自分の好きなマンガを手に、ワクワクししながら教室に来たこどもたち。はじめに、マンガの歴史を子どもたちに紹介しました。そこには独自のルール、様々な演出があることを知ると「なるほど」「確かに!」身近な存在で何となく見ていたものも、新鮮な目線が芽生えました。
それぞれが持ってきたお気に入りのマンガを見直しながら、自分が研究したい1コマを選びます。登場するキャラクターだけではなく、よくみると手の込んだ背景の描写や、線や網掛けなど、小さなコマの中にぎっしりと要素が詰まっていることがわかります。
好きな1コマを実際に描いてみることに。「ここ描きたい!」と選ぶお気に入りの1コマが、密度の高い線や描き込みがあったりして模写をするにはちょっと大変そうなこともありましたが、「やっぱりかっこいい」「好きなコマだから研究したい」と挑戦することに。
「ミリペンだ!」「こんなにたくさん?!」最近は、昔ながらのGペンや丸ペンなどのつけペンではなく、このミリペンを愛用するプロも多いそうです。用意したいろいろな太さのペンを見て、興奮する子もちらほら。でも種類が豊富すぎて、どの太さを使えばいいのか迷ってしまう...
ミリペンは筆圧の影響が少なく線の太さが一定なので、画風に合わせたペン選びがポイントになります。自分で選んだ一コマをよく見ながら、ぴったり合う太さで一発で描ければ線にいきいきとした勢いが出てくれます。すごく使いやすいようで、描くことがますます楽しくなっていた様子。
鉛筆で裏を塗りつぶした面を表からなぞると、重ねた下の紙に薄いガイドラインを描くことができます。大まかな形をとっておくことで、制作がスムーズになりました。「もっと描き込みたい!」作家が表現している細部に注目して、意図や技術を研究することに集中していきました。
描く手はどんどん進んでいましたが、途中で息継ぎするように「めっちゃ上手にできたかも」「楽しい!」と時折うれしそうな声が聞こえました。描き慣れている子もいれば、初めてミリペンを使う子もいて、それぞれのペースで学びがあった様子。中には再現度がかなり高い子もいて「すごい!」「家でもやりたいな」
マンガならではのトーン(網かけ)を、鉛筆と網を使って再現しようとしている子も!確かにここがとそっくりだと本物らしい雰囲気が出ますから、工夫のしがいがありますね。最近はフルデジタルで制作する作家も増えている中、逆にアナログで工夫しまくるというのはおもしろいです。
「はみ出しちゃった」というところは、隠蔽力が強い白の筆ペンを使って修正。うっかり黒くしてしまった部分も復活できて「これはいい!」とこどもたちの間で大好評。さらにあえて黒くぬりつぶした上に、白く描くという技法も発明されていました。
2時間のプログラムで1コマの描画でしたが、完成しきれないかもしれない...と考えた子たちの中から「下書きなしでペンを使う」「大事なところを優先する」「ペンの太さを選ぶ」などいろいろな作戦が練られはじめました。それぞれ選んだ絵が違うので、どんな進め方が良いかも人それぞれ。
かんたんそうな1コマを選んだはずなのに、実際描いてみると...「なんかこれ、大変かもしれない!」観察するポイントが多い子ほど、大変に感じたかもしれませんね。集中して細部を観察しているからか、途中「目がしぱしぱする」というほどの集中力でした。
それぞれ持ってきたマンガの表紙を見ると、読んだことも聞いたこともないタイトルでも何となく内容が想像できるもの。それだけ表紙には、ロゴやイラスト、カラーリングなどを組み合わせ、様々な工夫が凝縮されていることがわかります。
カバーにはやはりその漫画を象徴するキャラクターを描きたいという子が多数。ヒントを探すため、マンガのページをめくりながら、キャラクターや表情、ポーズを研究していきました。「このキャラは入れたい!」「この表情がかわいいんだよね」それぞれのお気に入りがある様子。
ページをめくりながら、楽しそうに沢山の付箋をつけていました。あれもこれも気になるらしく「もう全部好きなんです!」どれにしようか選ぶのはワクワクですが、そこから絞り込んでいくのは実に悩ましいひと仕事。じっくり考えていきましょう。
おおよその描きたいものが決まったら、何を、どこに、どのくらいの大きさで入れていくか、レイアウト作業に入ります。推しキャラが複数いる場合はいろんなポーズを組み合わせながら、タイトルや前後感も考えつつ検討していきました。「模様替えみたいで楽しい」という声も。
一番見せたいものは何か、控えめだけど雰囲気を作る上で配置したいものは何か、さらに脇役のキャラクターのポーズとの絡みは...などと実際に描くことをリアルに考えていくと、頭の中が「あれ?」と混乱が生じることも。配置するものを切り貼りして動かしながら、イメージを固めていきました。
ダークなサスペンスと華やかなストーリーが絡み合うという複雑なマンガを選んだ子は、その関係性をデザインで表現するため、人間の二面性を表現したレイアウトを考えていました。ちょうど良いサンプルが中のページになかったとのことで、様々なカットのポーズを熱心に研究して形にしていきました。
自分の希望通りそっくりに描けるか心配という子たちも、前回のトレースを使った制作でずいぶんと自信がついてきた様子。「大変そうだけどやってみようかな!」はじめは消極的だった子も、好きなキャラクターを積極的に表現に取り入れている姿が印象的です。
「このキャラもあのキャラも全部入れたい!」という子は、いろいろなコマからキャラクターを組み合わせて、実に賑やかな表紙デザインになっていきました。一体感を持たせるためにどう絡ませるかがポイントになっていきます。新しい組み合わせができるとすごくうれしい!
ラフ制作(プラン、下絵)のはずが、いつの間にか力が入ってしまい...気がつくとすごい時間が経っていた!なんてことも。その熱量でしっかり描いたラフを本紙にトレースすることで、納得の仕上がりに近づけることがてきました。
近いイメージのコマはあるけど、そのままだとどうしてもしっくりこない。「もうちょっと自分が考えたイメージに合わせたいな…」参考にしたキャラクターの表情を一部変えて、好みの雰囲気に仕上げる工夫もありました。
いつも描いている得意なキャラクターがある子が「デザインに入れたい!」と、突発的なコラボ作品も生まれました。好きなマンガのキャラクターと、自分の得意なキャラクターが一緒になるなんて...制作が止まらなくなります。
カバーに使う色を考える上で、それぞれのマンガの世界観に合わせた色合いを選ぶのはなかなか難しい。色使いの印象はとても大切な分、その使い方にはコツがあります。実際に描きながら試すため、コピーして複数の配色で印象を見ながら決めていきました。
「先生、これ...」とカバンから出てきた大きなお菓子の缶。中を開けるとたくさんのペンが入っていました。今回の制作のために、使い慣れているペンを持参した子も!これはワクワク。これから2時間の制作に期待が高まります。
肌の色ひとつとっても、いろんなトーンがあります。「どれがこのキャラに1番合うんだろう?」これよりは薄いけど、そっちよりは暗めがいい...あれこれ試しているうちに、気づけばテーブルの上がペンだらけ!確かにここは、こだわりたい部分です。
色をつけていくと、表現に生き生きとしたリアリティが増していき「そっくりになるのがうれしい!」この子はプログラムのスタートから終わりまで、ずっと休まずに描いていました。さらに「本物らしいカバーにしたい」と、裏表紙までびっしり色をつけていました。
広いベタ面の塗りがあったり、細かな描画ポイントがあったり。描いても描いても終わらない作業に、「休憩する?」「そろそろ終わりにする?」という問いかけにも「やめない。」とキッパリ。小学生の集中力が持続するであろう時間を、はるかに越していたと思います。すごい熱意です。
1回目のプログラムで大人気だった白ペンが、ここでも大活躍。縁を白で囲むことで、目立たせたいところがくっきりと浮き上がるという技を使って、タイトル文字をていねいに縁取り。一手間かけた仕上げの作業で、完成度がグッと高くなりました。
実際に本屋さんに並んでいるように『トルネード書店』に並べてみよう。どうすると手に取りたくなるかな?という問いかけをして、自分の本を紹介するためのPOPを作りました。それぞれキャラクラーを描いたり、おすすめポイントを書いたりして、本をディスプレイ。
自分が大好きなマンガだからこそ書けるアピールポイント。でも書きすぎちゃうとネタバレに…?! とバランスを考えながら、思わず手に取ってみたくなる文章を考えていました。「つづきはこちらで...」なんて、ほんとに読んでみたくなっちゃいます。
作品を並べたトルネード書店。表紙のデザインやPOPはもちろん、「みんなこんなマンガを選ぶのか」と保護者の方たちも興味津々。最近のヒット作から、何十年も前のタイトルや、知る人ぞ知るマイナー漫画まで。こどもたちの好みの一面を知ることができておもしろい制作でした。