ゴールデンルールズ(吉本興業)のありちゃんは、お笑いと並行して本格的に画家としての活動を展開している異色のアーティスト。画面からあふれるほどの鮮やかでエネルギッシュな作風や、ユーモアとアートが絶妙に作用しあう表現が持ち味です。天性の素直さとジャンルを横断した豊かな表現に、子どもから大人までたくさんの方が魅了されています。
まずはありちゃんの作品についてお話を聞きました。その発想の源を聞くと、はじめは「なんだか晴れない気分」だった時期に、紙を黒く塗りつぶしては捨てることを繰り返していたとのこと。そこからだんだん描くことが楽しくなってきて、色がカラフルになりにぎやかな作品になっていったそうです。どこかお笑い的な発想が入っていて、すごく個性的!
そして今でも続けているのが、制作前のウォームアップ。何を描こうかと考えている自分を「とにかく裏切る!」真ん中から描こうとしている自分がいたら隅っこからはじめたり、直線を描こうとしたらクネクネした線を描いてみたり、画材は大事にしなくちゃと意識していたら「ペン先が潰れるくらい、思いっきりギューって押し付けてみる!とかね!」
誰にでも自分のクセがあって、それが見えない膜のように覆い被さっている。それを常に破っていくありちゃんのウォームアップ。「いつもの僕ならこうするけど...今日はこっちだ!」と自分を裏切り続けるありちゃんのトークと描画に、子どもたちは大笑い。中でも中高生の参加者たちは「なるほど、なるほど…」としきりにうなずいていました。
今度は床の真ん中に広げられた真っ白な大きな紙で「わー、はじめに何を描こうかなって、緊張するよね!」何を描いてくれるんだろう?と期待するこどもたちの目の前で、「何かを描こうとしている自分を裏切って...」なんと突然ゴロンと寝転がり「描かない時間があってもいい!」ええー、描かずに寝ちゃうの?! とみんなびっくり大笑い。
ペンを放り出して紙を汚してみたり、ゴロゴロ寝ながらとりあえず手の届く範囲だけで描いてみたり...とにかく自由!「描いたらすぐにやめて帰ってもいいし...」いや、待って待って!次から次へと出てくる意外な発想が、こどもたちはおもしろくてたまりません。「こんなふうに色々してるうちに、お、これちょっといいかも?! みたいなものが見つかるんだよね」
あまりに自由奔放な振る舞いに、小さな子どもたちはうずうずしながら見ていました。「僕も早く描きたいよ!」では、みんなもWARM UP開始!ペンを渡すとすぐに紙の上に寝転がり、ぐるぐるドローイングが始まりました。真ん中でありちゃんのように寝転がり大きく体を動かす子もいれば、隅っこの方でぽつりぽつりと描き始める子も。
あっという間に大きな紙が黒い線だらけになったかと思ったら、今度は「色も使ってみよう!」絵の具、ペン、クレヨン、色えんぴつ…トルネードにある豊富な画材を自由に使っていきました。ポイントは「自分を裏切ること」。小さな子も「よし、裏切った!」とつぶやきながら描くのが楽しそう。
「絵の具をしたい」「ローラーでころころしたい!」それぞれ自由な活動で、みんなすごく積極的。思いがけずきれいな色が出てきて「見て見て!」「こっちもすごいよ!」他の人の描いたところに描いちゃいけない...?いえいえ、今日はそんな気持ちも裏切って!みんなの線や色がどんどん重なっていきました。
こどもたちに勢いに混ざってありちゃんも「いろんなペンでいっぺんに描くとどうなるのかなあ?」と言いながら、両手いっぱいに描画材を握って「よし、やってみよう!」いつも描いてるのとはちがう、試したことない形を描いて「おもしろい!」他の人の色や線と重なっていくのも、なんだか新鮮!
あちこちで「初めてのこと」が起きていました。普段は混ぜないような絵の具も一緒に入れて、パレットの中でぐるぐるぐる…刷毛でたっぷり絵の具を塗り、ローラーを転がしぐるぐるぐる...色を何度も重ねて、塗って広げてぐるぐるぐる...とにかく動きが止まらない!
さらに筆も使わず手で塗り広げたり、ドキドキしながら足で踏んでみたり。「きもちわる〜い」「ツルツルすべる!」絵の具の上で飛んですべって、踊りはじめるこどもたち。いつもだったら汚れが気になるところですが、それも今日は裏切って「気にしない!」
パレットを使わず、チューブから紙に直接絵の具をギューッ。「色じゃなくて、黒だ!」「黒で塗りつぶせ!」と言いながら、画面の上に黒が広がったかと思ったら「いや、赤だ!」「黄色だ!」と止まらない。さらに「上から紙を重ねるぞ!」「テープで線を描くぞ!」
絵の具をつけた両手を見せてありちゃんに近づき、「塗ってもいい?」とニヤリ。まさかの「いいよいいよ、塗って塗って!」の返事を聞いて、ありちゃんの背中や足に絵の具をペタペタ、ローラーでコロコロ!「この服、もっと好きになったよ!」というありちゃんに懐の大きさを感じました...
絵の具まみれになって大胆な活動をする子たちもいれば、静かに自分のペースで独自の制作する子も。中高生たちはありちゃんや小さい子たちの規格外れの自由さに刺激され「見習いたい!」と興味津々の様子でした。15人で描いた画面はもう隙間もないくらいに色や線で埋め尽くされ、十分なウォームアップができた様子。