2024.12 ちがい

ちがい①

画材や衣服、建物、工業製品など
さまざまなものに使われている「黒」。
私たちの身近な画材としても
鉛筆やペン、絵の具、墨、クレヨンなど
さまざまな「黒」が思い浮かびます。

だけどそれってほんとに黒いかな?

そもそも人の目は、反射する光を
色として認識しています。
「黒」はものに当たる光を吸収し、
見る人に暗い感じを与えています。

ひとくちに「黒」と呼んでいる色に
どんな違いや効果があるのか?
100を超す画材を実際に試し
共同で研究を進めていきました。

プロセス

  • 黒の起源、黒のイメージ

    動物の骨や木材を焼いてできる黒は、古代から人類とともにありました。夜、不幸、無意識、全てを包み込む宇宙など、黒は実態のないものを認識する神秘なものと結び付けられました。またアリストテレスやダ・ヴィンチ、そしてニュートンなど歴代の哲学者や芸術家たちは、色は光であり、闇である黒は「色ではない」と捉えていました。

  • 黒の画材ってたくさんある

    身近な各種ペン類、クレヨン、絵の具、パステル、墨、木炭、各種インク類...黒い画材を集めてみたところ、軽く100種類を超しました。「黒」と一言でいっても複数の色名がある画材もあり、メーカーによってもきっと違いがあります。実際にどんな色味で、どの程度の違いがあるのか、興味がありませんか?

  • 黒の標本づくり

    実際に描いて比較するために、この回はみんなで同じサイズの紙に、それぞれの黒の画材を塗り込んで色のサンプルを作ってみることに。単純ですが全体で比較できるよう「できる限り黒くする」「塗り残しがなく、均一に」などのルールを確認して制作がスタート。

  • 何から試す?

    それほど大きなカードではありませんが、実際に塗り続けることを考えると...けっこう大変かも!と予想される画材もいくつかありました。そこで体力があるうちに、まずは全員細めのペン類なから始めることに。カリカリカリカリ…とひたすら地道に塗り込む作業で「描いても描いても終わらない!」「意外と楽しい」

  • 色塗り職人現る!!

    取り組み方は人それぞれで、途中で気が遠のきそうになる人もいれば、細かい作業を黙々と楽しそうにこなしていく人も。ほんの少しのムラも気になるのか、何重にも細ペンの塗りを重ねて完璧に仕上げようとしていましたが「なにそれ、職人?!」「そ、そこまでにして!」周りの人に止められるほどの几帳面さ。

  • シンプルだけど要工夫

    太めのマーカー類や油性ペンなど、塗りは早いのですが重ねた部分がムラになりやすい画材もあり、多少配慮が必要でした。各自で工夫しながら、塗りやすい方法やきれいに塗るコツを見つけていきました。きれいに仕上げられると独特の達成感があり、他の画材も試したくなる。

  • ちがいが見えてくる

    使う画材は基本的に自分が試したいものを、早い者勝ち!画材の好みがはっきり分かれていた子もいました。塗るのに夢中になり、気づいたら手が真っ黒になる人も...数種類の黒を試しているうちに、それぞれの色味のちがいもはっきりと出てきて、自分のものだけではなく他の人のカードとも見比べながら進めていました。

  • 画材を記録しておく

    後半の絵の具やインク類になると、大きな筆ですいすいと仕上げていけるので、一気に枚数が増えていきました。それぞれどの画材で描いた黒なのか、描いた本人もわからなくなりそうなので、画材の種類、メーカー名、商品名、色の名前などをカードの裏面に書きこんでおきました。

  • 比較してみる

    作業の途中で、ここまでにできた黒のサンプルを集めて並べて見てみたところ「ちがうね!」「けっこう差がある!」などとみんな興味津々な様子。「これ何の画材?」など、他の人が描いたものもめくって裏面に書いた画材のメモを確かめながら見比べていました。

  • サンプルを追加しよう

    他にもまだ試せていない種類の画材がたくさんあり、もう少しだけ追加してみることにしました。絵の具ひとつとっても、ジェットブラック、アイボリーブラック、マースブラック、カーボンブラックなど黒は意外と種類が多く、アクリル絵の具とガッシュの違い、またメーカーによっても多少の違いがあります。

  • 実験結果!

    だいたい描けたところで、チャート化して画材ごとに比較できるよう、ボード上に整理していきました。たくさんの「黒」を並べてみると、「全然違う色に見える」「質感というか...光沢の有り無しが問題だね」「わ、これすっごく黒くない?!」など思わずみんな引き込まれるおもしろさ。

  • もはや黒とは呼べない

    鉛筆やボールペンなど、普段から多用している用具ほど「これはもはや黒とは呼べない」という声が多数あり、認識が覆されました。ちなみにこの4枚は全てボールペンの黒ですが、「紫にしか見えない...」「こっちは茶色だね」「金っぽくない?」など、メーカーによる違いがあることがわかりました。

  • KING OF BLACK!!

    「これはすごい!」と際立つ黒さで注目を集めていた画材がいくつかありましたが、中でもどれが一番黒いかのランキングで最も票数を集めたのは、ターナーのアクリルジェッソ、"暗黒ブラック"という色でした。「これ、こわっ!」「闇だ、闇!」光沢がほぼがなく、吸い込まれそうなほどの黒さでした...

ちがい②

前回の「黒」に続き、
「白」の種類について触れながら、
画材の特性から生まれる
色を研究していきました。

シンプルな「黒×白」の組み合わせも
選ぶ画材によって
多種多様なグレーの色味が
生まれていきます。

ちょっとマニアックだけど
色の世界にどっぷりと浸り、
表現の世界を広げるための
謎解きをしていきました。

プロセス

  • 前回の黒一覧を見る

    前回の黒のサンプルは他の曜日のクラスも含めたラボ全体で行ったため、改めて全画材を整理したものを紹介しました。大量の黒をずらり一堂に集めて見直してみると、圧巻!黒とは何か?それぞれ見回りながら感じることがあった様子で良い検証作業になりました。

  • 身近な黒いもの

    そして日常生活の中で、自分たちの身の回りにある「黒い物」を持参してみてもらいました。布、フィルム、紙、ゴムや樹脂など素材によっても見え方がずいぶん変わります。それにしても、いつも何気なく「黒い○○」と呼んでいるものが「全然黒じゃない!」

  • 白い画材も見てみよう

    黒の次は、白い画材のサンプルをいくつか体験。ペンや色鉛筆、クレヨンやダーマト、チョークや絵の具類など、軽く30ほどの種類を集めて、黒と同じサイズのサンプルを作りました。白い紙だとわかりにくいため紙を薄いグレーのボール紙に変更してチャレンジ。

  • いろんな白

    基本的に前回の黒と同じ制作でしたが、描きながら早くも「これは白じゃないような...」「インクが薄い!」「水性ペンの白ってあるんだ!」黒とは違った感触で、発見がいろいろとありました。ラボの中学生たちの視点が、だんだんと研究者寄りの目線になってきているのがおもしろい。

  • 岩絵具の使用体験

    絵の具のバリエーションとして、水彩やアクリル絵の具のほかにも、今回は日本古来から伝わる岩絵具を追加。白い胡粉と膠を指で混ぜて、日本画の絵の具作りの体験を交えました。耳たぶくらいの程よい固さにするために微調整したら...艶のない、マットな質感の白ができました。

  • 白いものも見る

    自分たちの身の回りにある「白い物」を持参してくれた子もいました。トルネードにある白いものも探してみると、黒よりもあっという間に見つかりますね。身近に「白」はいろいろ豊富にあり、また素材や質感も様々なものがあり、色の見え方も違います。

  • 黒×白=?

    さてここからがこの回の本制作。調査した黒と白を組み合わせて、どんなグレーが生まれるのかを調べていきます。同じ画材同士であればだいたい想像がつきますが、画材の種類や質がちがうもの同士をかけ合わせたら...?ペン、クレヨン、パステル、絵の具、色鉛筆、顔料など様々な組み合わせを試しました。

  • ノリがいい!組み合わせ

    今まで試したことのない組み合わせを積極的に試してみるように声をかけました。ムラなく塗ることができる組み合わせが見つかると気持ちいい。周りの人たちの取り組みも気になり、「それきれいだね!」「何使ったの?」などお互い聞き合いながら進めていました。

  • ノリが悪い組み合わせ

    基本的に使う画材が傷まない重ね方であれば、どんな順番で使ってもOK!ですが、使う画材の順番によっては反発しあうものもあり「わかっていたけどやっぱり弾いちゃう」「色があまりのらない」けど中には「いちおうグレーができる」「これちょっとかっこいいね」などの発見も。

  • 集めてみる

    出来上がったグレーを並べてみると、色味のバリエーションがすごい!さらに色だけではなく質感も様々で、中には独特なテクスチャが生まれていたものもありました。同じ画材でも、掛け合わせる画材によっていくつもの違う表現が広がることがわかりました。

  • 身近なものを見直す

    さらに作成した黒、白、グレーのカラーサンプルと、持参したモノトーンの身近なものとを見比べ、どの画材が近いのかを観察しました。「白いものを見るとグレーに見えてくる」「これはモノトーン以外の色なのでは?」「黒いものも、グレーに見えてくる」「海苔って意外と黒じゃないね!」「グレーで何か描けそう」

ちがい③

普段の制作では
何気なく使っている画材も
それらの特性を知ることで
使い方に理由やこだわりが生まれます。

知見を深めていくと
狭い世界の選択にとどまらず、
表現したいことに合わせて
幅広い選択肢の中から画材を選び、
効果を実感できるようになります。

ていねいに行った一連の画材研究が、
質感や重厚さなど
手描きの制作ならではの
魅力的な表現につながっていきました。

プロセス

  • 石を描く

    一連の黒、白、グレーの画材研究を経た後、この回は石をモチーフにした作品制作に挑戦しました。特に、さまざまな表情をもつ天然石の質感に注目。石の色や模様は均一ではなく、またひとつとして同じものはありません。石の中の成分や凹凸、傷のつき方によっても表情が変わります。

  • 石を選ぶ

    今回は特別に古い石の標本を用意してみました。フタをあけると産地や組成などが異なる多種多様な石がずらり。表情がおもしろかったり、不思議な模様のものがあったり、透明、半透明、色がついているもの...角度によっても表情が変わり、いつまでも見ていられそうな魅力がいっぱい。

  • 詳しく見たい!

    虫メガネも使いながら、自分が描きたい石を探すことに。細部も確認していくと、地味に見える石にも魅力的な表情があったり、意外な模様や微粒が見えたり。「これ好きかも」「きれい!」これを描いてみたい、と気に入ったものと出会えた人から制作の準備を進めました。

  • 色サンプルを活用

    前回までにみんなで作り上げた色のサンプルから、選んだ石に合う色味やテクスチャを探しました。ぴったり合うものがなかなか見つからなくても、使い方を加減したり、何と何を組み合わせれば自分の石に近づくかを考えている様子。サンプル数が豊富にあったので、見当がつけやすいようです。

  • ラフを描いてみる

    「たぶんこれかなあ」黒と白の画材をいくつかピックアップし、実際にラフ制作で試しながら、制作の見通しを立てる人も。描いてみると予想とちょっと違うということもあり、色のサンプルカードと画材置き場を行ったり来たりしながら選んでいきました。

  • もう少し青みが欲しい

    描き進めていくうちに、実際の石の色と画材の色の違いがすごく気になるという声も多数。画材の黒は赤っぽくて、実際の石は青っぽい…など、とてもセンシティブに色を見極める目が養われてきている様子。細かい違いにも気づける鋭さがあれば、自ずといろいろな工夫が生まれます。

  • 相性ばっちり!

    こちらは選んだ画材の色味や性質が、自分の石にすごくピッタリ!とのこと。ちょっと赤みのある黒には、染料系マーカーのインクがもつ独特の黒色が合うそうです。他の画材も交えて色を調整しながら、徹底して描写をしています。ここまでくるとすごいレベルだ...

  • 遠目で見る

    細かいモチーフだと、どうしても目線が近づきすぎる。途中、壁際に並べて遠目で自分の絵を見直しながら、「まだ石っぽくないなあ」「もっと黒くしないとダメだな。じゃないと光ってるのが描けない」など、それぞれどうしていきたいかの見当をつけて、後半の制作に進めていきました。

  • 石の質感にこだわる

    細部の描きこみをしていくと、それぞれが選んだ石の質感がどんどん出てきました。細部の描き込みといっても細かなペン類だけではなく、クレヨンを軽く当てて敢えてさらさらとしたタッチを使ったり、筆の穂先を使った表現など、様々な手法が使えます。

  • 半透明の感じ

    ちょっと珍しい透明や半透明の石を選んだ人も、描きごたえがあった様子。透き通った石の内部に見えるキズのようなもの、他の成分が混ざって曇りがちな半透明の部分などをしっかりと追いかけて、画材を重ねながらていねいに描いていました。描き込みから生まれるテクスチャも魅力的。

  • 金属の光沢

    こちらは「金属の成分が入ってそう」ギラギラと光る石を描いていました。「なかなか光らない…」ベースの色、黒と白の対比など、様々な工夫を凝らして試行錯誤しながら絵に表現しようとしていました。モチーフが小さいのに、細かな凸凹の形までよく追いかけて描いている!

  • 並べてみよう

    それぞれの石の絵を並べてみるとみんな「おおー、石になってる」「すごい!」の声が。短時間の中でよくこんなに多種多様な画材を使えたなと驚きの制作でした。複数の画材を組み合わせることで表現に重みが出て、すごく見応えのある作品ばかり。一連の研究を他の制作にも活かせるといいですね。

さくひん

アートスクール・トルネード

〒060-0062
札幌市中央区南2条西10丁目7-1BUDDY bldg.3F

<google map>

TEL 011-212-1140 電話をかける

info@artschool-tornado.com お問い合わせフォーム

プライバシーポリシー