ドイツの芸術家、ヨーゼフ・ボイス(1921~1986)を紹介。第二次世界大戦で負傷し、戦後ドイツの混乱を生き抜き、世界に新しい芸術の形を提示したアーティスト。フェルトや脂肪を使った作品を作ったり、コヨーテと3日間同じ部屋にいるなど、不思議な体験型の作品を発表していました。
さらにボイスは芸術が社会を変える力になると考え、「社会彫刻」という言葉を使い、社会そのものをアートのように作り変えることを目指しました。絵画や彫刻という形ではなく、それらのさまざまな要素も全て「芸術によって社会を彫刻する」と主張し「誰でも自らの創造性によって未来に向けて社会を彫刻できる、またしなければならない」と呼びかけました。
私たちが生きる現代の日本ももちろん、ボイスのいう「社会彫刻」として捉えることができます。このプログラムでラボのみんなが触れていくのは、たくさんの建築廃材。建物をたてるには多くの資源が消費されると同時に、経済が動き、人々の知恵や労力、日々の感情も蓄積されています。作ることにも壊すことにも、人々の大きな決断があったことでしょう。
このプログラムのために、いろんな年代に建てられた住宅の解体により出てきたスクラップ素材を、たくさんの方たちから提供していただきました。一番古いもので60年くらい前には使われていた家のものということですから…100年近く前のものも含まれているかもしれません。その時点で、もはやただの工作材料ではない!
たまたま集まったのが住宅からの木廃材というのもあり、みんなで作るのは「小屋」なんてどうでしょう?と提案すると「いいね!」「楽しそう」「えーどんなのがいいかな?」とさっそく頭の中でぐるぐる考え始める子たちが。小屋を作っているアーティストの作品なども参考にしながら、ワクワクが止まりません。
集められた素材をみんなで床に並べて眺めてみたら、「かわいい」「部屋の床をこれにしたい」という声もあがりました。生の素材に触れながらそれと共に過ごした人たちの時間を想像したり、複数の建物がひとつの小屋に混ざり合っていくおもしろさもありそうです。
解体現場では「ひとつずつ丁寧にきれいに分別」なんて作業はしていません。釘がそのまま残っている木材もたくさんありました。「こわ!」でもここに集まった古材も、はじめに建材として選ばれた時はフレッシュな新品だったはず…普段トルネードのみんなが触れる真新しい素材とはちがい、長い期間、雨風や日光に育まれてきた本物の質感です。
小屋なんて作ったことない…だけど作ってみたい!それぞれの知識と技術を総動員した制作です。「木廃材の下準備」と「小屋の形を考える」という役割に分かれて制作スタート。下準備チームは全ての木材のチェックから。やすりをかけたり、拭き取ったりしながら汚れを落とし、ひとつひとつの木材の状態を確認していきました。
釘があって危険なものは、釘抜きの作業。ところが古い釘は、錆びてまったく滑りません。さらに頭の部分が木材に食い込んでおり、ひっぱり出すことからむずかしい。裏から金槌で叩いたり、ペンチでつまんだり、道具を駆使して工夫していました。1本抜けるだけですごい達成感が!
小屋の設計担当になったチームは、「まったくわからん」「…どうしよ?」からのスタート。まず骨に使えそうな角材系の廃材を「これいいじゃん!」と探し当て、実際に仮組みしながら検討をはじめました。「作るからには、人が小屋に実際入れるようにしたいよね」という意見はみなさん一致。それって、なかなか大きいですよね...
小屋の形のアイデアは最初「ただの小屋じゃつまらない」「五角形とかはどうかな?」などと柔軟に様々な案が出ていました。が、最終的には制作時間や安全面も考え、ベーシックな立方体を採用された様子。その分外装・内装にはこだわりたい!とのこと。
廃材の下準備と、設計。途中で役割交代しながらいろんな仕事を体験していました。とは言っても、どちらもかなりの作業量。いきなり小屋を作るなんて戸惑いもあった様子ですが、それでも自分で何をしたら良いか考えながらどんどん手が動いていました。さすがのラボです!
これまで何度か木工制作を経験しており、電動ドライバーまで使える子がちらほらと。最初は「えーと、どうだったっけな?」なんて感じでしたが、使い始めるとすぐにコツを思い出した様子。さらに初めて使う人に教えながらさくさく作業を進めていました。
久しぶりの共同制作で「楽しい」「こういうのやりたかった!」という声もありました。部活の後に、疲れてクタクタの状態で来た子が、終了時には逆にルンルンで帰る、など謎の現象も起きているくらい楽しい様子。これだけ大きいと、制作の手応えもすごいですね。
土曜日クラスで見事に小屋本体の骨組みが出来上がり、日曜日クラスでは屋根の作り方を検討していきました。たったの2日でそれっぽい空間ができてきた!次回は外装や内装の検討に入れそうで、続きが楽しみですね。
せっかく小屋を作っているので、どんな用途で使うか少し相談してみました。ジュニアで並行して制作している「300年」の社会彫刻の記録を展示したり、自分たちの制作過程も紹介したい。過去の建築廃材で作った小屋の中に、キッズのみんなが考えた未来都市像を展示するのもおもしろいかも?! いろんな使い方ができそうです。
さらにこの回は、トルネードの卒業生が遊びにきてくれました。「面白そうなことしてますね」という彼の本職は、なんと建具作り!ラボのみんなで作った小屋の骨組みのチェックや、補強方法もアドバイスしてくれて、安全性が必要な部分について的確にサポートしてくれました。とても頼もしい!
丈夫な骨組みができたところで、次は小屋の外装について相談を進めていきました。今ある廃材は、長さも幅もバラバラ…どう外壁を作るか、手がかりが何もない状態。そこで、実物を組み合わせてパズルのようにぴったりにできるだろうか?実際に置いて検討してみることに。
あちこちから集まった廃材なので、ちょうどいい長さのものは当然ありません。が、同じ幅同士のものを合わせることで、つぎはぎしながら貼り合わせればどうにかできそうだという意見になりました。実際にやってみないけどわからないけど、何かできそうなので「進めてみよう!」
あちこちから「窓は絶対作りたい」という声が出ていました。これについても廃材を並べながら、どこにつけるか、どんなサイズになりそうかを考えていきました。たまたま廃材の隙間ができて「ここならちょうどいいかも」と採用してみることに。素材ありきの制作ですが、それぞれ知恵を絞って進めていました。
どこにどの材料を使うかを考えていたのは主に高校生たち。その案に沿って、中学生たちがのこぎりでカットしていきました。女の子が多くて体力的にきついかな?とも思いましたが、いろいろな工作経験がある人が多く、木材を切るのがすごくうまい!協力しながらさくさく作業が進んでいて、しかも楽しそう。
小屋の床も大事な部分。「とにかく板を敷き詰めよう」「小さな子たちが転ばないようにしたい」とのことで、廃材の中でも新しめで丈夫そうな素材を集めていきました。ここでもまた建具のプロの卒業生が大活躍。みんなに的確なアドバイスをしてくれて、一気に貼り込んでいきました。すごいぞ!
骨組みに直接廃材の棒を貼るのはちょっと心配...とのことで、下地に薄い板材を小屋全体に貼っていきました。確かに、これがあると骨組みの強度も上がり、上から廃材も貼りやすくなりそう。
窓を作る部分にも、ちゃんと穴が開いていました。このくらいだと、小さな子にちょうど良さそうな高さです。「かわいい」とにんまり。
みんな電動ドリルを片手に、下部から順に壁面に貼っていきました。1枚ずつ貼ってみると、裏にねじが突き抜けたり、寸法が合わなかったりの誤差も発生しましたが、その都度臨機応変に修正しながら進めていきました。
「ごめん、まちがってたわ!」「いいよ、こう直そう」と笑いながら、なんだかすごく楽しそう。イメージしていた壁面が実際にできてくると、「かわいい!」「いいじゃん」という声がちらほら。満足げです。
壁面ができてきて、窓の高さも決まり、入口についてのデザイン検討もはじまりました。窓も低めなので、大人は屈まないと入れないくらいの高さが良い?ということで、「小人(こども)のおうち」という設定になりました。トルネードっぽい小屋で、いいですね!
土日のクラスを通して、今週もやりきった感満点。この回は特に小屋らしさが出てきて、成果が目に見えたこともあり喜びの声がたくさん上がりました。続きはまた次回となりますが、早くもキッズやジュニアの子どもたちが興奮しそうな存在感があります。
小屋の外観が見えてきて、他のコースの子どもたちからも「部屋ができてる!」「住めそう」など注目を集めていました。ここから完成に向けて、まだまだいろんな仕事が残っています。
土日に分かれているラボのみんなの意見をまとめ、ひとまず土曜クラスは「外壁仕上げ、什器担当」、日曜クラスは「屋根、内壁担当」と大まかな役割を分担。完成した小屋の使い方についても確認しながら、目的を共有していきました。
「小屋の中には何が必要?」「どんな仕上げにしよう?」など全員からアイデアを募り、制作内容についても詳しく分担。それぞれの制作に使う材料は、ねじなどを除くと基本的に"廃材"のみです。そこにある部材から何ができるか考えていきました。
この小屋にある窓は、こだわりたい箇所の需要なポイント。廃材の中に、元々窓枠に使われていた部材を発見!「もっと窓らしくしたい」という希望から、他の素材も組み合わせつつ出窓風に仕上げていきました。
まだできていない壁が一面、残っていました。ここは3名の高校生がチームを組んで、急ピッチで仕上げの作業!前回経験していたこともあり少しずつ作業慣れしてきており「裏からネジ突き抜けたよ!」というアクシデントにも自分たちで臨機応変に対応。
いろいろな展示に対応するため、小屋の中に「デスク」を設計。廃材を使って、中学生たちが制作していきました。基本的な机の構造を自分たちで調べて、小屋に合うサイズを検討し、ペアにして使うイスとの高さや幅も考慮して...部材のカットや組み立てまで計画通りに完成させていました。すごい!
廃材の中にあった、古い木製の椅子。「これはバラさずにこのまま使いたい」ということで、まずは水拭きして綺麗な状態にしていきました。さらに古い塗装を紙やすりで丹念にはがし、座面はペンキの再塗装を施してリフレッシュ!古道具店で売れそうな素敵な仕上がり。3名とも思い入れたっぷりでした。
土曜のみんなは、この時点で手応えがたっぷり。とはいえまだ屋根もないし「日曜クラスがんばれ!」という声とともに終了。その一方で仕上げを託された翌日の日曜クラスでは、前日までにできてると予想していた「屋根がまだないの?!」なんて声もありつつ、とにかくやらねば!という勢いでスタート。
「どうしてもあの廃材を活かしたい!」とひとりの高校生から提案があがりました。どうやら前週に「この形、使えるかも」とすごく気になる変わった形の廃材があったとのこと。「まだあるかな?」と廃材の山から探し出し、内装の一部として使ってみることに。
斜めのひさしをつけたいようですが、安全に取り付けるにはかなり複雑になりそう...悩んでいたところ、OBの「蝶番をつかったら?!」という一声で、無事実現しました。しかも、たまたま1回目の時に廃材から取り外した蝶番があったから実現できたアイディアです。偶然ってすごい。
最後の大物きなパーツとなる屋根。床で制作したものを、小屋の上に一気に乗せる作戦を考えていました。男子がペアになってパズルのように貼り合わせの作業を進め、手が空いた他メンバーにも協力してもらいながら各所をビス留め。しっかり時間内に完成!お見事。
「三角の入口にする」というアイデアを出した年長者を中心に、数名がチームを組んで制作。木材を斜めに切るのも慣れたもの…と思ったら、やはりたまに長さを間違えてリーダーに叱られるなんて場面も。しっかり仕上げて、さらに入口の仕上げ装飾もしていました。
実は、作業量が一番多かったのは内装を担当したグループ。小屋の中に4名がぎゅうぎゅうになって、とにかく隅から隅までホワイトにペイントしていました。長時間集中することが得意なメンバーが揃っていたからできたのかも?白く塗った内壁は、ライトを当てるととても映えるはず。
どうしてもつけたかったサイドボード。内装の塗装が終わったところで「絶対にやる!」と、作業にかかるなり超スピードで設置していました。みんなこんなに大工作業が早かったっけ?と思うほど。鍛えられましたね!
小屋の出来栄えに「良い、良い!」「すごい」「かわいい!」と大絶賛。最後まで中の壁塗り作業等をしていたメンバーも、外に出てきてその全貌を見てびっくり!いろんな時代の建物の素材がミックスされて、とてもユニークな仕上がりに。それぞれの思い入れや達成感が大きい様子でした。