見たことのある絵、初めて見る絵、思わずパッと目に止まる絵もあれば、一見地味なんだけど妙に気になる絵があったり。この回のラボでは約100作品の名画を取り上げ、いつもよりも少し踏み込んだ鑑賞体験をしていきます。
気になる作品について、一言ずつコメントを書いてもらいました。できるだけ肩肘を張らず書くように声をかけたところ、「色合いが好き」「かわいい」「表情が好き」といったコメントや、「何これ、不気味」といった中高生らしい率直な感想も見られました。
興味が湧く絵画をぽつりぽつり選んで、じっくりと鑑賞しながら書いている人もいれば、好きだと感じる作品がたくさんあって「まだまだ書けてない絵がいっぱい残ってるんですけど…」と大急ぎで書く人も。個性ある視点も続々と出てきました。
それぞれの「推しの名画」を発表してもらいました。初めは少し緊張気味の子もいましたが、1周、2周とそれぞれのコメントを聞くうちに、みんなだんだんと楽しく前のめりに。調べたことや細かい部分に着目して発表する子が増えていきました。
パウル・クレーの『わすれっぽい天使』がとても好き!という人は、「単純な線に見えるかもしれないけど、何か違う」「無垢な感じがたまらない」とのこと。発表にも熱がこもってて、話を聞いてるみんなも思わず好きになりそう。
モディリアーニの絵を選んだ人は、「人物をそのまま描くのではなく、その人のイメージで描いているところ」や「色があたたかいところ」を魅力として挙げていました。こう聞くと、その魅力に自然と注目してしまいますね。
複雑な寓意に満ちたヒエロニムス・ボスの『快楽の園』も中高生に人気でした。好きな理由を聞いてみると「色が鮮やか」のほか、「一見何でもない絵に見えて、よくみると色んなところがおかしい。その感じが面白い」とのこと。よく見てる!
歌川広重と、同じくらい好きな作家はピーテル・ブリューゲル(父)という人もいました。まったく違う表現手法ですが、ふたりとも「人物の動きがリアル」「本当に走ってるみたい」「絵に奥行きがあって絵以外の空間も感じられるところがすごい」
ぐるぐると何周もしながらみんなの話を聞いていくうちに、これまで気に留めなかった作家の新たな魅力に急に気づいたり、新鮮な発見が次々とありました。お互いの視点や感性が刺激となり、新たな感性の扉が開かれていきました。
たくさんの作家の中から、自分がいま最も気になる一人を選び、さらに詳しく調べていくことに。いつ、どこの国で…代表作は…技法は…さまざまな切り口からその作家に踏み込んでいきます。疑問や気になることを自分で調べる、楽しい謎解きの時間!
どんな思想を持ち、何に影響されていたのか、またどんな性格で、どのようなエピソードが残されているのか。調べれば調べるほど発見が増える一方で、謎もさらに深まります。美術は、意味や思想を深く知ることで視野が広がり、感性が磨かれていきます。
自分で調べた作家になりきって、「今○○が生きていたらどんな作品を作るだろう?」というテーマで新作に挑戦。作品のモデル・モチーフはもちろん、画材や技法もその作家の目線で、現代社会にあるものの中から選んでいきます。
作家のタッチや技法、線や色味をとことん試せるように様々な画材や素材を用意しました。また支持体が違えば、色やタッチも違ってくる。どの支持体と画材の組み合わせが良いか、また筆やナイフなどの道具も合わせて研究していきます。
たくさんの素敵な絵画を残してきた作家たち。時代によって全く異なるタッチや表情で描かれている作品もあります。どんな画材を使い、どのように描いていたのかを資料をもとに探ります。実際に描いてみることで、新たな発見が生まれることも。
この色は、どの色とどの色を混ぜ合わせて作られたのだろうか?色の組み合わせを研究する難しさに直面します。何度も何度も色を混ぜ合わせ、本物に近づけていく過程は根気が必要ですが、研究を重ねるうちに、色そのものから作家らしさが出てきます。
地塗り、レイヤー、タッチ、マチエールなど、その作家らしさを徹底的に研究していきました。トライアンドエラーを繰り返す中で、「こう描けばいいんだ」「それっぽくなってきた!」という新たな発見を重ねていきました。
こちらは『サント・ヴィクトワール山』で使われている色を調べている人。似ているようで、なかなかこの色彩に辿り着けない...あれこれ試しているうちに、絵の具が薄めてあったり濃く使われていたり、実は濃度がバラバラかも?とわかってきたとのこと。
自分の横顔をモデルにミュシャ風の表現に挑戦してみることに。ミュシャは細くやわらかな線で描かれていると思いがちですが、どうもいまひとつ...最後に人物のまわりを太い線で囲んでみたところ、一気に「ミュシャだ!」と嬉しそう。
骨のモチーフに惹かれて、ジョージア・オキーフをセレクト。はじめ水彩絵の具でグラデーション表現に挑戦したいと試していましたが...アクリル絵の具に乾燥遅延剤を混ぜ、筆でなでる時間を伸ばすことで理想のタッチを出せた!とのこと。
研究した作家になりきって、風景を題材にする写真を撮ったり、描きたいモチーフを持参したり、自分や身近な友達をモデルにしたり。それぞれが用意した素材をもとに、本制作を始めました。対象となる作家についてじっくり時間をかけて調べ、技法を試してきたので、準備は万端です!
もちろんトルネードにあるものは何でも、モチーフとして使用してOKです。中でもおもしろかったのはジョージア・オキーフを研究していた人から「動物の骨がいい」というリクエストがあったこと。今回は特別にシカの角をドーン!と用意いたしました。北海道ならでは!
こちらの方は、モディリアーニの長く引き伸ばされた顔と首、アーモンド型の目から、なんとキリンがモチーフになっていました。顔の向きを反対に、構図も似てるし色使いもそっくりそのまま。なるほど!です。
オランダの画家ヒエロニムス・ボスの作品の中でも、木版画のテイストが好みとのこと。ボスがよく骸骨をモチーフにしているため、骸骨のキャラクターを今回描いたそう。「描いても描いても終わらない」でも「すごく楽しい」
「彗星が流れる空の風景をマレーヴィチの風に」質量や動き、宇宙エネルギーといった抽象的で目に見えない対象を表現する絵画理論を掲げたマレーヴィチらしいセレクトですね。
中には「描き進めるとおもしろくなって、自分が出すぎちゃう」という人も。作家になることをつい忘れてしまい、途中で気付いてハッとしていました。でもそれぞれ制作を通して、いつもの自分の表現とは違う発見があったようです。