ジュニアの新年度の始まりのテーマは「色」。私たちが見ている色の正体は、実は光の中にあります。このプログラムでは、光と色に注目した制作からスタート。まずは色を見るための箱づくりをしていきました。
中に込んだ色がいろんな方向に乱反射を起こして、思いがけない色の効果が生まれる不思議な箱。光にかざしてみると「おおおー!」「きれいだね」色が動く仕掛けも施してあり、これを使うとさまざまに移り変わる色のグラデーションが楽しめる道具です。
作りはシンプルで、容器の中に、光が反射する素材と色の元を入れたもの。なので工夫次第でそれぞれちがう効果を生むものが作れそう...大まかな構造を理解したら、さっそく制作スタート。
光を反射させるために中に入れる素材は、薄いアルミシートを使いました。これをどう入れ込むかで、できあがるグラデーションが変化します。「くしゃくしゃにする」「たくさん詰め込む」「おおきな形で埋める」いろんなアイデアが出てきました。
そしてカラーセロハンで、反射させる色の元を作ります。重ねる色、重ねない色、切り貼りする形によって、最後の色の見え方が変化していきます。こちらもそれぞれで自分なりに工夫している様子がありました。
大まかな部分ができたら「早く使ってみたい!」とさっそく組み立てをするこどもたち。できる前からちょこちょこと覗き見る子も。「うおー!」「いいねえ」「きれい!」
よし見てみようか!ライトボックスに集まって、光の上に置いて照らしてみると…どんな組み合わせでもそれぞれすごく美しく発色するので、こどもたちも「えっ?」と一瞬びっくりしていました。「すご!」「見て見て!」「こっちも!」しばらくウットリ観察してしまうほど。
「ここの色がきれいだ」「好きな色があった」「もうちょっと工夫すると変わるのかな」他にも懐中電灯と3色セロハンを使った光の三原色の再現や、ヨハネス・イッテンの色相環の紹介、さらに明度や彩度、補色の話など、色にまつわる話はたくさんありすぎて、紹介しきれないほどです。
ここからはカラーインクを使って、紙の上で色のグラデーションを作ります。こどもたちはあまり使い慣れないカラーインクですが、ぬらした紙の上にポタリと垂らすと...じわじわ広がり、混じり合う。その色の感じがすっごく気持ちがいいんです。
光とインクでは混色が違いますが、光の箱で見た、美しい色合いを再現できるかな?それぞれのお気に入りの光の色と似た形に画用紙を切り取り、制作の準備。ふつうはあまり思いつかないような形がまたおもしろく、「しずくみたい」「何の生き物?」
紙を湿らせて、インクをポトリと落としてみると...じわじわ広がり、混じり合う色の感じは、まさに光の箱の中で起きていることに似ている。「これ楽しい〜」「そっくりにできそう!」色を重ねること自体を楽しんでいました。水分やインクの量でも、全然発色がちがってきて研究しがいがありました。
こどもたちが目指す色は明度の高い色、低い色、彩度もバラバラです。自分で欲しい色をどう作るかの研究も兼ねたこの制作。暗い色を作るため「補色を混ぜてみよう」「乾いたらもう一度塗ろう」技法研究も楽しみながら。「黒みたいな色もできた」「紫色にしたい」では次にのせる色は?
なかなか思ったような色合いにならず「黄緑色にしたかったんだけど濃い緑色になった...」「難しい!」の声もあがりました。光のグラデーションを再現するために、ちょうど良い濃さ・広がりを模索します。「でもこれもきれい」「また実験してみる」
絶妙な、複雑な色の混じり合いを表現するには1回塗りでは無理な様子。少しずつ何度も色を重ねたり、大胆にしっかりインクを垂らしてみたり。小さな作品ながらも、そっくりにできたら達成感は大きかったようです。
この回は色について体験を深めていきます。はじめに、デザイナー・画家、そして美術教師としても知られるジョセフ・アルバース(1888~1976)を紹介。ドイツのバウハウスで学び、その後アメリカに渡りって戦後の重要な芸術家たちを育てました。
アルバースはたくさんの真四角の作品を残しました。いずれの作品も2色、または3色など複数の色面で構成されたもので、色彩のもつ新しい可能性を探求していました。ジュニアのみんなも、アルバースのような四角形の色の実験を体験するため、色パズルに挑戦。
あれ?「不思議!」何だか見え方がちがっているような...「こっちは強くてこっちは弱い」「こっちは明るく見えるけど、こっちは暗く見えるな」いろいろなパターンで、それぞれの見え方の違いを発見していきました。
こちらもすごくわかりやすかった例。同じ色であるはずの真ん中のオレンジ色が、まわりにある色に影響されて、明るく見えたり、暗く見えたりする。目って不思議。色って謎だらけだ!
こちらは同じ2色のグレーの枠の中に、赤と緑の四角形を置いてみました。するとどちらも同じ色のはずなのに、グレーが赤っぽく見えたり、緑っぽく見えたりする。隣り合う色の影響で、無彩色が色づいて見えるという、色のマジックのひとつです。
今回の制作では「花」を描きます!数種類の花が登場すると、こどもたちは中をのぞき込んだり、匂いをかいだりしながら、五感で花を感じていました。
まずは花をていねいに分解してみよう!おそるおそる、花びら、おしべ、めしべなどのパーツに分けたら、DICのカラーチップの中から、「ここはこの色に近い」「もっと白いんだよな」などと花を観察していきました。たくさんの色見本があると、ほんの少しの色の違いも認識しやすくなりますね。
花の色は、改めて探してみると様々であることがわかりました。色によって印象をつくることができるのは、絵も同じ。「こんな絵にしたい」とメインで使いたい色を自分で選び、さらに他の色との組み合わせによって、作品全体の印象をコントロールすることができます。
今回は純粋に色に注目するため、顔料を使用。顔料は絵の具やクレヨン、色えんぴつなど、様々な画材の色の素になる材料です。それを今回は他の材料とは混ぜずに、粉末のままぜいたくに使って制作していきます。色のもつ力を存分に味わっていこう!
筆やヘラを使わずに、手で直接顔料を混色していきます。触感で混色具合をコントロールしやすく、また粉末ならではの独特の色の広がり方・混ざり方が気持ちいい!どの子も何だか楽しい様子。
「青をほんの少し」「赤みが強すぎたみたい」「もう一回黄色を重ねるとできそう…」画材の色の素である顔料ですから、ものすごく発色が良く、少しの加減がダイレクトに響きます。また指先を使うことで色ごとの配合が直感的にわかりやすくなり、何度も混色しては自分の出したい理想の色に近づけようとしていました。
アメリカを代表する女性画家ジョージア・オキーフは、画面いっぱいに花を配置し、見る人が思わず引き込まれるような作品を描きました。画集を見せるなり子どもたちから「アリの目線だ!」という声も。ダイナミックで鮮やかな色彩は、子どもたちにとってもすごく刺激的。
オキーフに倣い、画面にどう花を配置するか”構図”を考えてみることに。おそらくみんなはじめての経験で「花のどこを描くかって…?」などと初めは少し戸惑いのあった子もいましたが、試しに切り抜いた花を紙の上で動かしながら「あ、ここに置くとかっこいいかも」など感覚で掴み取っていきました。
花の描き方に決まりはありません。自分が描きたいものを「切り取る」「部分的に描く」「花びら1枚だけ描く!」などなど、こどもたちから大胆な構図がたくさん登場しました。これは...予想を上回るおもしろさ!次回の制作が楽しみです。
この回は大きな紙に花を描きます。前回、自分で検討した花の絵の構図を改めて見てみました。1週間経って改めて見直してみると、見え方の印象が少し違うこともあります。自分の描きたい感じを出せそうかな?大きな画面に描くとどんな絵になるのか、ワクワクしながら制作をスタート!
はじめに、線で描く絵と、色の面で描く絵の違いについて、少しだけレクチャー。家でイラストなどを描くのが好きな子ほど、線を使った表現が多い傾向があります。でも今回の画材はパステルなので、どちらかというと色のかたまりを面で意識してみると、スムーズに進めやすくなりますよ。
よーし。じゃあ画面いっぱいに、メインで使いたい色を塗り広げてみよう!前回、様々な混色を試していたこともあり、色作りにはそれほど抵抗がなく、むしろ画面が大きくなった分、顔料を大胆にぜいたくに使う子が多い印象です。色にまみれるほど楽しんでる子もいました。
全体に手を入れていくと、だんだん色の三原色の顔料だけでは、花と同じ色にならない...どうしても表現できない色が出てきました。混色をすればするほど色が濁り、明度が沈んでいってしまうからです。
そこで色数の多い固形のパステルも併用しながら、制作を進めることにしました。ただし、カレパステルは硬いので、金やすりで削りながら粉末にして絵の上に乗せていくことに。 たっぷりふんわり乗せると、明るく鮮やかな色も効果的に使うことができます。
ていねいに色作りを進めていくと、絵の中の花が、本物の花の色の強さに近付いてくることが実感できた様子。集中すればするほど、大きな画面に描いた花の絵の世界に、すっぽりと入り込むような感覚になります。「きれい」「いい感じ!」
「色の調和ってなんだろう?」の問いかけに、「なんかいい感じってことでしょ?」そうそう、子どもたちも感覚的に知っている"ハーモニー"について説明するため、色相環を紹介。反対色である補色、やトライアド、スプリットコンプリメンタリーなど、身近なゲームの配色を簡単に紹介すると、「確かに!」「なるほど」
本物らしさを出すために、もうひと工夫。白い花びらを描くのに使った色は黄色と青。その2色で描いた上に、白の顔料を加えて、最終的には「白っぽい花びら」に見えるようにしたそうです。「花びらが立体的に見える!」
こちらは「花びらの形をはっきり見せたい」とのことで、重なり部分の影に青いパステルを追加していました。一気にパワーが高まり、にぎやかなガーベラの雰囲気が出てきました。
こちらの子はモチーフと絵を見比べながら、とてもていねいに色の調整をしています。花びらのやわらかくふんわりした感じが出てきていますね!ひとりひとりこだわりたい部分はどこなのかによって、そのアプローチにもちがいが表れます。
さて。絵画の仕上げ段階になって「背景をどうしたらいいか」で悩むこと、みんなもよくある?参考までにフランスの画家、ルドンの花を紹介。描いた花に合わせて、背景色を様々に調整している...スゴ技!つい花に注目しがちですが、巧みな背景色によって私たちは花を「見せられている」んですね。
背景によって花がきれいに見える、浮かび上がって見える、逆に沈んで見える...合わせる色によって印象がガラリと変わることがわかりました。前回制作した構図カードを使って、100色の色紙の上で背景色を検討。「これはどうかな?」とまわりの子にも相談しつつ、色の組み合わせを楽しみました。
おおよその背景色が決まったら、花の周辺にも顔料やパステルの粉を置いていきました。絵の具とはちがい、紙の上で混色するので、思い通りの色になるまで粉を重ねるのがなかなか大変...その甲斐もあり、背景色が入ることでぐんと花が引き立ち始めた子が多数いました。
色の粉は、混色が自由自在にコントロールしやすい反面、全体の印象がふんわりとぼやけた印象になるという特性もあります。花びら同士の重なりや、花と背景の間をくっきりさせたい場合には、それぞれに合うステンシルのような型を使って仕上げを工夫していきました。
硬いパステルの角を上手に使って、縁をくっきりと処理する子も。ここまで描きながらモヤモヤと気になっていた部分がはっきりしてきて、「線で描かないってこういうことか」「自分でもできた!」など、作品も気持ちもスッキリした様子。ジュニアのみんなの力作が完成しました。