2024.12 ふぉーむず

ふぉーむず

止まっているのに、動きがあり、
具体的なのに、空想的でもある。

そんなふしぎな
「かたち」に注目するプログラム。

はじめに、柔らかな丸みを帯びた
ジャン・アルプの作品をご紹介。
偶然から生まれた形が
詩的な感覚を呼び起こし、
わくわく・ドキドキの体験を
楽しんでいきました。

プロセス

  • アルプの作品を紹介

    フランスの画家、彫刻家ジャン・アルプの現実と抽象が融合した彫刻作品を紹介。こどもたちに「何にみえるかな?」「どんな感情を表現してるのかな?」と問いかけながら、沢山の作品を見て楽しみました。日本ではそれほど知られていませんが、ヨーロッパには大きなアルプ美術館もあるんですよ。

  • どんな時代のどんな作家?

    フランスとドイツの境に生まれたアルプには、実は「ジャン・アルプ」「ハンス・アルプ」と名前がふたつあります。二つの大きな世界大戦を経験し、現代の様々なアートムーブメントが起きた激動の時代に生きた人。ダダイズムやシュールレアリスムなどの運動にも参加していました。

  • なにを感じる?

    アルプの作品はどこか軽やかで、ユーモアを感じられるものが多くあります。「口を大きく開けた人に見える」「"good"のサインみたい」「赤ちゃん」「走ってる人?」「なんか...だるそう!」ひとつの作品を見ても、それぞれいろんな見方ができるのもおもしろい。この回はアルプのような作品づくりに挑戦していきます。

  • え、アルプの作品?!

    「こちらを見てください」と登場した作品に、一瞬「アルプの作品?!」「本物?!」とどよめきが。いえいえ、トルネードで作った実験作品です。「作れるの?」「削ったの?」「粘土?」いろんな声が上がりましたが、実は石膏をゴム風船に入れて固めたことを伝えると「作ってみたい!」と興味津々です。

  • 石膏について知ろう

    真っ白い粉末状態の石膏は、水と混ぜて攪拌することで化学反応が起こり、急激に硬化していきます。水と粉のバランスや、混ぜるタイミングが違うと硬化反応がうまくいかないこともあります。溶いた石膏をゴム風船に入れる際にも、噴射・爆発に要注意!みんな真剣ですが、どこかワクワクしながら話を聞いていました。

  • 作ってみよう!

    二人一組になって制作開始。必要なものを用意する、水を測る、粉を入れる、ボトルに移し替える、ゴム風船に流し込む...全て気が抜けないプロセスばかりで、それぞれ自分たちの作業に集中していました。手早く正確に行う必要があり、ひとりでは大変な工程もあったため、手が足りない部分をサポートしあいながらの制作です。

  • 口を結べたらひと段落

    溶いた石膏をペットボトルに移し、さらにゴム風船の中に流し込む工程が一番の山場。吹き出したり、滑って手を離したりしないように、それぞれの仕事にみんな一生懸命でした。そして無事に風船の口を結べたら...やっとひと段落!ホッとした表情で「できました!」

  • どんな形になるかな?

    ゴム風船に入れた後、硬化が始まるまでの数分間は、どんな形にするかしばし思考の時間です。くるくる回して撹拌を続けながら「ぷっくりした形がいいな」「凸凹の形にできないかな?」「なんか変てこりんな形がいいんだけど...」など、アルプの作品を参考に見たり、教室中を見回して、面白い凹みができそうなアイテムを探している人もいました。

  • つぶす、へこませる

    硬化が始まりそうな感触が出てきたら、そこから一気に「フリーズ!」しばらく動かさないようにして固まるのを待ちます。手でつぶしたり、つまんでみたり、色々なものの形を押し付けてみたり。押し込むと逆にふくらむところも出てくるから、最終的にどんな形ができるかわかりません。

  • 風船から出ておいで!

    完全に固まったら「そーっと、そーーっと...」傷つけないように風船にハサミを入れて、中身を取り出します。ゴムの反動で一気にめくれていくこともあるので、みんなドキドキしながら誕生の瞬間を楽しみました。風船の中に空気が多めに入っている子は、石膏の薄い壁がクシャっとつぶれて形が変わることも。

  • 生まれた!

    「うちの子!」「おれの子!」生まれたての作品はまだじんわり暖かく、まるで生き物のような触り心地。自然と愛着が生まれ、なでたり頬ずりしたり、思わず愛でたくなる子が大多数。予定通りの形にできるかどうかより、どんな形になっていても「私の子はかわいい!」そうそう、パパやママの気持ちと同じです。

  • 鑑賞しよう

    冒頭のアルプの作品鑑賞では、見る人それぞれが自由に感情移入できることが抽象彫刻のおもしろさでもありました。そこで自分たちが作った作品も、他の人から見るとどんな印象を持つのか?を試してみることに。作品を1点1点鑑賞しながら、自分が感じる言葉に近い"感情カード"を置いていきました。

  • 感じ方はいろいろだ

    「おいしい」「まんぞく」「たのしい」などの言葉が多く集まる作品もあれば、「かなしい」「こわい」などの言葉が混ざる作品も。見る人の受け取り方は様々であることがわかり、「なるほど」「たしかに!」他者からの目線を知ることで、作品の見方はひとつではないことを体験していきました。

さくひん

ふぉーむず②

おうちで役割を終えた
不要品をみんなで持ち寄り、
真っ白くペイントしてみると
たくさんの美しい「かたち」が
見えてきました。
廃材を作品に変える
ジャンクアートに挑戦です。

何気なく過ごす日常の中で、
私たちは魅力的な「かたち」に
囲まれていることに気づきました。

積み上げたり、組み合わせたり。
からだ全体を使って、
「かたち」に潜むおもしろさを
体験していきました。

プロセス

  • いろんな形に注目

    前回、石膏を風船に流し込んでできた形は、ゴムや自分の手の力でほぼ偶然にできた不定形。今回からは、自分でどんな形にしたいかを考えながら作る制作がはじまります。日常で使ういろいろなものを改めて見直してみると、箱形や筒など、シンプルな幾何学形態に近づけられているものが多くあります。

  • 形とあそぼう

    そして教室の真ん中にドドっと登場した立体物にみんな「わー!」と驚きの声。よく見ると、四角い箱や円筒、平たい板状のものから斜めのブロックまで、大小様々な形がありました。どこにでもあるよく見かけるような形ばかりですが、これだけたくさんあると積み木みたいで何だか新鮮。

  • ゲームしよう!

    制作前のウォームアップとして、まずはチームに分かれて、高く積み上げるゲームをしてみました。制限時間は5分。床から積み上げること、一度に取りに行ける個数制限などのルールも「OK、OK!」「これは"楽しい"しかないじゃん!」「ペナルティ、やばいな」「早く始めよう!」とのことで、はいスタート!

  • 積み上げゲームで大盛り上がり

    大きな箱を急いでかき集める子、バランスを見ながら抑える子。どのチームも自分たちの身長はすぐに超えて、途中でグラグラして倒れたり、手が離せなくなったりしながらの白熱の5分間。ちなみにチーム分けは学年ではなく、背比べで不公平がないよう配慮しています。「早く!」「うああ〜!!」

  • 優勝はなんと2m越え

    全チームがはじめの土台に大きな直方体をゲット。それ以降はチームによって作戦が違っておもしろい。形を吟味して上に上にまっすぐ積むチーム、脇にも積んで固めながら堅実に進めるチーム、なんか斜めだなーと思っていたら計測前の瞬間にガラガラガラ…と倒壊したチームなど、大盛り上がり。

  • 「高い」以外はどんな感じ?

    改めて、各チームが作った形を見直してみると、ビルや塔のような形だけど、それぞれ少しずつ違いがありました。「やんちゃな感じ」「硬そう」。さらにいろいろな形容詞を紹介すると「あ、"ほそい"のはあるね」「"あぶなっかしい"だ!」など言葉と形のつながりを見つけて、形の印象を具体化していきました。

  • 高いだけではない「塔」

    さらにアーティストたちが様々な「塔」の作品を作っていることも紹介していきました。日本国内の作例では大阪にある万博記念公園の『太陽の塔』や、水戸芸術館の『無限柱』などは各地のランドマークになっており、こどもたちからも「知ってる!」の声。同じ「塔」でも発想や着目点が異なることを見ていきました。

  • 白く塗ろう

    今回のプログラムでは、子どもたちに家にある不要品を集めて持参してもらいました。多様な品々が集まりましたが、「○○の箱」や「○○のおもちゃ」など、その用途に意識が向きがちです。これらを作品づくりの材料として純粋に形に注目できるよう、持参された全ての物を真っ白に塗ることにしました。

  • 「形」に見えてきた

    山ほどのジャンク品が集まりましたが、白く塗ってみるとあら不思議。元の物の質感や色、ラベルなどの日用品としての気配が消え、無味乾燥な幾何学形態として見ることができるようになりました。トルネードで集めた不要品も合わせて、クラス全体で共有して使う素材としました。

  • 早く作りたい!

    次回、いろんな形を組み合わせて作品をつくっていきます。先に試した「塔」の作品でももちろん良いですが、持ち寄ったジャンク品の形を見ていると...他にもいろんな作品が形作られていきそうです。丸み、面、線、大小のサイズ感や太さ、角度や均衡など、多様な試みができそうで、続きを楽しみにしながら終了しました。

ふぉーむず③

身の回りのさまざまな「かたち」の
組み合わせから生まれる
抽象形態が持つ美しさを
じっくりと体験していきました。

山のように積まれた
白いジャンク品の中から
ひとつ、ふたつと選んでつけていくと…
「何かいい感じ!」
「かっこいい!」
見たこともない形が生まれ
こどもたちから喜びの声が上がりました。

詩的な響きに耳を澄ますように、
たっぷりと抽象造形の世界を
楽しみました。

プロセス

  • 抽象造形に挑戦

    ものの形をそっくりにしたりわかりやすく表す「具象」ではなく、何の形かはわからないけれど、いろいろな感情やイメージが伝わってくる、抽象彫刻。「抽象」と聞くとちょっとむずかしい気もするけど...ブランクーシやジャン・アルプ、サイ・トゥオンブリーなどのアーティストの作品もステキなものがいっぱい。

  • これはどんな感じかな?

    例えば、生き物や日用品につけられた名前(名詞)ではなく、状態や動き、印象を表す言葉(形容詞)を考えながら見ていくと、いろんな言葉が湧き上がってくることも。それぞれの感じ方は様々なので、正解がないこともおもしろい!形を使って、目にはみえないものを表現することに挑戦してみます。

  • 組み合わせてできるもの

    初めから「○○を作りたい」と決める必要はありません。興味をそそられる形を見つけたら、もうひとつの形と組み合わせて、どんな変化が起きるのかをじっくりと見ていきます。気に入ったものは仮留めしながら、形と形の出会いを楽しんでいきました。

  • どんどん積んでいこう

    試しに同じ形を積み上げてみただけでも、こんなに新鮮!凸凹の形がリズミカルに積み上がり、あっという間にステキなタワーができていきました。一点だけでは見えなかったけど、複数になることで一気に広がりを持ち初め、そのおもしろさに手が止まらなくなりました。

  • アンバランス系も人気

    反対に、一見あぶなっかしい、アンバランスな作品づくりも人気でした。ハラハラ、ドキドキ...あえてバランスとろうとせずに、でもグルーガンを使ってどうにかギリギリできる形を探そうとチャレンジする姿が見られました。わざとつけにくい位置を狙ってみると、重力を無視したような作品ができておもしろい!

  • た、楽しくなってきた!

    あれこれ手を動かしながら「なんかいろいろできそう!」とわかると、クラス全体がヒートアップ。ひとつつけるごとに全体の印象やバランスが次々に変化するため、飽きることがありません。きれい、気持ちいいなどの感覚や、「○○っぽい」など時折具象的な印象に寄ったりもしながら、形の世界に没頭していきました。

  • 吊るしてみたい

    いろんな形があるので、選んでいるうちから想像が広がります。螺旋コードをゲットした子からは「作品を吊るした方が良くなりそう」との相談が。なるほど、それもいいね!いろんな発想が引き出され、クラス内で多種多様なスタイルが生まれていました。

  • 「さわるなキケン」

    コロコロ、つるんとした丸みのある形も人気でしたが、その逆に「尖ってツンツンした形」ばかりをたくさん集めてつけた人もいました。ウニのようにわざといろんな方向に突き出すように角度をつけて、「触ったら痛いよ!」はい、見るからに危険そう。

  • 面白い組み合わせみーつけた!!

    一つの作品にじっくり取り組む子もいれば、複数の作品を手がける子もいたり、クラス内でお互いの作品を見せ合っては刺激を受ける様子もありました。「これとこれを組み合わせて〜」「これも合わせたら〜」「何これオモシロ!」発想が発想を呼ぶ連鎖が生まれていました。

  • でっかくなりそう!

    大きなパーツがいくつもあったため、テーブルの上では作業しきれないくらいの大型作品になっていくこともありました。平面絵画と違い、立体物の制作はいろいろな方向から楽しめることも特徴のひとつ。様々な角度から見て、独特なバランスで作品を組み上げていました。

  • ダイナミック!

    こちらはひたすら高く、高く、とにかく高く!からだ全体を使って、思うがまま、ダイナミックに作り上げている様子。どんどん付け足して自分の背よりもずいぶん高くなっていたので、一見あぶなっかしくも感じましたが、なぜか絶妙にバランスが取れている?!

  • 白い糸

    今までにない発想で、どうなっていくのかワクワクさせられる取り組みも多々生まれていました。こちらは「空間に糸を張って、くもらせる」グルーガンで糸を引くという他の人はやらない方法にチャレンジしようと思った様子で、糸をたくさん張り巡らせたカッコいい作品に仕上げていました。

  • 形ができてきた

    さらに今回のプログラムでは立体作品の「見せ方」にもこだわりました。例えば作業テーブルの上でかっこいい作品ができて「いい感じになってきた♩」と思っているこの作品も...

  • 照明をあてると...

    作品台に乗せて照明を当ててみると「おおお〜!!」陰影が強調されて、印象がずいぶんと変わります。自分が見せたい形をより印象的に見せるため、ライティングがとても大切なことを体験していきました。白い作品に合う、暗い色の背景を置くこともポイントです。

  • 置いてみたい!

    何名かの作品を置いてみると「すごーい!」「美術館だ!」展示台と照明の効果で、まるで美術館にある作品のようにかっこよく見える!と嬉しそう。照明に当ててみて気づくこともたくさんあり、「仕上げをしたい!」と制作意欲に再度火がついた様子。

  • 仕上げにこだわる

    「色のムラが気になる」「何かが足りないな」作品台の上に乗せて感じたことをもとに、それぞれ自分の作品をブラッシュアップ。ペンキを塗り直したり、パーツを付け足したり、どの角度で置くのがベストポジションかを考えたり。最後まで集中力が途切れません。

  • 作品を鑑賞しよう

    「最後に全員の作品を展示してみよう」と言った途端に、「我が先に!」「いやいや私が」とダッシュで展示台に作品を置きにいく子も。タイトルも一緒につけてみてもらいました。鑑賞者から「なるほど」「わかるわかる」「え、そうだったの!?」など反応がいろいろあり、楽しい鑑賞タイムになりました。

  • 光と影

    今回のプログラムでは抽象造形の魅力とともに、戦後の消費社会に対する批評性を帯びた「ジャンク・アート(廃物美術)」を体験しました。家から持ち寄った不要品にペイントし、それらを他の物と組み合わせて新しい造形作品にしていきました。さらに光と影が生み出す美しさを発見し、立体造形の可能性に触れる機会となりました。

さくひん

アートスクール・トルネード

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