2022.8 トランスペアレント

トランスペアレント①

8月のアートラボでは
"透明"の表現を研究してみよう。
1回目はクリアなボトルを描きました。

色や形を描き込むほどに
絵は透明から遠くなるはずなのに
透明"らしさ"が伝わってくる。
面白いモチーフでした。

プロセス

  • 透明とは?

    紙は実際透けないけど、透明っぽさ、"らしさ"は表現できる。同じモチーフをを見てどう描くのか、ラボのみんながそれぞれ挑戦しました。

  • 全体の形をとらえる

    まずは正確な形を捉えるため、紙の上に基準線を描いてモチーフを単純化。ボトルの比率や奥行きを自分で把握できるように進めました。高学年になるにつれ、経験や客観的目線から、短時間でできるようになっています。

  • 特徴的な形を描く

    ボトルの中の描き込みをしやすくするためにも、特徴的な凸凹の形もしっかり描きました。直線で分割するように描いてみると、意外とシンプルな構造であることがわかりました。

  • 中に映るものを描く

    「どこから描いていいかわからない!」とこどもから声がもれるほど、ボトルの中は描きどころだらけ。それも「こういう形」とはっきり見えるものがほとんどなく、色の強さだけを判断して淡々と見えたものを描く。コツがわかると結構ハマります。

  • 絵の具で色の幅を増やす

    鮮やかなブルーの帯、広い面積の色のところは透明水彩絵の具でひと塗り。鉛筆と絵の具では、同じ色を塗ったとしても質感が変わります。どちらもいったりきたりしながら使い分けていきました。

  • 鉛筆で頑張る!

    細かな写り込みを表現するのが面白くなり、ひたすら鉛筆だけで描き込む子も。ハイライトと暗い色のメリハリがあると、煌めくような光の表現につながります。

トランスペアレント②

"透明"を描く第2弾。
本物よりも本物らしい!?
水、ガラス、ジェリーなどの特質を
リアルに描きだした作家・上田薫さんを紹介。

まった年齢を感じさせない画力もはもちろん
美しい、描きたいと感じたものを
まっすぐに描ききる執念と探究力に
脱帽です。
模写制作を通して愚直に表現を追ってみよう。

プロセス

  • 黒の色幅を作る

    トルネードで度々実施するトレーニングメニュー。制作で使うグレーの幅を広げるため、鉛筆を使ってグラデーションを作りました。ぎゅっと短時間で完成させるには工程の工夫が必要です。

  • 作家を知る

    上田薫さんは2019年に99歳で亡くなる間際まで画家として制作を続けていた作家です。スプーン上のゼリー、割れたガラス、水面など、私たちも日常「きれいだな」と感じたことのあるような身近なものをモチーフに描きました。緻密で写真のような作品が、実際はとても大きなキャンバスに油絵で描かれていることを知ると、みんなさらに驚いていました。

  • 描く作品を決める

    上田さんの"たまご"を描いたシリーズがあります。その中でも特に白身の透明感の表現が特徴的な3点をピックアップ。こどもたちは好きな1点を選んで模写に挑戦。

  • 形を描く

    平らな図版を見ながら描く、いわゆる平面デッサンの制作。立体物を観察するのとは見方が少し変わってきます。余白と絵の部分を両方比較しながら輪郭線で形をとらえていきました。

  • 陰影をつける

    たまごの殻は、絵の中では唯一立体感を出しやすい部分。ここがかっちり殻らしく描かれていると、白身のとろとろな部分の性質が際立ちます。鉛筆のトーンを生かして丸み、表面の質感を高めました。

  • 透明の表現を追う

    そして問題の?白身の描き込みも進めていきました。上田さんの緻密な表現は「どうなってるの?」「わけがわからない…」目をこらしてみてもわからない!?見えたものをとにかく描いていく愚直な作業。少しずつ画面に「地図」ができてくると手を進めやすくなってきたようです。

  • 黒い背景を塗る

    全体像を捉えたところで黒い背景の色をペイント。みんな絵の内側に絵の具をはみ出させないようできる限り慎重に、丁寧に塗っていました。背景の黒を入れたことで一番強い色が画面に入りました。それに負けないよう、次回は中の描き込みを進めます。

トランスペアレント③

上田薫さんの作品の
キラキラ・ツルツルとした
心地よい質感表現。
目で、手で追っていくうちに
こどもたちの作品の上にも
少しずつ表れてきました。

2時間半の長時間制作のあとに聞こえた
「楽しかったー!」という声が
印象的だったプログラムでした。

プロセス

  • 鉛筆でもっと描きこむ

    一週空いて自分の作品をチェックすると、まだまだ描き込みたい様子のラボのみんな。作品を見つめる時間が蓄積されてくるほど今まで見えてなかった色や形が見えてくることがあり、それがまた楽しいのです。

  • 淡い色から塗る

    鉛筆での描き込みにハマる子が続出! カリコリ止まらない鉛筆の音…。そのままでは仕上がりがもったいないので、時間を決めて透明水彩絵の具での着彩にシフト。明るく淡い色から塗り進めました。

  • 重ねて色を深める

    絵の具は苦手意識を持ちやすい画材ですが、ラボの学年になると扱いのコツがわかってくる子がぐんと増えます。紙の上で色同士を重ねて深い色を作る透明水彩の特性は、できるようになると本当に面白く、使える濃淡の色幅もぐっと増えます。

  • 鮮やかさを大事にする

    絵の中の黄身の部分は、色がしっかりついて新鮮そう。光が強く当たっている部分はより鮮やかで濁りのない色。絵の具は混色するほど濁って深くなるという性質を理解して、必要なところだけを狙って色を深めるのがポイントでした。

  • 最も暗い色を入れる

    白い紙の時点ではなかなか入れづらかった透明部分の暗い色をここで入れました。色のメリハリがつき、増していくツルツル・キラキラ感。自分の作品を遠目で見て「えっ…すごくない!?」と自分で自分の表現に驚く声も。

  • 最も明るい色を入れる

    白い絵の具でハイライトを入れて仕上げました。長時間制作は一度入り込むと不思議な心地よさがあります。時間いっぱいまで描ききり、制作後はなんだかすっきりした様子で帰っていったこどもたちでした。