教室に来たこどもたちは、いつもよりもたくさんの種類の素材が並んでいることに気がつきました。興味津々に「今日は何をつくるの?」「どんな制作するの?」そして「おかしなことってどういうこと?」
色をつけるための道具、切るための道具、組み立るための道具、接着する道具…一度にこんなにたくさんの道具が出ていることはめったにありません。「これ使ってみたい!」と、はじまる前からワクワクしてしまう。
今月のテーマはキッズ、ジュニア、ラボの全員で『おかしなこと』。小さな子から大人まで、それぞれの視点から日常生活の中で「おかしいぞ」「なんか変だ」「これってどうして?」など謎や不思議を感じることがありますね。このプログラムでは、そんな「おかしなこと」を絵や立体作品などそれぞれの形にしていきます。
「わー、何にしよう」「おもしろそう」「どんなものでもいいの?」「はやく作りたい」といろいろなリアクションがある中、制作がスタート。はじめに話をきいている間から既にアイデアが浮かんでいたという子は「もう決まった」と設計図をすらすら描きはじめています。早い!
ちょっと聞いてよ!と言わんばかりに、最近あったおかしなことを教えてくれる子もちらほらと。「コンビニの店員さんの謎行動…」「お気に入りの文房具が…」「買い物したらサービスでくれたものがなんか違和感があって…」などなど、聞くと確かにおかしな話。おかしなことって、いっぱいあるもんですね!
おかしなことも、そうじゃないことも興味津々なキッズ。素材コーナーで発見した謎のヘルメットを被り、ビニル傘を手にすると「なんか面白そう」と、とりあえずビニールをはがしてみていました。どうなるかわからないけど…「とにかくなんかしたい!やってみたいんだ!」いいぞ、おかしなことを探すんだ!
どのクラスでも、いろいろとアイディアを考えながら、素材コーナーを探索しにいく姿がたくさん見られました。実際どうやって作ろうかなあと悩んでいた子も、ある素材を見て「これならあのアイデアが形にできるかも!」ピンとくるものが見つかったら、まずは試しに実験だ!
かたくて強いもの、やわらかくて気持ちいいもの、光沢があるものなど、いろんな質感はそれだけでこどもたちのイマジネーションを引き出します。「これを使ってみたい」「組み合わせるとおもしろくなりそう」と素材を先に選んで、発想が広がることもありました。
「鬼」と「おにぎり」、「袋」と「フクロウ」、「海苔」と「糊」。似たような音だけど、別々の意味をもつもの同士をつなげてしまうという技を使う子もちらほらと。たしかに日常の中でも、意味を取り違えておかしな会話になってしまうことがよくあります。
虫好きのキッズ男子は、図鑑を見ながらバッタを作り始めました。 粘土、木片、クリップなど、パーツごとに表現しやすそうなものをチョイスしながら試行錯誤しています。好きなものだけに、こだわり方がすごい。
こちらはかわいいネコが作りたいという子。「おかしなことにできるかなあ?」と素材をいろいろ探しているうちに「ネコをすごく硬く作ったらおかしいかな?」「つるつるのネコっておかしくない?」作りたいモチーフと素材の組み合わせから、制作のイメージをふくらませていました。
なかなかアイディアが思いつかないという子には「自分の好きなものを入り口に!」好きなキャラクターを作りおかしな世界を展開させたり、ゲームの世界観をヒントに制作をスタートした子もいました。また、とりあえず「あの道具が気になるから使ってみたい!」ということも。ぜひぜひやってみて!
生き物、植物、日用品、言葉、時間、空間...色や形や質を変化させることでまったくちがう存在感に感じられたり、別のものと組み合わせることでも新しい視点や切り口が生まれたり。おかしな作品に育ちそうな“おかしなタネ”はいろんなところにありそうだ、とそれぞれの感性に響きはじめたようです。
『おかしなこと』の続きのプログラム。前回のこどもたちの制作をみて、この回では素材のバリエーションを少し増やしてみました。「やった!」「これも使いたい!」できることの幅が広がり、こどもたちの制作にエンジンがかかります。
こちらの子はひたすら素材をカット。金属、布、糸、木材など、使ったことがない気になる素材を見つけては、真剣な表情で、黙々と切り続けています。さらにそれらを混ぜてみたり重ねてみたり。素材そのものの感触をじっくりと味わっていました。こういう時間が大切だなと思います。
こちらの子は、気になる素材をどんどん接合していった結果...むくむくと作品が立ち上がっていきました。さらに絵の具をぐるぐるぐるっ!と混ぜたと思ったら、そのままペイント。その時々の発見や感覚にまっすぐな作品になっていきました
イラストが得意なこちらの子は、大量の「おかしな絵」を描いていました。すごいエネルギーです。そして「これ立体にしたら面白そうじゃない?」と試しに粘土で作ってみたところ…「なんかいいかも!」
そして「もっとたくさんいたほうがおかしい!」と手にしたのはグルーガン。先ほどよりも高速かつ大量に増殖させていきました。ドロドロの形が固まり、目を描きこんだら、ツヤツヤの生き物が生まれました。「おもしろい!」ひとつひとつ表情がちがって、モゾモゾと動き出しそう。
こちらの子は、作っていた作品の一部を「切りたくなった!」とノコギリを手に、角の形を切り落とし始めました。断熱材がスパッと切れる感触もなんだか気持ちが良く、みるみる上達していくのがわかりました。
はじめはスタイロフォームから始め、だんだん固めの木材も切り落とせるようになると、こんどは「きれいな丸」を目指していきました。ホールケーキのような形ができて、その後、新たな作品のアイディアにつながっていったようです
こちらの子は、はじめにしっかりとしたスケッチを描いていました。作りたいものに必要なパーツを実現させていきたいけれど、色・数・形…とても具体的ではっきりしている分、ぴったりの制作方法を決めかねて、素材をあれこれ試していました。
先生にも相談しながら、自分のペースでじっくりと着実に取り組んでいきました。ひとつずつ試しながら諦めずに進めたことで、素材や道具の特性をいろいろと発見できた様子です。実現させたい!という気持ちに溢れていました。
こちらには、いろいろな木片で作り上げたキャラクターが登場。既にかなり強烈な存在感を放っています。名前をつけて、表情を描きこみ、そこから頭の中でぐるぐると物語が展開しはじめていたところ...
ジオラマ制作の素材の中からぴったりなものを発見し「これだ!」と閃いた様子。そこからは敵キャラが登場し、まわりに草原や川、木、家など次々に景色が広がり...独自の世界が展開していきました。制作のスピードも早い!
この回は、作るもののイメージがはっきりしてきた子が増えました。それと同時にストーリーも生まれ、ひとつひとつの作り込みの作業にそれぞれのこだわりが強く出てきた様子。この後の取り組みも楽しみです。
この回はいよいよ『おかしなこと』の仕上げに向かいます。とは言っても、「まだまだここから!」「もっと作り込みたい!」という子がどのクラスにも大多数。考えては作り、作っては変えて…試行錯誤の中でやっと形になってきているところですから、ますます面白くなりそうな予感がします。
みんな自分の作品に強いこだわりがありました。こちらの子も、ひとつひとつのパーツを作り込み、最後まで粘りに粘って仕上げようという意気込みがすごかった!細かな工夫が詰まっていて、小さな作品にも見どころいっぱい。
前回の制作後、家でも作品について考えてきたという子がちらほらと。中には作品に登場させるため、家からミニチュア素材を持参した小学生も。実際に作品に立ててみたところ、狙い通りの効果があった様子でうれしそう。
ラボの中には「どうしても透明にしたい」と家からレジンを持参してきた方たちも。バスタブのお湯や、パフェの器などを器用に作っていました。レジン液の扱いが手慣れていて、かなりうまい。
自分でイメージしたことがどんどん形になっていく過程がおもしろく、自ずと制作にも熱が入っていきました。かたちのない「おかしなこと」を、どう表現して見せるのか、全ては自分次第。
制作がヒートアップする中、それぞれの作品サイズに合った展示ケースが登場。自分たちのミニチュアを置いてみると、まるでホワイトキューブのギャラリーみたい。「どんなふうに展示しよう?」自分だけの世界を作れる感覚が、なんだかうれしい。
展示空間に作品を置いてみると、少し客観的な視点からも作品を見直すことができました。急に「バラバラにした方がおもしろそう」「もっと他のアイテムが必要だ」など新たな素材でまた制作が展開されました。最後の最後まで、完成形が予測できなくておもしろい。
特にジュニア・ラボでは「どうしたらおもしろさがはっきりと伝わるだろう?」と新たな目線が加わり、構成を大きく練り直していた様子が印象的でした。大胆に壁を塗りはじめたり、前後や高低差の配置替え、さらには空中に浮かせたい!という発想まで、とことん実現させていきました。
それぞれの箱の中は、ひとつひとつが別世界。小さな子も高学年の子も、現実とファンタジーが混在する表現が多く、見る人に新しい視点や感覚を与えてくれるような作品になっていました。
せっかくなので、最後に作品のタイトルやコメントをひとことずつ書いてもらいました。ちなみに②でひたすら切り続けていた子のタイトルは「おかしなスパゲティ」。細かく切り刻んでいたいろんな素材は「具材」でした。やっぱり、じっくり味わってたんだなあ!