓子交換をしながら制作を進めていました。ちょっと一息入れたい!そんな気分も味わいつつ。

オレンジフーセンガム、箱タイプは昔ながらの形ですが、最近は小袋入りのパッケージもあるんですね。こどもたちも「知らなかった!」とのことですが、何より注目したいのはこのグラフィック。昔からの文字も大事に生かされていますね。

商品名の文字だけでも、かなりいろいろと試せるようで、次々とアイディアを生み出す人も。何だかものすごい勢いで増えていました。描いてる本人は「すごく楽しい!」

こちらもロングセラーのお菓子、「プリッツ」。ネオン管のイメージで描いたそうです。色も、まわりの装飾的な部分も合わせて、「なんかやたら平成っぽくないですか?」と本人もおもしろがっていました。そうか...平成も既にレトロなんだよね。

レトロ好きは中高生だけではありません。お迎えの時間には「わー、これはなつかしい」「こんなにかわいいものがあったの?」と保護者の方たちもレトロコーナーに興味津々。思わず見入ってしまう魅力がありますよね。

みんなが持ち寄ったたくさんのお菓子。その特徴は、やっぱりパッケージにも表れています。それぞれがどんな美味しさのお菓子かを想像させることを目指して、箱や袋、ラベルの絵や文字など、様々な点からパッケージをリデザインしていきます。

現代のデジタル技術とは異なる、古いものならではの味わい深い表現には、手作りの加工がよく合います。経年劣化による変色や退色、印刷技法のちがいによる独特の風合いづくりを、小さな箱作りで少し体験していきます。

インスタントコーヒーでじわじわと色付けることで、古い紙のような質感に。これはラボのみんなも「へえ〜」「いい感じ!」と新鮮だった様子。自分の制作に取り入れながら、その風合いを楽しんでいました。

微妙な版ズレやインクのにじみ、かすれなどは、レトロな雰囲気や味わいとなり、魅力と捉えられていますが、現代の印刷技術では再現が難しいもののひとつ。ステンシル(孔版)を使えば、昔風のちょっと荒めのかすれや版ずれなども。

コーヒー染めの紙の上に、穴を空けた版を重ねて、上から絵の具をのせてみると...筆で塗るのとはひと味違う、古い印刷物に近い風合いが現れました。その仕上がりの良さにみんな思わず「わあ」「すごい!」

技法をすぐに理解して、さっそく自分の制作に活かしていました。ステンシルの穴ごとに色を変えたり、途中で色を変えてグラデーションにするなど、それぞれの展開も。かわいいですね!

みんなの小箱を集めてみると、あっという間にたくさんのサンプルができました。どれもすてきな雰囲気で、お菓子以外にも文具や雑貨など、いろんなものを入れてみたくなります。

ここからは改めて、自分の好きなお菓子のパッケージデザインへ。袋にする?箱にする?どんな大きさ?どんな素材?中に入れるものと、外側の形の組み合わせを考えながら、全体像のラフスケッチを。

「箱型にするのもなんかいいなあ」「どうしよう」いろんなアイデアが浮かんでいました。中には、お菓子のキャラクターの想像が果てしなく広がる人もいる様子。どんなキャラクター設定にするかを考えることがとにかく楽しいらしい。

現代のパッケージでは、フィルムの袋に入ったお菓子を、レトロさをねらってあえて箱型にチェンジする、という人も。ちょうどいい大きさの箱の展開図を作り、ベースづくりをしていました。

袋にしたい場合は、やっぱりフィルムの袋ではちょっとレトロ感が足りない...。そんな人には、エイジング加工等もしやすい和紙などがおすすめです。和紙は水性系の画材を使っても水に強く、シワ加工にも向いています。何より、あたたかな風合いが持ち味。

いろいろな選択肢があるので、スケッチがたくさん出てきて「ああ〜、決まらない!」「ちょっと休憩していいですか?!」今回も、制作の合間にお菓子をもぐもぐ...隣の人が「それおいしそうだね」「交換しよう」自然とお菓子交換会が繰り広げられていました。

そんな中、「あ!あたりだ!」の声が。そういえば、パッケージにこういう当たりやおまけがついたお菓子も楽しいですよね。ちなみにこれは土曜のクラス。さらにその翌日の日曜クラスではなんと...

ええええ?!1人の子が2つも「あたり」を出していました。ど、どういうこと?!みんな日頃の行いが良すぎるのでしょうか。こうなるともう、 「あたりつきのパッケージを作れ」と、見えない何かに推されているかのような。

そんなにぎやかなプログラムですが、みんな制作の段取りをしっかり考えていました。地の色を変えたい場合は、この回で一色塗っておき、制作の下準備を終わらせて。次回はじっくり文字やビジュアルを描けますね。

このプログラムではみんな特に、ラフやサイズ検討などにていねいに時間をかけていました。好きなお菓子だからこそ、納得のいくデザインにしたい様子。見応えある作品になりそうです。

教室のレトロコーナーがリニューアル。ライトや古いお菓子のパッケージなどが集まり、充実してきました。いろいろ参考になる!ラボのみんなの作品も、完成したらこちらで撮影することができますよ。

改めて、作り方の工程や技法を検討して制作スタート!完成まで何をどんな順番で作っていくかをよく考えて、下絵を描いていこう。このプログラムもペースはそれぞれですが、みんな集中して取り組むことができています。

レトロな色合いは、配色がカギ。例えば、ベースに赤や黄色などの明るい色を選んでも、ほんの少しの色味の違いでぐっとレトロさが出てくるが感じられるのも、この制作のおもしろさ。混色にこだわりをもつ子がたくさんいました。

リピートさせる幾何学模様にぴったりの技法、ステンシル。自分が描きたいデザインに上手に取り込んで、さっそくポンポンと色を置いていました。ギンガムチェック模様も自在に表現しています。

こちらの方は「あ〜ペンが滲んじゃった」と言いながらも、楽しそう。今回はレトロ調に近づけられるように、中間色のペンも多く揃えておきました。それぞれの感性で、実に様々な配色が展開していました。

文字やロゴマークも、手で描くのと刷るのとでは印象ががらっと変わります。でもほんの少しのズレが目立つので慎重に。こちらは一度「失敗した!」と言っていましたが...

くやしいので、再度支持体を作り直してリベンジしたそう。よく見ると、文字にいい感じのかすれが...思わぬ効果が出たらしく、今度の出来栄えにはうれしそうです。

こちらはガラリとパッケージをリデザイン!明るいブルーでさわやかなヨーグルト味を表現しています。自分でもびっくりする出来栄えに、うれしそうな声があちこちから聞こえてくる制作でした。

出た!箱の中ぶたに小さく描いた「あたり」。この回でも、食べてみようと開けたお菓子にあたりが入っていた人がいましたよ。「当たる人多すぎない?」という声。たしかに、ものすごい打率。

テトラパックのような、三角錐形パッケージ。「アポロ」だから、あの宇宙船・アポロ11号のデザインにしたらおもしろいかも?との発案。組み立ても楽しそうです。

パッケージの外形だけでなく、開封口のデザインも考え始める人が。「ミシン目加工で開けるのって、なんかいいですよね」とテストを重ねていました。すごい!

本物のお菓子を持参しているので、完成後は自分がデザインしたレトロなパッケージと、中のお菓子を組み合わせた撮影も楽しめました。でもこちらの方は「全部食べちゃった!」とのことで急遽、粘土でそっくりに再現。

作品の撮影にもこだわりが。教室内のどこを使ってもOKです。もちろん先に挙げた「レトロコーナー」も使用可!お店のように陳列したり、自分が買って食べている様子を撮影したり。気分もすっかりレトロ時代?

古びた紙箱の質感、商品名やラベルの罫線...どこから見ても、数十年前の古いお菓子に見える!レトロコーナーの古いものたちに、すっかり馴染んでいます。小さな作品を大事そうに撮影するそれぞれの様子に、制作の満足度が滲み出ていました。