ミレイによる『オフィーリア』の絵は「知ってる知ってる」「きれいだよね!」ラボのみんなにすごく人気。でもイギリスの劇作家・詩人であるシェイクスピアによる戯曲『ハムレット』は、タイトルしか知らないという人がほとんどでした。
シェイクスピアの代表作のひとつ『ハムレット』は、父を殺された王子の復讐を描く、悲劇の物語。ミレイの『オフィーリア』はハムレット王子の恋人であるオフィーリアが川に落ち、うつろな顔で歌を口ずさむ悲しい場面を、斬新な構図と緻密な描写で描いたものです。
同じテーマを他の画家はどんなふうに描いているのかを見てみると、それぞれのオフィーリアに対する考えや思考の違いが感じられます。構図、場面設定、表情、そして色味や技法の違いを見ているだけでもおもしろく、「どうしてこう描いたのかな」と考えさせられます。
同じ物語でも画家によって表現の仕方は様々。そしてこの月はミレイたちのように、自分の好きな物語の場面を、絵画や立体の作品にしていくことに。それぞれに最近のお気に入りの本を持参してもらいましたが「デジタルで読んでいる」とのことでタブレットを持ってきた人もいました。
長い物語の中で、どのシーンを作品にするかを探すのに迷いがあるのでは?と想像していましたが「この制作は得意ですよ、先生」「すぐにここのイメージが浮かんだ」と、想像していたよりもずっとすんなり候補を出す人が多かったです。好きな本ならではですね!
物語としてマンガを持ってきた人もいましたが「絵にひっぱられるなあ…」とのことで、やっぱり小説に変更 !という人もいました。この制作はテーマ選定が重要なので、時間をかけてじっくり検討しましょう。
いつもゆっくりペースの人が「これなんか得意かも」と、ぐいぐいとハイペースで制作していました。物語を手がかりに、自分でいろいろなことを構成していくのがおもしろい様子。
表現したいものが絞られてくると「あれって、どんな形だったっけ?」とスマホ片手にどんどん検索。当たり前のように使いこなしていますが、本や図鑑を使うよりも圧倒的に早いですね。
豊富な種類のペンやパステル等の描画材から、各種絵具類までいろいろある中から、「浮かんだイメージがモノクロだった」「背景は黒にしたい」「全体的にふんわりした感じにしたい」それぞれ作りたいイメージに合う画材を選んでいきました。
途中まで絵画で考えていたけど、「立体のほうが面白くできそう…」と、空間で考える子も出てきました。おや、それもおもしろくなりそうですね!自分で作りたいサイズを決め、素材を選んでいきました。
中には「好きなシーンがあるけど、上手く描けるか心配」という声も。そんな時は頭の中に浮かんだイメージをまずはどんどん描き出してみることに。場面設定や登場人物のポーズを絞っていきながら、少しずつ具現化していきました。
「あまり本を読まないから、物語を知らない」という人には、せっかくなので自分なりの『オフィーリア』に挑戦してみることを勧めました。絵画でもいいし、立体にしてもおもしろいかも?!どんなオフィーリアが生まれるかな。
物語から着想を得た「自分が描きたいイメージ」が漠然とあっても、実際に作品にしていくのはなかなか難しいところもある様子。イメージに近い資料を探し、素材を組み合わせたりしながら試行錯誤して、まだ見ぬ世界を生み出していきます。
例えば、物語では「会議室」「森の中」「城の城壁の近くで」など一言で済むけれど、視覚化するとなると…「背景どうしよう!?」実際に描いてみて気づくこともたくさんありました。ここにきて、ミレーたちの凄さを改めて感じます。
方向性が固まり次第、それぞれのペースで本制作へ。支持体や画材も自分で決めていきました。使い慣れた鉛筆やペンだけではなく、オイルパステルや絵の具など、いろいろと試作しながら自分の世界観に合わせた表現を探ります。
平面でイメージしていたものを、ひとつひとつ立体に起こしていくことにした人も。芯に針金を入れてポーズにもこだわりながら、手や足などパーツを組み立ててていねいに形にしていきました。絵画とはまた違ったポイントに、自分のこだわりが表れてきます。
こちらは人物像を描くところで迷いが出てきた様子。本の世界観とリアリティを混ぜたような表現をしたかったそうで「今まで見たことがないものを描こう」と何度も描き直していました。見たことがないもの、正解のないものを描くのって、ある意味難しいかもしれませんね。
こちらは大胆に「これを作る!」と決めたら、とにかくサクサクと手が動いていました。ミラーを使って、実像と虚像を行き来するオリジナルワールドが広がっていきました。「できたら他のシーンも作ろうかなあ」と楽しそう!
こちらの方は、登場人物がたくさんで「手が足りません!」聞くと、あれこれ作りたい気持ちがすごく強い分、絶対に時間が足りなくなりそうな量で困っていた様子。実現させたい気持ちを受け止めて、かんたんな制作部分をサポートしながら進めていきました。
制作を進めるにつれて、初めに考えていたこと以上に、画材や手法のバリエーションがいろいろと展開していったのも特徴のひとつ。作風に合わせて「こうした方がイメージに近づくかも」と勘が働き、表現がひろがっていきました。
主人公が、自分の「推しです!」という人は、妄想力が全開に!頭をフル回転させていたようで、制作が終わると「なんかいつもより疲れたー!」と言いながらもすごく嬉しそう。続きの次回で描き切ったら、きっと気持ち良さそうですね。
この回のラボは、いつも以上にすごい集中力でした。制作が始まる前から計画を立てて、終わらなそうな子だと感じた人は自分から作業をスタートさせていました。それぞれどう進めていくかが明確決まると、迷いがなくなり良いペースで進めていました。
ふんわりとしたイメージで制作するのが得意な人もいれば、本を読み込みながらイメージをしっかりと構成してから取り組む人も。こちらの作品は、本の内容を全く知らない人が見ても「こんな話なのでは?」と想像することができるほど、とてもよく考えられた作品になっていきました。
水彩絵の具を上手に使いこなしている人も。慣れないうちはどうしても薄くなりがちな水彩絵の具ですが、場面によって濃い部分は絵の具を多めに、薄く透明感のある部分は水を多く含んだ表現をしていて、さすがラボ!と感心。
こちらは画材をクレヨンだけに縛って描いた絵で、とても魅力的な表現につながりました。色使いや塗りにもにこだわりがあり、複数の色を重ねて、重ねて...深みのある表現に。迷っていた人物部分のイメージもしっかりと完成させていきました。
『注文の多い料理店』で、登場する兵士の目線に立てるような仕掛けのある作品に仕上げていました。折って本の形になっていたり、よく見ると穴が空いていたり。「手に取ってみてもらいたい」とのことで、それに合う装飾を検討していました。
不安や罪悪感という感情を、表情だけではなく、全体に描いた細かな線で表現していました。ザワザワとした気持ちや、目が回るような焦りがよく伝わる表現で、モノクロの画面なのにすごい迫力が!白と黒のバランス感覚も絶妙です。
物語の言葉のひとつひとつを想像して、登場する怪物を、なんと文房具をベースに表現してみたという人。新たな怪物キャラクターがどんどん生まれて楽しそう。それぞれの表情もどこかユニークで憎めないキャラクターばかりですね。
物語のタイトルや、あらすじの紹介、そして自分が選んだシーンについて書き起こしてもらいました。「絵は得意だけど文章がものすごく苦手…」という人もいれば、「好きな話だからすらすらと書けた」という人も。見応えのある作品が並びました。