2021.7 リフレクション

リフレクション①

はげしく、おだやかに、
波打ち広がっていく水面。
まわりにあるものを反射させて
常に変化しつづけるモチーフです。

7月のアートラボでは
水面に映るリフレクションの描写に挑戦。
いろんな画家たちの表現を見たり、
模写をしながら研究しました。

プロセス

  • 水面を描く

    水面は、いろんなものの影響でさまざまな形に変化する流動的なモチーフです。鏡のようにまわりの風景を映し出す「リフレクション」も特徴的。

  • いろんな「水面」の表現

    ルノワール、デイビッド・ホックニー、福田平八郎など、水面を主題にした作品を描いた作家を紹介しました。模様のように単純化した表現や、異なる色を重ねて独特のゆらぎを感じさせる表現など、水の透明感や光の反射を感じさせる工夫がすごい。

  • クロード・モネの表現

    そして印象派の巨匠と呼ばれるモネの作品を紹介。睡蓮がある池を描いた200点以上の作品は、ほぼ水面を描いたもの。その切り取り方や、表現を模索した実験的な描写は、パンキッシュで本当にかっこいい!

  • 模写する絵をえらぶ

    モネの睡蓮シリーズの作品図版から、こどもたちはそれぞれ気になる1枚を選びました。当時はおそらく珍しい正方形に近い比率の作品、日本庭園にある丸窓をイメージしたような丸いキャンバスの作品、ものすごく横に長い構図の作品など、支持体ひとつでもいろんな工夫をしています。

  • どのように描いたんだろう?

    図版を見ながら、使っている色、筆の方向、太さ、絵の具の濃さなどを観察して描きました。描いていると、ピンクや赤など、本来そこになかったであろう大胆な色合いも絵の中に見えてきました。でも、離れて絵全体を見ると自然です。視覚的な効果を研究していたのかな。

  • 模写で研究する

    大胆なタッチで絵の具を置き、筆を走らせたような描写も見られるモネの絵。それなのに遠くの水面にうかぶ睡蓮の葉の様子や、水面に映り込んだまわりの景色がどんなものか、見えてくる…。こどもたちには、自分の引き出しにはないモネの筆致や色の組合せが新鮮だったようです。

  • 今月のモチーフの映像を見る

    今月のアートラボの絵画制作のモチーフは映像です。池の水面を定点で捉えたもの。写真と異なるのは、その時々の風や池に訪れる生物などの影響で水面がゆらゆらと変化すること。

  • 支持体の比率を決める

    描くキャンバスとして使う素材は木の板です。今回は、どんな画面で描くか「比率」を考えるところからスタートしました。キャンバスの比率「F(人物)」「P(風景)」「M(海景)」「S(正方形)」に設定した"のぞき窓"で映像をチェック。

  • 木の板をカットする

    自分で設定した比率に合わせて、木の板に線を引きました。のこぎりでカットして、キャンバスのベースにしました。「切ったところが曲がりました!」「比率をまちがえた…」という子もちょっぴりいましたが…のこぎりが得意な子にサポートしてもらいながら、全員無事に完成!

リフレクション②

比率や構図を考えて
前回準備した木の板のキャンバス。
自分が切り取った風景を
描き込みしていこう。

色の効果を最大限に生かすため、
下絵から完成まで、
使うのはアクリル絵の具だけ。
絵の具の質をコントロールする
コツをマスターしよう。

プロセス

  • キャンバスを整える

    前回自分でカットした板にジェッソで下塗り。表面はやすりかけして軽く整えてから、制作スタートです。

  • うすい絵の具で下描きする

    描くものを線で区分けせず色面で捉えるために、鉛筆は使わず溶いた絵の具で下絵を描きました。絵の具は消せない画材ですが、上にどんどん層を重ねて変化させていくことができます。まずは薄めに水で溶いた絵の具をたっぷりと使って。

  • キャンバス全体に色を置く

    制作は、全体から細部に向かうように。まずは画面全体に入ってくるものの位置を決めてベースを作りました。大きめの平筆、ハケを使って大まかに捉えるのがコツ。つい気になる一部にじっくり時間をかけたくなりますが、あとのお楽しみですね。

  • 少しずつ具体的に描く

    乾くのが早いアクリル絵の具の良さを活かして、下絵の上に色を載せていきました。水分を調節して、少しずつ使う絵の具を濃くしていくように。絵の具の制作の経験がある高校生を中心に、積極的に絵の具を画面に載せていく子もいれば、慎重に薄めの絵の具を重ねていく子も。映像全体に感じる微妙な色彩をどう表現するか模索している様子でした。

  • 離れて絵を見る

    絵を近くで見た時の印象と、離れて見た印象は、描いている当事者ほど「ちがう!」と感じることが。いったん自分の場所から離れて、自分の絵と映像どちらも遠くから眺める時間を作りました。「絵の具がまだまだ薄すぎた」「バランスを直したい」「ここ、全然手をつけてない!」など、自分が見えてなかった部分をチェック!

  • 来週に続く制作

    来週のメイン制作は「リフレクション」の描写。描くための全体の風景ができてきた。新ラボの子も、画面全体に色が入ってきて、思い切ったやや濃いめの絵の具も載せられるようになってきていました。メリハリのある使い方ができるよう、画材の扱いにも慣れていこう。

リフレクション③

揺れる水面、
張り詰めた静けさや
ドラマチックな一瞬。
水面と、水面以外の差を意識しながら
自分が捉えた印象を表現しよう。

プロセス

  • 水面の部分を観察

    動き続けるものを描くのは難易度が上がりますが、面白さもあります。実際の風景でなく映像であることを生かして、スロー再生/2倍速などでも水面の動きを観察してみると、動きのリズムや全体感などが少し見えてきたかな?

  • リフレクションの表現

    鏡面のように、まわりにあるものを映し出す効果を描写していきます。前回で画面全体をある程度書き込みしていたので、みんなそれぞれ、抵抗なくスムーズでしたね。

  • ゆらぎの表現

    そして、ただの鏡面とちがうのは、水面が常に揺れ動くものだということ。ある程度じっくり筆の動かし方、色を載せる場所を検討しながら、「ここだ!」というところに少しずつ筆を置いて、ゆらぎを作っていきます。思ったような効果が出てくると嬉しいところ!

  • 水面以外の表現

    水面を集中して描いていくと、今度はそれ以外のものが水面に沈んでいくように目立たなくなっていきます。あくまでも水面は水面で、水面に浮かんでいるもの、上に伸びているものなどの存在感も失わないよう、バランスを取りながら描きました。

  • 画面全体の仕上げをする

    風景の奥と手前の表現、水面とそれ以外のものの描き分け…。アートラボの制作では、とにかく見えているものがたくさんあるので、いろんなところに手を入れたくなる!今一番必要なのはどこかな?と自問自答して、自分である程度確認しながら進めることができていた子が多かった印象です。

  • 完成

    仕上げの時間は、遠くからチェックして印象を確かめる回数も増えてきます。最後のひと筆までじっくり描き込みしました。納得できるまで描き込みできて、すっきりした顔の子もたくさんいました。