2021.6 ちいさなもの

ちいさなもの①

小さいはずなのに大きく見える、
大きいはずなのに小さく見える。

画家ジョージア・オキーフの描く絵は
小さな花のようで、
大きなオーロラにも見える。
動物の骨みたいなのに、広い砂漠にも見える。
模写を通して、色彩のひみつを探りました。

プロセス

  • いろんな描画材

    みんなのお気に入りの画材はありますか?6月のジュニアコースでは、絵をかくための「描画材」を研究していこう。はじめに、持っている色えんぴつ、クレヨン、クレパスなどの使い心地をシンプルに比べてみました。

  • 発色のちがい

    発色の違いに注目すると、ペンや色鉛筆よりもクレヨン・クレパスのほうが、紙の色に影響なく色を載せやすい。含まれる色の量、成分、ワックス量の違いがあり、色をしっかりと載せたい制作時にはクレヨン・クレパスがおすすめ。

  • じわじわ変わる色

    そのクレヨン・クレパスを使って、紙の上で2色をじわじわ混ぜ、2色以上の色を増やしていく実験をしました。重ね方、力加減などの工夫でなめらかな色の階調ができると「グラデーション」が生まれます。「すごい!」それぞれの塗り方を参考にしながらみんなヒートアップ。コツがつかめたかな?

  • ジョージア・オキーフ

    アメリカの女性画家・オキーフの作品を紹介しました。ものを大きく拡大して描くのがスタイルの一つ。見ていると、自分が小さくなったような不思議な感覚になります。「立体?絵なの?」「さわれそう!」色の使い方ひとつで立体感や、奥行きが生まれているという発見もありました。

  • どの絵を描こう?

    色使いのバリエーションが豊かなオキーフの抽象作品。1点ずつまったくちがう雰囲気があるので、こどもたちは「あれもいい、これも……」とお気に入りの1枚を選ぶのが楽しそうでした。

  • 大事なポイントを見つける

    選んだ1枚をじっくり観察。絵の中にはアイキャッチといって一番最初に目に入ってくるポイントがあります。そこからしっかり、そっくりになるように色を塗り込んでいきます。

  • 色を近づける

    オキーフの絵はこどもたちに「すごくきれい」と大人気。その色を丁寧に再現したいという意欲を感じる制作でした。描く部分に合うよう画材を選んで使い分けたり、それぞれの工夫がありました。

  • 描き込む

    何度も画材を重ねる、指でこすってみる、違う画材と組み合わせる、色を混ぜてみる。オキーフが描く色の強さにまけないくらいの塗り込みを目指して。目と手をフルに使った制作でした。頑張った分手応えも大きい!

ちいさなもの②

ほんの少しのさじかげんで
ピリリとパンチのある色になったり
まろやかな色になったり。
感覚を大事にしよう。

次回の絵画制作に向け、
色の粉「顔料」をブレンドして
オリジナルの色の
パステルを手作りしました。

プロセス

  • 顔料(色の粉)とは

    紙、布、プラスチックなど、ものに色をつける「色材」の中でも水や油にとけない性質のものが「顔料(がんりょう)」。古くは土や鉱石(中にはラピスラズリなどの宝石も!)などの天然素材から作られ、とても高価で貴重な色もありました。現在では鉄や銅などの化学反応による合成技術が発達し、鮮やかで耐久性もある顔料が安定して作られるようになりました。

  • にかわ(膠)とは

    ボンドやスティックのりが生まれるずっと前から…古代エジプトの時代から使われてきた天然の「接着剤」です。動物の骨や皮にふくまれるコラーゲンからできています。水に溶かし、顔料と混ぜて使うことでバインダー(定着剤)となります。

  • パステル作りに挑戦

    顔料とにかわを中心に「パステル」を手作りしました。成分はほぼ顔料のみで、画材の中でも特に発色の良さをもつ画材です。来週の制作に向けて、原色ではなく、「中間色」を目指しました。

  • 顔料を測って入れる

    白の顔料をベースに、三原色・黒の顔料を足していきます。宝石とまではいきませんが、なかなか実際に手にする機会が少ない、貴重な素材です。こどもたちは絵の具やクレヨンでの混色の経験がある分「入れすぎると色は戻せない…」と、慎重にひとさじずつ小さなカップに入れていました。

  • 顔料をよく混ぜる

    顔料を粉の状態で混ぜてみると、できあがりに近い色味が現れます。「こんな色になるんだ」「想像していた色になった!」ワクワクするこどもたち。

  • にかわ水を入れる

    粉の状態からひとつの塊にまとめるために、にかわを水でとかした「にかわ水」を加えました。にかわは水で薄めても非常に強力!入れすぎるとパステルとして使えなくなってしまいますので、ほんのひとたらし。

  • ひとつにまとめる

    にかわ水だけではまだ粉っぽい状態。少し固めの粘土のようになるまで、水分を加えながらコネコネ。水分のちょうどいい加減は「何杯」と決められないところ。自分の目と手で判断して進めました。

  • バリエーションを増やす

    貴重な3色セットから、豪華な10色セットまで、それぞれのパステルセットを完成させました。かわいいミニサイズですが、1点ずつじっくり仕上げた思い入れたっぷりの作品です。来週、描き心地ばっちりなパステルになっていますように。楽しみで、ちょっとドキドキ!

ちいさなもの③

「描きやすい!」「いい色が出た!」
手作りのパステルを使って
花のデッサンにチャレンジしました。

花びらの上を歩けるくらい、
ちいさな虫や小人の目線になって……
ゆらゆら、つるつる、
でこぼこ、がけっぷち!
まっ白い花の絵の中に
色のドラマを展開させよう。

プロセス

  • 手作りパステルを試す

    前回手作りしたパステル。しっかり乾燥していました。授業のスタートで描きごこちをさっそくお試し。材料を測り間違えると硬くなり描けなくなると聞いていたこどもたちはちょっと緊張でしたが…「描けた!」見事に全員、きちんと描けるパステルを作っていました。

  • パステルの使い方

    「粉の画材」とも言われるパステルは、めんぼうや練りゴムなど、他の道具と組み合わせて使うことで、さらに描き方のバリエーションが広がります。絵画制作の前に、いろんな道具の使い方を試して特徴を確認ししました。

  • 花が登場

    パステルの扱いに慣れてきたところで、絵画制作のモチーフ、グラジオラスが登場しました。白くて小さめのお花がたくさん並んだ姿が特徴的です。近くに置いて、お花をさらにじっくりと覗き込んでみましょう。

  • 花を大きく見る

    画家オキーフがしていたように、小人や虫になったような目線で花を見てみよう。白い花でも、実際にまっ白いところはほんの少ししかありません。影になるところの暗めの色、ほんのりと感じる色味など、本当は実にたくさんの色が存在しています。

  • あたりをつける

    こどもたちは、自分で見やすいお花をひとつ決めると、紙に大きく下絵(あたり)を描き始めるところからスタートしました。ひらひらした花びらは「なんかかわった形」1枚ずつ、めくれたりうらがえったりするところも目で追いながら進めました。

  • 下地の色を広げる

    花を大きく描いたことで、こどもたちは自然と手のひら全体を使ったり、指こすったり、手を道具として使いこなしながら描き進めていました。すばやく広く色が塗れるところは、パステルのいいところのひとつです。

  • 色を重ねる

    花びらの感じを表現するために、「色んな色を混ぜてみよう」「思い切って強い色も使おう」…淡い色の花ですが、大胆な色使いをしたところにちょうどいい効果が出てくることもあり、なんだか実験的な楽しみがある制作でした。色のメリハリをもたせてみると、花びらの重なった感じがよくわかる!

  • 背景も仕上げる

    こどもたちのさまざまな色の工夫によって、花の立体感が出てきました。仕上げに背景の色もしっかり塗り込んでみると、さらに花の存在感が高まって、とてもいい雰囲気。かっこいい作品になりました。