この月のテーマは「人々」。土偶や古代彫刻、さらに日本の雛人形やロシアのマトリョーシカなど、古くから様々な人の形が作られてきました。それぞれの時代や文化を色濃く反映されていて、見れば見るほど深いものです。このプログラムでは、現代の中高生が考える人物像を形に表現していきます。
改めてみると身の回りの人たちにも、各種メディアで知る人たちにも、人それぞれ何かしらの特徴があります。感情があり、暮らしがあり、傾向や好み、個性があります。この制作ではそれぞれの人物像の表現を探りながら、現代の人間の存在そのものに注目して制作を膨らませていきます。
みんなが作りやすいように、大きさはだいたい実物の1/10くらいのミニチュアサイズ。1人、2人ではなく、できるだけたくさん作っていけるといいですね。さらにその人らしさが表れやすいポーズや特徴を捉えていけると、さまざまな特徴をもつ現代の人々が見えてきそうです。
制作のモデルにしたい人は、どんな人でしょうか?老若男女、国籍も問わず、どんな人でもOKです。家族や友達でも、実際には会ったことはないけれど知っているディスプレイの向こうの人でも、自分の想像の世界の人でも、誰でもOKですよ。
試しに書き出してもらうと「推しを作りたい!」とパッと飛びついた人もいました。「あの人でしょ。それからあの人も、それから…」推しだけで10名以上にもなるらしい。
しましま服が特徴の"ウォーリー"など、絵本やゲームなどのキャラクターを選んでいる人もいました。また人じゃないキャラクターでも「現代風の人に擬人化すればいけるかも?!」と想像を膨らませはじめた人も。おもしろい切り口ですね。
こどもからおじいちゃん・おばあちゃんまで「いろんな年代の人物像を作りたい」という人もいました。普段の制作ではあまりモデルとして選ばなかったタイプの人たちも、今回は幅広く含めて取り組める良い機会になりそうです。
「現代の人ってことは、自分もいいの?」という声あり。あ、その手もあったか!もちろんOK。群像の中に、自分も紛れさせるのはすごくおもしろい制作になりそうですね。
どんな人を作りたいかをだいたい書き出せたら、それぞれの身長や体格、特徴を想像してみましょう。「考える作業が楽しすぎる」と没頭しはじめる人もいて、静かに盛り上がっていました。まわりから「まだ描いてる!」とびっくりされるほど。
「他の人が作らなさそうなタイプを狙おう」「ポーズがおもしろい人を作ろう」「警察官をつくりたい」「修学旅行生を作ってみる」など、それぞれいろんなバリエーションで発想が飛び出していました。
ここから立体制作へ。いろんなポーズを取れる人体を作りたいので、人体の芯材にはワイヤーを用意。針金の扱いが「実はすごく苦手」という声もありましたが、ペンチなどの道具をうまく使って思い通りに進めるにはかなりコツがいる制作です。
まず3本のワイヤーを中央で撚り合わせて、胴体部分をしっかりと作ります。そこから手足のパーツを伸ばしていき、人体の大まかな骨組みを作っていきます。人体のプロポーションはほぼ共通しているので、ここはガイドを目安にして作っていきました。
ジャコメッティのような細い針金人形ができてきました。まだどんな人になるのかは見えませんが、おおよその身長はこの時点である程度決めることができます。
太さを出したい部分の肉付けと補強を兼ねて、アルミホイルを巻きつけていきます。胴体はもちろん、肩や腰回り、太ももなどの形をこの時点である程度固めておけると、この後の制作がスムーズです。
お、人らしさが出てきましたね!ミニチュアの制作は、不思議と愛着が湧きやすいもの。この時点で「なんかかわいい」と早くも思い入れが芽生えてきている声も。
はじめは扱いに手こずって「ちょっと助けてください…」という声もありましたが、数体作っていくうちにだんだんとコツがつかめてくる人が多かった様子。「上手くできた♪」そして「どんなポーズがいいかな」と次々作っていきました。
さらに上から粘土で全体を覆っていきます。この回は細部の作り込みよりも、大まかな人の形をつくることが目標。真っ白な状態ですが「早く作り込みがしたい!」とみんなの想像が膨らみ、期待度がどんどん高まっていました。
ラボのクラス中、人だらけ!いろんなポーズの作品が並び、今にも何かが起こりそうなワクワク感でいっぱいです。次回、続きの制作をお楽しみに!
あんな人、こんな人…みんなの制作を見ていると、やっぱり「人物」をテーマにした制作は、想像力を掻き立てられるテーマだなと改めて感じます。この回はディティールの作り込みをしていきます。どんな作品になっていくのか、それぞれのイマジネーションの広がりに期待大!
小さな作品なので、それぞれの人物の特徴を絞り込んでいきました。「ここだけは絶対に必要だ」というポイントをしっかりと作り込み、その他の部分については、見る人が「こんな人物なのかな?」と想像する余地を残すような、ちょっとユルさがあるくらいの表現もおもしろいものです。
さらに、その人物が「どんな場面にいるのか」「何をしているところなのか」をムクムクと想像しながら作ることもポイント。時計を見ている人、自撮りをしている人、スポーツをしている人など、それぞれの胴体や手足のバランスを微調整していきます。
いざ始めてみると、具体的に絞れば絞るほど、作り込むことがおもしろい様子。どうやらやみつきになるような楽しさがあるようです。前回から使っている粘土の扱いに慣れてきて、細部まで作り込むことができるようになり、作品のクオリティもどんどん上がっていきます。
中でも粘土の制作が得意な人は、どんな技を使ってるんだ?!というくらい、驚くほどのスピードで完成させていきました。粘土をちぎってはペタペタと付け足したり、凹凸をつけてバランスをとったり。す、すごい...絶妙すぎて、まるで魔法のよう。
ただし粘土制作は、時間の経過とともに難しくなる面も。教室でエアコンを使っていたこともあり、作品がみるみる乾燥する!意図しない部分にひび割れが生じてしまいます。初めは濡れタオルをかぶせながら制作していましたが、途中で「濡らした軍手をはめて作る技を発見」なんてことも。
どんな感じに見えるのか、みんなの作品を1体ずつ集合させてみたところ 「人々だ!」「意外といいかも」と盛り上がりました。 自分では作り込みが甘いと思っていたけど、並べてみると「割と大丈夫なんだな」という気づきもあり、集団ならではの見え方があることが確認できました。
他の人たちの作品も参考にしつつ、それぞれが複数の作品をつくっていくうちに、「ここを作り込めば、服らしさが出るんだな」「この作り方なら、複数の作品が作りやすい」など、コツを発見していった様子。テーブルの淵に座らせたこちらの作品、布の柔らかい感じまで表現されています。
粘土でどうしても表しにくい部分は、色の効果を使って表現することもできます。試しに色をつけてみると、作品の印象がまた大きく変わりました。「絵の具は得意!」という人もいれば、「粘土が楽しい」という人もいるので、それぞれ得意な方法で進めていくのがいいですね。
どうやらラボのみんなにとって、モデルが身につける「服装」は、特にこだわりが強い様子です。確かに、着ているものや身につけているものから、人柄や好みなど、その人の内面まで想像します。服装はその人を表す大事な要素です。
こちらは「ティッシュ配りの人」。帽子をかぶっていることから外にいることが想像できたり、カゴを持つ腕の角度も、すごく「わかる、わかる!」さらに、顔の角度が何とも絶妙です。モデルの周りの様子まで想像してしまいそう。
服の色などに迷っていたとしても、とりあえず皮膚に色をつけるだけで、一気に印象が変わり「わ、なまなましい!」「生きてる感じ!」そこから改めて作品を見て、どんな人物に仕上げていくか、詳しいイメージを広げていくのも良いですね。
小さい割に、何だかものすごく存在感のある作品ができています。立体作品ならではのおもしろさのある制作ですね。並べてみると既に、その人のオーラを感じるほどの作品も生まれていましたよ。次回もお楽しみに!
ここまでに、たくさんの人の形ができていました。ラックの上にいろんなポーズで寝転がり、ラボのみんなが仕上げてくれるのを待っているみたい。ここからはペイントでディティールを作り込んでいきます。細かな作業が好きな人や、絵が得意な人の力の発揮どころですね。
既に、粘土が完全に乾燥して固まっている状態。絵の具も塗りやすいし、ペンでもスイスイ描くことができます。どうしても凸凹がほしくなった部分には、まだここから一部付け足すこともできます。
はじめに下地の色をペイントする子が多くいました。たしかにここを丁寧にしておくと、上から細かい表現の描き込みがしやすいですね。大まかな雰囲気も出てきています。
極細ペンでの描き込みは、絵とは少し違う感触があって、新鮮な様子。みんなすごく集中して、自分の世界に没頭していました。想像している人物像が、どんどんリアルになっていく瞬間です。
目鼻口などのニュアンスまで、すごくこだわりのある制作をする人も。こちらの「ティッシュ配りのアルバイトをしている女子高生」の作品、こんな表情の人、確かにいますよね!顔を描いたら、ポーズの説得力が増して、作品全体の方向性が完全にフィットしました。
こちらは、ゆかた姿の女性でしょうか?お召し物の和柄や履き物、手に持った扇子まで、しっかりと想像して作られているのがよく伝わってきます。そしてこの表情!和装した時の感情まで伝わってくるようです。
左は、コンビニに行く人。パーカーを着て、ラフにポケットに手を入れて家の近所を歩く様子でしょうか。「ちょっとそこまで」という雰囲気がよく出ていますね。右の肩車をした親子も、「いる、いる!」と思わず納得してしまう姿です。
こちらは、お母さんと小さい子ども。なんだかスーパーなどで駄々をこねて転がりまわるこどものように見えてきた?! たまたま置いた時に、ふとストーリーを想像してしまう組み合わせもあるようです。
複数の人たちが作っていたのが、学生さんたちの像。自分たちと同世代の人物像は、やっぱり外せない様子。制服にも時代性がありますから、どこか今風な学生さんたちに感じられますね。
運動をしている人たちの様子は、走ったり、ラケットを持ったり、ジャンプしたり。大胆な体の動きを作るのがおもしろかったようです。勢いや臨場感のあるポーズが多くみられました。
警察官、サラリーマン、塾講師など、各種職業の人物像もできました。幅広く作っていましたが、やはりラボの中高生たちの身近にいる人たちが主だった印象です。何かしら思い入れを抱きやすいのでしょう。
これはレアキャラかもしれません、こちらはお仕事中の芸人さん。マイクスタンドもセットで作っています。足や腕の角度、表情などにも、すごくこだわりがありますね!どんなトークをしてるんだろう?と思わず想像してしまいます。
さらに、ユーチューバーや、インフルエンサーたちも登場。これらが自然に出てくるあたりはもう完全に、α世代の感覚ですよね。これらの作品が中高生の自由な発想の中から出てきたことが、スタッフにはすごく新鮮でした。
群像の中に、こっそりと「自分」も紛れ込ませるように作っていた人たちも。これも自然と出てくる発想のひとつですね。しかも雰囲気がそっくり、似てる!
プログラムの終盤になって、あともう少し時間がある…「もう1体増やそう!」と急遽、粘土造形から始めた人も。作り慣れたのか、ものすごく手早く仕上げていてびっくりしました。
最後に、それぞれ作った人物像に名前をつけてみることに。名前にもやっぱりどこか個性があるようで、自分の思い描く人物像にぴったりな名前を検討していました。さらに年齢や性格、誕生日、メールアドレスまで。架空の「個人情報」まで書き加えていました。
みんなの作品を集めて、束の間の鑑賞会。他の人の作品に「こんな人いる!」「年齢が意外」「おもしろい」など興味津々。現代っ子ならではの作品が並んでいました。できあがった群像作品は、来月のプログラムにも重要な登場人物として使われます。