2021.6 かけら

かけら①

はじめまして、あなたはだあれ?
一片のかけらを選ぶところから
今月の制作が始まりました。

かつては、どんな形だったんだろう?
質感、厚み、柄など、小さな手がかりから
想像を広げて、立体に再現していきます。

プロセス

  • いろんなかけら

    いったいどこから来たんだろう?海の砂浜に流れ着いた様々な形の陶器のかけらたち。水や砂などで少しずつこすられて角もすっかり丸くなり、表面にある模様や釉薬が少し見えている状態です。

  • ひとつえらぶ

    色、形、質感など、気になるポイントがこどもたちそれぞれありそう。まずはひとつ、好きなかけらを選んでみることにしました。

  • 全体像をイメージする

    選んだかけらを触ってみると、完全に平らではなく少しカーブになっていたり、厚みの差があったり。かけらになる前の元の形の手がかりが。思い浮かぶイメージをスケッチしておきましょう。

  • かけらから全体を形作る

    「湯呑みかな?」「たぶん皿の一番下のパーツだと思う」構造が少しずつ頭の中で具体的になってきたところで、立体制作に進みました。石塑粘土を使ってまずは形づくり。

  • たたら成形

    粘土を平らな板状にして作る「たたら成型」。円筒状のコップなど、均一な厚みで、まっすぐとした壁をもつ形作りに便利な造形方法です。

  • ひも作り

    粘土をひもにして積んでいく「ひもづくり」は、ボウルのような膨らみのあるデザインの器にぴったりの造形方法。器用に粘土製のひもをくるくる巻いてあっという間に壺ができた子も。

  • 形が見えてきた

    久しぶりの粘土制作だからか、スタートは苦戦する子がちらほら。「皿のふちがへこむ!」「形が立ち上がらない」水分量のチェック、粘土の厚みを調整するコツがわかると、一気にみんな追い上げた!

  • かけらを埋め込む

    全体の形ができたら、最後にぴったりな位置にかけらを埋め込んで完成です。来週には粘土が固まるので、やすりをかけたりペイントをしてさらに作品の精度を高めていく予定です。

かけら②

様式や伝統、流行など
いろんな土地、いろんな時代で
誰かが生み出した痕跡を辿りながら
想像を広げていこう。

かけらにある色・模様の
続きを想像して描きました。
進めていくうちにイメージがどんどんふくらみ、
「こんな作品になるとは!」と
思いがけない作品が生まれた子も。

プロセス

  • 形を整えよう

    前回、石塑粘土で制作した形を自分たちでチェック。使った粘土は、ごく薄くしても硬化すると割れにくい丈夫さがあります。厚みなども調整することができたので、裏も表も、みんなこだわって形を整えていました。

  • 削って整える

    少しの凸凹もないつるつるした表面に仕上げたい子が多かったので、みんな紙やすりや金属の棒やすりでゴシゴシ……埋めたかけらと形が自然につながるよう注意しながら、教室中が白く煙ってみえるほど、頑張っていました。「ずっと削っていたい」というくらいハマった子も。

  • 粘土で補修する

    やすりをしても修正できないのは、ヒビやへこみなどの部分。粘土や削った粉を使って埋め込みをして、欠けのない完全な状態を目指しました。ここでまた凸凹をつくると前の工程に戻ってしまうので、つけた素材を上手になじませていくのがコツでした。

  • かけらの続きを描く

    かたち全体が整ってから、かけらの色・絵柄の続きを描きました。ヨーロピアン風、和食器風、割とカジュアルな近代風など、こどもたちそれぞれのイメージがすでにあったようで、それぞれスムーズに描き始めました。

  • ベースの色を捉える

    まっ白いかけらに見えても、うっすらと色味を感じるものも。アクリル絵の具で同じ色に近づけます。パレットの上ではそっくりにみえた色も、かけらの近くに塗ると「わ、全然ちがう!」ごく僅かな色の違いでも影響があることを発見しました。

  • 絵柄の続きを描く

    絵柄がついたかけらを選んだ子は、続きを描き加えていきました。絵柄の線の太さ、色の濃淡もしっかり合わせて行きます。かけらにあるのはほんの一部分で、正解は誰にもわかりません。さまざまな展開が可能なため、途中で大胆にちがう色・柄を取り入れている子もいました。

  • 質感を近づける

    焼き物の絵柄はガラス質でできており、陶芸窯で高温で焼いた際にまわりの色と少し溶け合うために独特のじんわり感があります。その質感まで表現することを目指しました。どこにかけらがあるかわかりますか?うーん、さすがラボ!

かけら③

6月最後のアートラボでは、
自分で作った立体作品を元にして、
写真やことばで
表現を深めていく制作を実施しました。

見る人に、自分の作品を
どう見てもらいたいか、
存在感をどのようにつくっていくか。
作品制作のあとに続く
表現を深める作業は
とても新鮮で面白かったようです。

プロセス

  • 作品の表面仕上げ

    立体作品の仕上げです。それぞれ気になるところの修正をしたら、陶器の感じを高めるための表面のツヤ出し、またはツヤ消し加工のニスを塗りました。ニスを乾燥させている間に、次の制作を進めて行きます。

  • ことばで表現しよう

    ひとつのかけらからスタートした制作。今回は完成した作品を観察し、浮かぶイメージを文章として表現する制作です。「OK!もう書けそう」と創作意欲メラメラの子もいれば、「作文苦手…」という子も。客観的に分析してみると制作はスムーズになりました。

  • メモを書き出す

    「制作されたのはいつ頃?」「どこにあったもの?」「作った人は誰?」「使っていた人はどんな人?」……そのものの形、色、柄などから、リアルに感じられる事柄をメモしていきます。

  • 文章にまとめる

    感情抜きで、見た印象をそのまま書き出すディスクリプションの方法で言葉を書き出していくと、全体感、設定のようなものが見えてきた様子。そこからは、それぞれの文体で書きはじめました。

  • テキストデータにする

    読み応え満点の物語風のもの、シンプルな短文。切り口もそれぞれのこだわりが見えて面白い!PC、タブレット、スマホなどのデバイスを使ってそれぞれテキストデータを入力しました。ラボのみんな、デジタルデバイスの扱いは手慣れています。

  • 作品のライティング

    文章を書いたことで作品の世界観がはっきりしました。次はその文章と並ぶ、自分の立体作品の写真の撮影をしました。光の角度や遠近の工夫で「ちゃんとした陶芸作品に見える」「本当に元々あったみたい」…見え方や雰囲気が変わる体験をしました。

  • 一眼レフカメラで撮影

    ぴったりのライティングができたら、デジタル一眼レフのカメラで一人ずつ作品を撮影。角度やレイアウトの微調整をして、その都度撮影をしながらより雰囲気を高めました。その中から「これがいい」という1枚をセレクト。

  • 完成

    写真・テキストそれぞれデータ出力したものを組み合わせ、完成です。立体制作、テキストづくり、撮影などの複合的な制作をこなせるラボならではの作品になりましたね。ひとつずつ見応えあり!

さくひん