2021.5 バックグラウンド

バックグラウンド①

しかくの中でどう遊ぶ?
二次元の平面絵画に
どんな空間をつくるのか。
視点や遠近などを変えてみると
バランスが変わり、でこぼこが生まれ、
高低差や奥行きが変化していく。
絵の地づくりから考えてみよう。

プロセス

  • テーマカラーは「緑」

    好きな画家がいたら、その人が描いた絵を想像してみよう。どんな手順で、どんな工夫をしながら表現しているかな?必ずそれぞれの制作の上での細かな調整や工夫があるはずです。今月のプログラムでは、そこを意識した制作を体験してみよう。ラボのみんなに、ちょっと渋めの緑の布地を用意しました。

  • 下地の緑×絵の具の色

    アクリル絵の具の研究からはじめよう。新ラボの子の中には、はじめて本格的にこの絵の具を使うので「やったー」と楽しそうな様子の子がちらほら。上の学年の子たちも、持っているチューブの色がどんな性質を持っているかあらためて確認しましょう。布地の緑と、絵の具の色がどう影響しあうかな?

  • 色ごとの発色の違いをみる

    アクリル絵の具は「透明色・不透明色」という種類に分かれます。いつも白い紙やキャンバスに描くことが多いのであまり意識しないのですが、緑の布に描いてみると「この色まぶしい!目立つなあ」「この色は布になじんじゃう」と色ごとの性質を実感。中には、水分量を変えると性質が変わる色も。絵の具の奥は深い!

  • 明度による違いをみる

    1色セレクトして、その色をさらに暗い色・明るい色に変化させた場合の見え方のちがいも試しました。おなじ形でも、明度の差があると遠くにあるように感じたり、近くにあるように感じたり。色の視覚的効果を確認しました。「想像していた見え方とはちがった!」というラボの子も。

  • 先に下地を塗ると?

    次は下塗りの効果を体験しました。緑の布にジェッソという白い下地材を塗っておき、その後に絵の具を載せてみました。下地は、水分量を変えた3段階を用意。下塗りは、ひと手間が発生する分効果も大きい!実際に自分で制作してみてはじめて加減がわかるので、ラボのみんなはもくもくと研究を楽しんでいました。

  • 緑のキャンバス作り

    アクリル絵の具の研究から、後半はがらりと変わって木工工作を実施しました。緑の布と角材で、正方形のキャンバスを作成します。角材の切り出しから、完成させるところまで1時間ほどで一気に進めました。のこぎりでカットする長さの計算に、みんな頭を抱えた場面もありましたが…!?ここは経験ある学年上のラボの子がリード。

  • ピンと布を張って完成

    丈夫な緑の布を、キャンバス張り専用のプライヤーという器具で引っ張りながら、少しずつ角材にタッカーで留めていきました。布がぐぐっと伸びる感覚がわかるとなかなか面白い作業です。そしてこどもたちは、すぐコツをつかんで上手くなっていました!来週からこのキャンバスで制作をはじめましょう。

バックグラウンド②

目には見えないけど
見えるような気がする
ボーダーライン。
境界線を意識して
表現を組み立てよう

プロセス

  • 緑のモチーフを紹介

    緑のキャンバスに描くものは、本物の緑の葉っぱです。みんなにそれぞれ、1本ずつの大きな葉っぱを選んでもらいました。モンステラという観葉植物の仲間です。この独特な形。角度や向きでいろんな見え方に変化します。モチーフを置く向き、モチーフとの距離、自分の視点の高さなど、どのように描こうかな?検討していきましょう。

  • 構図を意識しよう

    イメージする構図の幅をより広げるため、ヒントになる作家の作品を紹介しました。花が画面からはみ出すくらい拡大して描いたアメリカの画家ジョージア・オキーフ。まるで人のように無機物をレイアウト・撮影した写真家アーヴィング・ペンの作品シリーズなど。「花だけど、花じゃないものにも見える」「かっこいい!」

  • 構図のアイデアを出す

    すぐに一つだけの構図に絞らず、考えつくアイデアをまずできるだけたくさん描き出しました。描きながら「意外といいかも」と感じるアイデアが浮かんだり、自分ではイマイチに思うアイデアが他の子にとって「面白い」と感じるものだったり、次々とアイデアが出しやすい、いい感じの空気感が生まれていました。

  • 構図を決めて下描きする

    広げた選択肢の中で、自分なりにこれだ!という構図をセレクト。かなり変わり種のアイデアも出てきて、積極的にチャレンジする意欲を感じました。緑のキャンバス画面に、描くモチーフの大きさや角度などを微調整しながら、鉛筆やダーマトグラフで下書きをしました。

  • 緑の布に緑の葉を描く

    下書きができたら、アクリル絵の具で色を載せていきます。新ラボの子たちも、まずは絵の具をペタペタ。キャンバス上で色を重ねてみたり、薄めた絵の具を重ねてみたり、少しづついろんなアプローチをはじめました。制作経験がある高学年の子の中には、完成をイメージして下塗り予定をしっかり立てて制作を始める子も。

  • 描き込みを進める

    新ラボの子たちは、手を動かす中で絵の具を使って「描く」ということに慣れてきていました。大きいタッチで描く気持ち良さもあり、ぐいぐい手が進む!高学年の子たちは、制作を組み立てる力がついてきてる子が多いと感じました。パンチのある意外な色を載せたあと、緑系の色を重ねて少し落ち着かせるなどの工夫もありました。

  • 遠目でチェック!

    次回も絵画制作は続きます。ここまで描いた自分の作品とみんなの作品、ずらりとならべて見てみました。新ラボの子が高学年の絵を見て「すごい…」「さすが!」とうなる場面もあったり、「自分すごいかも」「いい感じ!」と嬉しさMAXの子も。来週の仕上げに向けてイメージを膨らませておこう。

バックグラウンド③

自分が気持ちいいと感じる
着地点って、どこ?
モチーフの魅力的なところ、
表現したいところが
引き立つように仕上げてみよう。

プロセス

  • 花を見る

    仕上げの週に追加モチーフ登場!いろんな花です。小ぶりのもの、不定形のもの、ごろんとしたかたまり感のあるものなど、いろんな形状を用意しました。好みも大事だけど、絵の全体のバランスをとるためのアイテムとして、どの花がぴったりかな?冷静な目で判断していこう。

  • 花を入れた構図を検討する

    どの花が合うか、自分の絵を見直してみたり、モチーフの花を絵の前でかざしてみたりしながら、可能性を探りました。前回構図についてよく考え検討していたこともあるのか、いろんな方向性のアイデアが生まれていました。花を一番手前に描くか、葉を一番手前にするか。1枚の絵としてのバランスは大事ですね。

  • 花の下絵をかく

    描く花を決めて、描く構図の見通しが立ったら、自分のキャンバスに下絵を描きました。「大丈夫かな…合うかな?」前回の葉っぱの制作が良い感じに進んでいたこどもたちは、ここで失敗するとかなり残念ということもあり、一番緊張する場面だったようです。「よく考えたし、まずはやってみよう!」

  • 花を描き加える

    絵の中で、花を手前にもってきた子は、前回描いた葉っぱを隠すように濃いめの絵の具を載せながら描きました。花を葉の後ろに配置した子は、葉よりも奥に見えるように、水分量や色合いを調整しながら描き進めていました。また、花が奥から手前に伸びてくるようなイメージにした子もいました。面白い!

  • 全体を仕上げる

    花も加わり、葉っぱとのバランスを調整する必要が出てきました。主役となるのは花か葉か?具体的にはどこの部分?表現したいものに対して、自分がどうアプローチするか作戦を立てながら仕上げました。ラボの制作は自由度もありハードルもあり!でもイメージしたものを形にする達成感はすごく大きいようです。

  • 完成へ

    手前にしたいものは色のメリハリをつけ、奥のものはわざとあいまいに描く。葉っぱのいちばん手前をぐぐっとシャープに描き込み、見る人の目が向かうようにする……いろんな工夫が見える仕上がり!それぞれの結果をきちんと出した気持ち良い制作でした。

さくひん