この月のテーマははさみ。トルネードが小さなこどもたちにオススメするはさみは、刃先が丸いこと、長く使えるようある程度の大きさがあること、軸の金具のつくりがしっかりしておりゆるみにくいこと。最近では汚れや接着剤のつきにくいフッ素加工も増えてきており便利ですね。
合わせて工作に使うのりは、基本的に紙がシワになりにくく作業をする手が汚れにくい、スティック状の固形のもの(いわゆるスティックのり)をお勧めしています。他にもやまとのりや液体のり、最近ではテープのりやスプレーのりなどの種類も増えており、場面に応じて適したものを選んで使い分けています。
かんたん・便利そうに見えるはさみやのりのですが、小さなこどもたちがコツをつかみ使いこなせるようになるためには経験が必要です。例えば、薄い紙をシワにならないように張り合わせることや、決まった位置に角を合わせめくれないように貼ることなどは、はじめのうちとても難しい。うまくいかずジレンマも感じやすいところですが、落ち着いてひとつひとつ注意しながら進めていきました。
はさみの使い方ではまず姿勢が大事。テーブルに向かってまっすぐに座り、脇を締めてはさみを持つ手がグラグラしないようにすることです。その状態ではさみを開閉し、紙をまっすぐに差し込んで...直線を切る、丸く切り抜く、いろいろな曲線を切るなど試していきました。切りにくそうにしている小さな子もいましたが、姿勢を整えることでほとんどの子は解決していきます。
高学年の子たちも楽しめるはさみのトレーニングをご紹介。コピー用紙や折り紙などの薄い紙を用意し、端から直線を切っていきます。角でちぎれないように角度を変えて延々長く紙帯を切っていくと...1枚の紙が切り方によってびっくりするほどの長さに!途中でちぎれるとゲームオーバー。長くするため細く切っていきたいところですが、注意深くしないとちぎれる危険もある楽しい遊びです。
黒い紙を凸凹の適当な形に切ってみます。これを顔のカードにかぶせると...「へんな髪!?」「おもしろい!」こどもたちもさっそく挑戦です。「かっこいい系にしたい」「お母さんの髪型はこんなだよ」など思い思いのヘアスタイル制作に挑戦です。教室のあちこちで作りながら笑い始める子たちも。
台紙に貼って完成です。しっかりとのりをつけないとパーツが落ちてしまうので、ていねいに作品の隅々までチェックする習慣がつくといいですね。
「髪を長く伸ばす」「パーマをかける」などのアレンジから「金髪になる!」「アクセサリーをつける」などの展開まで、実に様々なヘアスタイルが並びました。「いらっしゃいませ」と美容室にあるお道具セットを作っていた子も。秀逸!
先生たちも大好きなアンリ・マティスをこどもたちに紹介。「色彩の魔術師」とよばれた20世紀を代表するフランスの画家で、大きな油絵をはじめ壁画やステンドグラスなど、自由な色使いとダイナミックな形で構成された画面が特徴です。
長く絵の具を使って絵を描いていたマティスは、晩年になると筆をはさみに持ち替え、作風をさらに進化させました。色とりどりの紙を切り抜いてできる形には、マティスの身体感覚がダイレクトに表現され、エネルギーや生命感に溢れる絵が誕生していきました。
古い資料を調べてみたところ、マティスが使っていたはさみはとても大きい!布用の裁ちばさみくらいありそうなもので、これにはこどもたちもびっくり。歳をとって体が動きにくくなってからも、この大きなはさみで精力的に制作を続けていたとのことです。
先週から直線・曲線などいろいろな形を切る制作を続けているキッズコース、この週は人の形をたくさん作ってみることに。マティスの名作『ダンス』のように躍動感のある人の形を目指して、それぞれ色紙を切っていきました。
思い思いに切り抜いていくと、いろんなポーズの人たちができあがり!「ラジオ体操してるみたい」「ジャンプしてる」「ぐにゃぐにゃダンス(笑)」など自分でも意図していなかった形に仕上がっておもしろかった様子。紙を折って重ねて「手つないでる!」5人、10人とダンサーが増えていきました。
それぞれダンスしている人の形ができあがったら、台紙に貼っていく作業。マティスの『ダンス』のように輪にするのは難しい様子でしたが、それぞれ工夫しながら配置していきました。
マティスのように、緑の大地が欲しくなりますね。クレヨンでダンサーの足元を塗り込んで、絵を仕上げていきました。形はちがっても、色やテーマが似ているだけでマティス風の作品に?!
ハサミをテーマにした最終回。この週は刷毛で紙を塗り、金の紙帯を作る制作からはじまりました。「すげー、ピカピカだ!」「何に使うの?」こどもたちも興味津々。たくさん使うからどんどん作ってね!
絵の具が乾いた紙帯から、好きな形を切ってみてもらうことにしました。直線、曲線、ギザギザ線。2枚重ねて同じ形にしてもOK!はさみの扱いについてはここまでの制作でほとんどの子が上達し、自信がついた様子。さくさく気持ちよく切れることを楽しんでいました。
くねくね、カクカク、でこぼこした形を重ねてみると…複雑な装飾模様のゴージャズな額縁になって「わ、すごい!」各自で切ったものを重ねてゴールデン模様を作り始めました。形によって見え方が変わるのもおもしろかった様子で、教室内が静まり返るほどの集中力。難しい形を切ることにチャレンジしたり、たくさん作ることに熱中する姿もありました。
どの形とどの形を組み合わせるか、またどんな順番で重ねていくかによっても、できあがる模様が変わります。こまかな曲線で繊細かつ豪華な印象にする子もいれば、直線も組み合わせてすっきりとしたデザインに仕上げる子も。
この作品はできるだけ左右対称、上下対称に仕上げると額縁らしさがアップします。角にどんな形の模様が入るのかも大事なポイントです。どんどん切り足して装飾を増やしていきました。
完成したたくさんのパーツを貼り合わせる作業はなかなかたいへん!のりの使い方に慣れていないと、重ねているうちに下の層から剥がれてきたり、位置がずれて予定通りの柄ができなかったり、さらに「手がベタベタする!」「のりが出てこない」などどのクラスもざわざわした雰囲気でしたがどうにか完成させることができました。
できあがった額縁には、前の週に作ったマティスの『ダンス』風の作品を入れて完成!まるで美術館のように、教室の壁にずらりと名作が並びました。