20世紀後半以降の美術の世界では、ただ絵や彫刻を作るだけではなく、いろいろな形式の新しいスタイルが生まれました。そのなかのひとつに、美術家自身が有名な絵や映画の登場人物になりきって写真を撮るという作品があります。アメリカの女性作家シンディ・シャーマンや、日本では森村泰昌さんが有名です。
この自分ではない「誰か」に変身するというおもしろい手法に、ジュニアのこどもたちが挑戦!9月の制作は自分が選んだ名画の登場人物になってみることにしました。
さて問題は「誰になる?!」古今東西、いろんな時代のいろんなポートレート作品をこどもたちに紹介。壁にずらりと並んだ名画をみて「これ知ってる」「みたことある」というものから「あ、かわいい」「これ誰ですか?」
パッと決まる子もいれば「どうしよう…」と決めかねてしばらく迷う子もちらほらと。絵で模写をするのではなく自分が変身するなんて初めての試みですから、いつもと違う目線で見てしまいますよね。「聖徳太子のファンなので...」「キリストじゃん!」「青いターバンを巻きます」など制作前から早くも大盛り上がりです。
変身アイテムの制作をする前に、どんなものが必要になりそうか絵の隅々まで細かく観察していきました。鉛筆、サインペン等使いやすい画材で、それぞれ選んだ作品を模写。自分で描いてみると、背景の色や少しの表情の違いで作品の印象が変わってしまうことがわかります。
またその絵をそっくりに再現するつもりでみると「この帽子の形変わってるな」「手に持ってるもの何だろう?」普段の鑑賞とは発見するものが少し違っていた様子です。次週以降で必要になりそうな服装、アクセサリーなどを確認してこの週は終了。次回をお楽しみに!
それぞれ必要になるアイテムが違いますから、このプログラムでは何をどう作っていくか自分自身で考えて取り組む必要があります。また完成にプロのカメラマンさんが撮影に来てくれることを伝えると「ええー!」緊張感が高まりました。
いろいろな素材を用意しました。布や紙、針金や絵の具はもちろん、綿やアルミホイル、スプレーのりなど「これどうやって使うの?」という素材や道具も並んでいます。
布が必要な人は、紙をしわしわにして色を塗り、柔らかい布の風合いのある素材をつくりました。ターバンの青、頭巾の赤、着物には柄や模様を入れて仕上げたり。自分が身につけるため、普段の絵よりも大きな紙で作ったのでなかなか大変な作業でした。
画家の自画像や肖像画などでも、帽子を被っている姿が描かれることが多いですね。つばのある形、ベレー帽、麦わら帽などそれぞれ自分のあたまのかたちに合わせて作っていました。鏡を覗き込みながら、大きさやつばの角度などを念入りにチェック。
そのほかにもモデルの顔についているヒゲの形、手に持っているカゴ、演奏している楽器など、どうやって作るか迷いそうなアイテムもたくさんありましたが、アイディアを出し合い先生とも相談しながら制作を進めていきました。
身頃や袖のパーツを貼り合わせ、本格的に「着れる服」を作っていた人も!型紙もなく、基本的に鏡を見ながら試行錯誤の制作ですからびっくりです。小学生でこれができるのはツワモノだぞ...
まだまだ制作したいところではありますが、次回も続きができますのでいったん終了。全てを手作りするのではなく、家にある服やアクセサリーなどで使えるものがあれば使ってもOK!おうちで探してみるように伝えました。
「撮影が楽しみ!」「どうやって撮るの?」みんなこの1週間でいろいろ考えたり準備をして教室に集まりました。「これ作ってきたよ」「家から持ってきたんです!」お母さんのアクセサリーを借りてきたり、ちょっとよそ行きの服を着てきたり、カツラにペイントしてきた人まで!やる気がみなぎっています。
昔の作品や外国のポートレートも多かったので、上着や帽子はもちろん、人物が手にしているアイテムも「これ何だろう?」「どうやってできてるのかな?」などひとつひとつ想像が膨らみます。大人とは違った見方や解釈もあり、こどもたちの絵の見方はおもしろいですね。
「失敗した!」「時間がない!」などドタバタしながらも着々と制作を進めていきました。衣装やアイテムがそろったら、実際に身につけた状態で最終チェック。角度は?表情は?「ここがポイントだろう」という点を考えながら鏡を覗き込む顔が真剣です。
背景はポートレート撮影でとても重要な要素。暗いのかふんわり明るいのか、茶系か緑系かなど、色付きの布を使って雰囲気を調整。ムンクの「叫び」の橋の絵を大きなボードに描いていた人もいましたね。すごい!
今回撮影をお願いしたのは、マッキナフォトの橋口さん。いろいろな撮影機材を持ってきて、教室の一部に出張スタジオを作ってくれました。こどもたちも楽しみ!だけどドキドキ...準備ができた人から順次写真をとってもらいました。
それぞれの作品に合った背景の前に立ち、体の向きは?腕や手の位置は?顔の角度は?この制作の最後は、橋口さんとの共同作業。微妙な表情もできるだけそっくりに。描かれている人になり切ってカメラに向かいました。
ノリのいい子もいれば、目を合わせるのも恥ずかしいというシャイな子も。しかしはじめは照れていた子でも、橋口さんの細かなポーズの指示や誘導でみんな楽しそうな顔に変わっていく。さすがのお仕事ぶりで、最終的に全員名画の登場人物になることができました。拍手!
なんだか雰囲気満点なのは、みんな無意識に自分に似た作品を選んでいたからかもしれません。緊張しましたが、やり遂げた感も満点な経験でした。楽しすぎたのか「持って帰れるの?家でも変身する、やったー!」いろいろな名画に挑戦してみると楽しそうですね。