この月は久しぶりにマンガがテーマ。好きなマンガを1冊持ってきてと伝えておいたところ「選べなくて!」「全部好きなんです」など複数持参した子が多数。この時期大ブームだった『鬼滅の刃』をはじめ、お父さんお母さんの本棚から『キン肉マン』『スラムダンク』『あさりちゃん』など懐かしの漫画を借りてきた子もいれば「うちはこれです」とタブレットでデジタル漫画を持参した子も。時代の流れを感じますね。
日本が世界に誇るマンガ文化ですが、その歴史を紐解いてみると、印刷製本技術と強く結びついたものだということがわかりました。専門用語や道具を知るのもおもしろい。現在のマンガ文化の根っこには、描く人だけではなく印刷技術の面でも驚きの職人技がたくさんあったのです。普段何気なく読んでいるマンガも専門的な知識を持って見直すとおもしろさが100倍!
最近はマンガ制作の現場もデジタル化が進み、タッチペンで描く人が増えているようですが、それまでは多くの漫画家さんがつけペンを使っていました。Gペン、丸ペン、カブラペンなど、ペン先の形やメーカーによって様々な種類が作られています。知ってる!という子もいれば初めて見るという子も多く、試しに実際に描いてみることに。
インク壺にペン先をちょんとつけて試し描きをすると...「描けない!」普通の鉛筆やペンのような持ち方では1本の線すら描けないのです。慣れないうちは筆圧加減がわからず、線が太くなったり、細くなったりして、つけペンは習熟に時間のかかる画材です。しかし描きにくいけどおもしろいらしく「いつまでもできる」「家でもしたい」という声多数。
つけペン体験もほどほどに、本制作のお話へ。今回は自分で持参した漫画から1コマだけを選んで、徹底的に模写をしていくことに。「えー!選べない」「どれがいいかな?」漫画は1コマずつ、形や見え方、流れなどが細かく工夫されています。どこを抜粋するか、真剣な様子でページをめくっていました。
描くコマが決まったら、小さなコマを大きな作品にしていくためにそれぞれ拡大の計算をしていきます。定規でコマのサイズを測ったり、縦横の長さを掛け算して出していくのですが...これが低学年にはとても難しい!教室内が大混乱になりそうなところ、算数が得意な子たちも手を貸してくれ、どうにか計算を終えることができました。
直角の正方形や長方形ならまだ描きやすいのですが、台形になっていたり平行四辺形になっていたりするのがこどもたちをてこずらせました。正確な枠が描けた子から中の絵や吹き出し、文字の模写へ。
何となく描くだけではなかなかそのマンガの雰囲気は出てきません。線の太さの強弱や、使われているフォントまで徹底してそっくりにすることで、やっとそのマンガらしさや世界観が滲み出てきました。この週は大まかにコマの中に描く内容をつかんだところで次週へつづきます。
前回のプログラムでは、マンガの歴史や技術、コマ割や線、吹き出しや文字まで、マンガについて細かく体験をしていきました。この週から始まる本制作では、改めてモチーフにする1コマを選び直しても良いと伝えたところ...マンガの見方が変わったのでしょう、ほとんどの子が別のコマを選び直すという展開に。
前回たいへんだったコマの計測、拡大、製図の作業をもう一度おさらいするように制作していきました。自分で選んだコマだからみんなモチベーションが高く「なんか比率が違う気がする」「先生、これ歪んでませんか?」などチェックがていねい。
絵の制作かと思いきや、ここから先は少し木工作をがんばります。選んだ1コマを最終的に木の板に模写して作品にするため、拡大したコマの形を板に写し、ノコギリで切っていきます。
無垢材よりも硬い合板を、コマの枠線に沿ってのこぎりでカット。みんな積極的でしたが直線が長かったので「かなり大変だった!!」「腰いたい」どのクラスもものすごい勢いで切り終えました。
のこぎりで切った跡や、エッジが鋭くてすぐ欠けてしまいそうなところは、ヤスリを使ってていねいに整えました。切るのが上手な子はノコギリを持つ時に力を入れずすいすい切り、バリも出ず後処理もほとんどなし!
最後に、木材の表面、側面ともに下地材・ジェッソを塗り、紙のような白さにしていきました。画面の白さだけではなく、木目の凸凹をなくして描きやすくするための目止めの役割もあります。内容が盛りだくさんで体力的にもたいへんでしたが、次回の制作に向けて何とかみんなここまでがんばって作業を終えました。おつかれさま!
「早く描きたい!」始まる前からそわそわしてるジュニアのマンガをテーマにした制作。いよいよ仕上げの週です。乾燥した下地・ジェッソにやすりをかけ画面をなめらかに描きやすく整えたら、さっそく描画がスタート!
みんなはじめから夢中になって描いていました。1コマを拡大して模写をするというシンプルな制作ではありますが「描いても描いても描くところがたくさんある」元絵に忠実にしようという小学生たちのパワーがすごい!
大まかにした絵を描いたら、順次ペン入れの制作です。みんなキャラクターの描画をしたいところではありますが、あえて吹き出しや文字から仕上げる方法を勧めました。これによりベースとなるそのマンガごとの雰囲気ができあがり、どこに絵を描けば良いかの位置の把握もしやすくなります。文字は明朝かゴシックか?大きさや太さは?細かな部分までしっかりと観察していきました。
キャラクターの描画はさらにヒートアップ!描かれているものに目が奪われがちですが、そっくりに仕上げるためには余白(スペース)もよく観察するように伝えてみたところ「ほんとだ」「なるほど」間合いを意識して計ることで、描きやすくなるようです。
漫画はペンやスミだけではなく、スクリーントーンなど特殊な道具も使われています。今回はアメリカのコミックを描いたポップアーティスト・リキテンシュタインの作品が参考になりました。キャンバスにすべて手描きで仕上げているというから驚き!
カーボンやスパッタリングなどの技法を紹介。自分のコマはどんな方法で描き進めればよいのかそれぞれ考えながら進めていきました。定規を使ってひたすら線を重ねたり、広い面積は幅広ペンで作業性を高めたり。描きごたえ満点でした。
最後に、コマの外枠の線にペンを入れたら完成!もとはたくさんのページの中にあったたったひとつのコマですが、このように大きく引き伸ばしてみると別の存在感が感じられます。1コマ1コマがずっしりとした重みのあるアート作品に変身していきました。