紙は実際透けないけど、透明っぽさ、"らしさ"は表現できる。同じモチーフをを見てどう描くのか、ラボのみんながそれぞれ挑戦しました。
まずは正確な形を捉えるため、紙の上に基準線を描いてモチーフを単純化。ボトルの比率や奥行きを自分で把握できるように進めました。高学年になるにつれ、経験や客観的目線から、短時間でできるようになっています。
ボトルの中の描き込みをしやすくするためにも、特徴的な凸凹の形もしっかり描きました。直線で分割するように描いてみると、意外とシンプルな構造であることがわかりました。
「どこから描いていいかわからない!」とこどもから声がもれるほど、ボトルの中は描きどころだらけ。それも「こういう形」とはっきり見えるものがほとんどなく、色の強さだけを判断して淡々と見えたものを描く。コツがわかると結構ハマります。
鮮やかなブルーの帯、広い面積の色のところは透明水彩絵の具でひと塗り。鉛筆と絵の具では、同じ色を塗ったとしても質感が変わります。どちらもいったりきたりしながら使い分けていきました。
細かな写り込みを表現するのが面白くなり、ひたすら鉛筆だけで描き込む子も。ハイライトと暗い色のメリハリがあると、煌めくような光の表現につながります。
トルネードで度々実施するトレーニングメニュー。制作で使うグレーの幅を広げるため、鉛筆を使ってグラデーションを作りました。ぎゅっと短時間で完成させるには工程の工夫が必要です。
上田薫さんは2019年に99歳で亡くなる間際まで画家として制作を続けていた作家です。スプーン上のゼリー、割れたガラス、水面など、私たちも日常「きれいだな」と感じたことのあるような身近なものをモチーフに描きました。緻密で写真のような作品が、実際はとても大きなキャンバスに油絵で描かれていることを知ると、みんなさらに驚いていました。
上田さんの"たまご"を描いたシリーズがあります。その中でも特に白身の透明感の表現が特徴的な3点をピックアップ。こどもたちは好きな1点を選んで模写に挑戦。
平らな図版を見ながら描く、いわゆる平面デッサンの制作。立体物を観察するのとは見方が少し変わってきます。余白と絵の部分を両方比較しながら輪郭線で形をとらえていきました。
たまごの殻は、絵の中では唯一立体感を出しやすい部分。ここがかっちり殻らしく描かれていると、白身のとろとろな部分の性質が際立ちます。鉛筆のトーンを生かして丸み、表面の質感を高めました。
そして問題の?白身の描き込みも進めていきました。上田さんの緻密な表現は「どうなってるの?」「わけがわからない…」目をこらしてみてもわからない!?見えたものをとにかく描いていく愚直な作業。少しずつ画面に「地図」ができてくると手を進めやすくなってきたようです。
全体像を捉えたところで黒い背景の色をペイント。みんな絵の内側に絵の具をはみ出させないようできる限り慎重に、丁寧に塗っていました。背景の黒を入れたことで一番強い色が画面に入りました。それに負けないよう、次回は中の描き込みを進めます。
一週空いて自分の作品をチェックすると、まだまだ描き込みたい様子のラボのみんな。作品を見つめる時間が蓄積されてくるほど今まで見えてなかった色や形が見えてくることがあり、それがまた楽しいのです。
鉛筆での描き込みにハマる子が続出! カリコリ止まらない鉛筆の音…。そのままでは仕上がりがもったいないので、時間を決めて透明水彩絵の具での着彩にシフト。明るく淡い色から塗り進めました。
絵の具は苦手意識を持ちやすい画材ですが、ラボの学年になると扱いのコツがわかってくる子がぐんと増えます。紙の上で色同士を重ねて深い色を作る透明水彩の特性は、できるようになると本当に面白く、使える濃淡の色幅もぐっと増えます。
絵の中の黄身の部分は、色がしっかりついて新鮮そう。光が強く当たっている部分はより鮮やかで濁りのない色。絵の具は混色するほど濁って深くなるという性質を理解して、必要なところだけを狙って色を深めるのがポイントでした。
白い紙の時点ではなかなか入れづらかった透明部分の暗い色をここで入れました。色のメリハリがつき、増していくツルツル・キラキラ感。自分の作品を遠目で見て「えっ…すごくない!?」と自分で自分の表現に驚く声も。
白い絵の具でハイライトを入れて仕上げました。長時間制作は一度入り込むと不思議な心地よさがあります。時間いっぱいまで描ききり、制作後はなんだかすっきりした様子で帰っていったこどもたちでした。