和紙は、洋紙と比べると原料に使われる植物の繊維質が太く丈夫で、長い期間変質しにくい素材。動物たちのコミカルな表現で有名になった「鳥獣戯画」も平安時代に描かれたもの。現在も本物が存在しているってすごい!大きな和紙に墨を使って描く絵画制作がはじまります。
和紙は繊維が丈夫な分、墨や水分がじわっとにじんで広がりやすい性質が……それを防ぐため下準備をしました。"天然の接着剤"「にかわ(膠)」と「みょうばん」を水で混合した「ドーサ液」を表面に塗ると、紙の繊維間に入り込んで目止めとなり、にじまなくなります。
ドーサ液を大きなハケでたっぷりと塗りました。和紙も水に浸した時にはもろく弱くなってしまいます。ジュニアのみんな、やぶれないようにとても慎重な作業でした。裏も表もしっかり染み込ませて。
ドーサ液を塗った和紙を乾燥させている間に、トルネードで突然習字教室がスタート? 大きな和紙に絵を描く前に、筆と墨を使ったいくつかのトレーニングをしました。
墨絵と文字はよく似ている?「とめ・はらい」など文字を書く時の線の強弱の表現は、絵画制作の上でもとても重要なポイント。自分の名前の文字を描きながら、線の強弱を出すため筆先をコントロール!あまりいそがず、でも流れるようなリズムもまた大事。
何度か書いてみると、腕の動かし方もだんだんスムーズに。今度は動物をモチーフにして絵画表現にチャレンジ。とがった耳、どっしりした足、シュッと長いしっぽ……シルエットだけでも動物それぞれの特徴があることが分かります。
筆の先だけで細い線を描くと「しかの足っぽい」、さらに強弱のメリハリをつけると「おお…」「なんかリアル!」筆を根本までしっかり押し付けて描くと「ぞうの太い足が描けた」など、筆でできる表現にいろんな工夫が出てきました。
文字と絵のトレーニングの後、ドーサ液がすっかり乾いた和紙はアイロンをかけて平らにしました。制作は来週に続きます。
墨汁の成分は煤(すす)と膠(にかわ)。ほんの少しの量でも塗ったものに真っ黒な色がつき、絵の具としての強度がすごい!水加減を調整してグレーのトーンを作りながら、できる色味を実験。
できたいろんなグレーを使って、水墨画の技法を試してみました。ちがうグレーを重ねて、わざとにじみを作るため、絵が乾燥する前に次の色を載せるなど、スピード感もポイントでした。逆ににじませずくっきり描くタイミングも掴んでいきました。
ジュニアのみんなに画家・長沢蘆雪の作品を紹介しました。ころころと転がるような子犬のリアルな仕草、ふわふわな毛のお猿の表現など、動物の特徴を表現する技巧がすごい!大きなトラを描いた「竜虎図」という作品をお手本に、トラの全身画にチャレンジしました。
「こんな大作描けるかな!?」とドキドキしながら、みんなでトラの鼻のあたりから描き始めていきました。あの特徴的な縞模様がないうちは「ライオンみたい」「ねこっぽくなった!?」それに「このトラ、耳がない?」とざわめく場面も。
思わずにじんでしまったところや、かすれががちょうど毛の質感やふわふわ感につながったり、くっきりさせたいけど乾くと色がうすくたり…「やりすぎた!失敗」と思ったところが絵のメリハリを生んでいたり。あまり慣れない墨を使ったことがこどもたちの新しい表現につながって、どの絵もエネルギーむんむん。
蘆雪のトラの顔は細かな描き込みがすごい。白く見えるところは、色を載せずにくっきり描き残していました。ここは、一度描いたら消せない緊張感MAX!目元は特にこだわりをもって表現していました。目力がすごい!
トラから少しはなれたところにある草や岩もしっかり描くと、絵の中全体がひとつの空間になりました。主役だけでなく余白や構図も工夫された蘆雪の絵。みんな同じ絵を見ているのに、こどもたちそれぞれの魅力たっぷりなトラに仕上がったのは…蘆雪マジック?
「綯(な)う」とはふだんなかなか使わない言葉ですが、わらなどの細い素材を合わせてひとつの形にすること。しめ縄づくりは「締める」「ねじる」「力いっぱい引っ張る」など、体全体を使った制作です。自分自身をしっかり使いこなそう!?
素材となる稲わらを教室にたくさん用意しました。「牛のごはんみたい!」よく見るとお米が少しついているわらも。なんだか縁起が良さそう!まずはしめ縄に必要な、丈夫でしっかりしたわらをひとり60本選びました。
稲わらをそのままの状態で制作に使うと、乾燥した部分がパキパキ割れてしまう!きりふきでたっぷり水をかけ、しっとりやわらかくなるまでみんなで丁寧にふみふみ。
60本を一つの束にまとめます。しめ縄の端になる部分なので、ゆるゆるだと作っている間にしめ縄がほどけてしまいます。ひもでぎゅっと固く結ぶことができるかな?ものがぎゅっと締まる感覚を経験して掴んでいこう。できるまで何度も挑戦しました。
しめ縄の形づくりのスタート!1束は、三つ編みと同じ要領であらためて3つに分け、そのうち2つをよじって、しっかりまとめていきます。職人さんは手足を使って一人で作るそうですが、ここはふたりずつチームになって制作しました。
よじった2本同士を、今度はねじりあわせて1本の形にします。よじった部分がゆるんできたり、ふたりの力のかけ方がアンバランスだとNG。すべてがぴったり噛み合った時にきれいな縄目が生まれます。最初からスムーズにできるチームはほぼいませんでしたが、何度かチャレンジすると縄目がしっかりできるように!
残っていた3本目も、よじり、ねじってすべて1本の縄の形にまとめました。この工程で一回り太く立派な縄になるのと、仕組みの不思議にみんなダブルでびっくり。「すごい!」「なんで?」「やってみよう!」盛り上がりました。
完成したしめ縄は、ぼさぼさして見えるところをカットして整え、ぐぐっと曲げて輪にしました。これだけでもすごい手応えのある制作でしたが、さらに仕上げに飾りつけをしてそれぞれの「しめ飾り」にしました。
縁起が良いとされる紅白の色の飾り、扇や鯛など。好みの飾りを手作りしてしめ縄のすきまに差し込み、仕上げました。年末の締めの作品!お家に飾ってもらう、これから会うおばあちゃんにの家で飾ってもらう!と、みんな大事に持ち帰りました。